レビューメディア「ジグソー」

誰が歌っても名曲? この声だからこその名曲?

※商品情報は2016年発売の180g重量盤ですが、私が所有しているのは1984年発売の日本盤となります。

 

1980年代の売れ線ロック、所謂産業ロックの一つとして数えられることも多いロックバンド、フォリナーの5作目となるアルバムです。

 

前作「4」が空前のヒットを記録し、ここからシングルカットされた「Waiting For A Girl Like You」も10週連続全米2位という大ヒット(10週中9週はオリビア・ニュートン・ジョンの大ヒット「Physical」に、10週目はホール&オーツ「I Can't Go For That」に1位を阻まれる形となります)を記録していて、その大ヒット作から3年というインターバルを置いての発表だっただけに多くの期待を集めて発表された作品となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果としては「4」には及ばないものの、現時点でフォリナー唯一の全米No.1ヒットとなっている「I Want To Know What Love Is」や、ヒット曲「That Was Yesterday」を収録し、本作自体もまずまずのセールスを記録することとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっとも、当時のフォリナーはリード・ヴォーカルのルー・グラムと、演奏だけでなく総合プロデュース的な立場をこなしていたミック・ジョーンズが主導するバンドだったのですが、本作辺りからこの2人の音楽性の違いなどから来る確執が表面化し始めます。

 

次作となる「Inside Information」ではこの確執がより深刻なものとなり、結局この作品の後にルー・グラムがフォリナーを脱退することとなります。

 

ルー・グラムの脱退後はミック・ジョーンズ主導の体制となりましたが、結果的にそこで発表したアルバム「Unusual Heat」はチャート・セールス共に惨敗となってしまい、脱退したルー・グラムを呼び戻すこととなってしまうのです。もっとも、その後もなかなか浮上は無く、一時期はルー・グラムの脳腫瘍治療もあり、バンド25周年の2002年頃に活発に活動した後は再度ミック・ジョーンズ主導のバンドとなり、彼以外の全メンバーが入れ替わる形となってしまいました。

 

 

フォリナーの中核は多くのヒット曲を手掛け、プロデューサーとしての力量も高いミック・ジョーンズ(彼はビリー・ジョエルのアルバム「Storm Front」でプロデューサーとしてクレジットされています)であることは間違いなかったのですが、やはりルー・グラムの独特の粘っこいヴォーカルがあって彼ららしい曲として印象づけられていたということでしょう。この2人がコンビネーションを発揮していた時期に、彼らの名曲は集中していますので…。

 

 

ここでこの作品についてもう少し触れておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収録曲は次の通りとなります。

 

 

01.Tooth And Nail
02.That Was Yesterday
03.I Want To Know What Love Is
04.Growing Up The Hard Way
05.Reaction To Action
06.Stranger In My Own House
07.A Love In Vain
08.Down On Love
09.Two Different Worlds
10.She's Too Tough

 

 

この中から前述の2曲の他に、「Reaction To Action」「Down On Love」がシングルカットされていますが、この2曲はいずれもTOP40入りは逃しています。

 

 

更新: 2019/09/18
総評

古さはあるが、今聴いても充分に良い

私が普段そこまで熱心に聴いているわけではないフォリナーの作品を何故急に取り上げたのかといえば、先日2016年のフォリナーのライブ映像を見る機会があったためです。

 

前述の通りリード・ヴォーカルのルー・グラムは2002年頃を最後に脱退していて、それ以降のリード・ヴォーカルはケリー・ハンセン(元ハリケーン)が務めています。

 

このライブでは「I Want To Know What Love Is」や「That Was Yesterday」、「Waiting For A Girl Like You」「Urgent」「Say You Will」など、往年の耳に馴染んだ曲が演奏されていて、現ヴォーカルのケリー・ハンセンも極力元のイメージを保つように歌っていることは理解できます。ただ…。

 

 

取り敢えず、以下のライブ映像をご覧いただいて、上で紹介したオリジナルと比較していただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して近年のライブの出来が悪いというわけではありません。むしろ安定感でいえばルー・グラムよりもケリー・ハンセンの方が上かも知れないと思うほどです。

 

ただ、どうしてもかつてのフォリナーが持っていた強烈な個性のようなものが私には感じられないのです。世の中には「誰が歌っても名曲」と呼ばれる曲がある一方で、「この歌声だからこそ名曲となり得る」ということもあるのだと感じさせられます。

 

当然、このことはどのバンドにも起こりえることです。ただ、ヴォーカルに強烈な個性があるバンドでは、ヴォーカリストの交代はバンドそのものの存在感を変えてしまうということを、このライブでまざまざと見せつけられた気がしたのです。

 

 

ちなみに私が長らくファンであるバンド、シカゴもリード・ヴォーカルの交代があり、まだ現ラインナップでの演奏をまだ聴けていません。今どうなっているのか、間もなく発売となるクリスマス・ソング集を待っているところです。

  • 購入金額

    300円

  • 購入日

    不明

  • 購入場所

    ディスクユニオン

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2019/09/19

    ”4”をよく聞きました.
    特に,”Waiting for a Girl like You”が好きでした.
  • jive9821さん

    2019/09/19

    > harmankardon さん

    私は本作からがリアルタイムで聴いた時期で、「4」や「Double Vision」辺りは随分後になって後追いで聴きましたので、当時は本作が何故微妙な評価をされているのか理解できていませんでした。

    「4」を聴いた後だと、なるほど前作には及ばないかと素直に納得できてしまいましたが…。

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