レビューメディア「ジグソー」

手軽にNutubeの音質を味わえる

秋のヘッドホン祭 2019の物販会場で仕入れた品です。

 

イヤフォンではForetniやOriolus Rebornなど、有名な製品である程度知られているOriolusですが、実はポータブルアンプの類も手掛けています。このNT-1は、Oriolusのポータブルアンプの中でもひときわ個性的といえる製品であり、KORGが開発、ノリタケ伊勢電子工業が製造を手掛ける、省電力化かつ小型化された3極真空管である「Nutube」を搭載しています。

 

Nutubeは前述の通り小型かつ高効率であり、それでいてオーディオ機器では真空管らしい音質をきちんと実現していることから、近年ではポータブルオーディオでの採用例も増えています。DAPではCayinのフラッグシップモデルN8で採用されているほか、iBassoではDAP向けのアンプモジュール「AMP9」に搭載している例があります。ちなみにCayin N8ではNutubeとトランジスタを双方搭載していて、DAP側で出力を切り替えて楽しむことが出来るようになっています。

 

ただ、Nutubeは部品としての単価が高く、比較的高価な製品に使われることが多いという問題があります。その中で、Nutube搭載製品としてはかなり手頃な価格を実現していたのが、このOriolus NT-1でした。

 

 

NT-1はポータブルアンプとしては最もシンプルな構成の製品であり、3.5mmステレオミニ端子からの入力を、3.5mmステレオ端子へと増幅して送り出すだけの製品です。一般的なポータブルアンプに多い、USB DAC機能等はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付属品に「USBケーブル」と書かれているので、一瞬OTG接続が出来るのかと勘違いしがちですが、このUSBケーブルはNT-1の充電に利用するだけのものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱の中身も至ってシンプルで、最低限必要なケーブルと保証書、貼付型のスペーサーがあるだけです。

 

 

 

 

 

 

 

本体表面は「Oriolus」のロゴとNutubeが見える小窓があるだけで、こちらも至ってシンプルです。

 

更新: 2019/11/04
総評

真空管らしい音はきちんと出る

それでは試聴してみましょう。

 

今回はちょっと意地悪な実験かと思ったのですが、元々の内蔵アンプが極めて強力なAcoustic Research AR-M2と接続してみることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真にある通り、ヘッドフォンもポータブル機器ではなかなか鳴らしきることは難しい、Massdrop X SENNHEISER HD6XX(HD650とほぼ同等の廉価モデル)を組み合わせて試聴しています。

 

 

まず、300Ωとかなりの抵抗値を持つHD6XXでも音量が十二分に取れる辺りは、単体のポータブルアンプを使う意義を感じさせます。もっとも、AR-M2も公式に300Ωをサポートしていて、意外と十分な音量は取れるのですが、他社製の一般的なDAPではなかなか難しいと思います。

 

 

NT-1の音質傾向としては、低域方向の量感が厚めで、こってりとした濃厚さがあります。AR-M2もDAPとしてはかなり濃厚な音を持つ製品ですが、それ以上に感じられます。ただ、高域方向のシャープさはNT-1の方が劣っていて、音場の広さはほぼ互角かNT-1の方がやや狭めという感覚であり、AR-M2のポテンシャルの高さの方に驚かされる結果となりました。高域方向の解像度も含め、幅広いソースを高い水準でこなすのはむしろAR-M2だと思われます。

 

もっとも、だからといってNT-1の水準が低いというわけでは無く、丁度Cayin N8でNutubeモードとトランジスタモードを切り替えたときのような音質差だといえば分かりやすいでしょうか。以前私がCayin N8について「ソースに対して忠実なのはむしろトランジスタモードで、Nutubeモードの方は多少偏りがあるが相性の良いソースでは魅力が増す」という趣旨のコメントをしたと思いますが、NT-1とAR-M2の音質差もそのような感じなのです。

 

例えば「Dangerous / David Garrett」ではAR-M2の方がより細かい音をきちんと表現する一方で、ヴァイオリンの音色がより美しいのはNT-1という印象を受けます。もっとも、「Alone / TOTO」では真空管のまろやかさが悪い方向に作用して、キレのなさが目立ってしまいますので、あくまでソース次第でどちらの方が魅力的かという判断が大きく変わるはずです。

 

 

 

 

 

 

 

元々最も安価にNutubeを味わえる選択肢であったNT-1ですが、結局売れ行きはそこまで伸びなかったようで、かなり手頃な価格で処分されてしまっていました。この製品の魅力はなかなか伝わりにくい部分にあるのだということを痛感させられます。

  • 購入金額

    10,000円

  • 購入日

    2019年11月02日

  • 購入場所

    秋のヘッドホン祭 2019 物販会場

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2019/11/04

    この価格なら,使い分ければ良さそうですね.
  • jive9821さん

    2019/11/04

    > harmankardon さん

    この金額でNutubeが使えるのならということで、USB DAC機能が無く活用範囲が狭いと思いつつも購入してしまいました。

    AK70辺りで使えばかなり活きそうなのですが、AR-M2程度にアンプが強力なDAPでは良さが出にくいですね…。

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