レビューメディア「ジグソー」

バランス非対応だが、この時代から確立していた独自のトーン

実に5年以上前に購入していた品ですが、訳あって今まで殆ど活用できていなかったDAPです。

 

中国の楽彼(LUXURY&PRECISION)初のDAPとなったL5PROという製品です。LUXURY&PRECISIONはCOLORFLYブランドから発売されたC4というDAPを開発したスタッフが独立して発足させたブランドと言われています。

 

 

 

 

 

 

 

 

実は私が今まで自作していたハイレゾWAVファイル(概ね24bit/88.2KHz)が一部再生できないという謎の現象が解消できなかったため、実用度が低く使うに使えなかったのです。しかもバランス接続にも対応していなかったため、当時使っていた2.5mm4極ケーブルとの使い勝手も悪く、殆ど使われることが無いまま放置されることになってしまいました。

 

一応この時期代理店のサイラスさんとやりとりして、メーカー側にサンプルファイルをいくつか送ったりしてメーカーへの対応依頼もしてみたのですが、結局メーカーからはそれ以降何の音沙汰もありませんでした。普段他のプレイヤーで聴いているファイルが聴けないというのは致命傷であったため、その時点でL5PROを諦めてしまったというのが大きいわけです。実はこの時期他のLUXURY&PRECISION製DAPでも私の自作ファイルの再生は不安定だったのですが、L5PRO以外のモデルはファームウェア更新を繰り返す内に再生できる確率は上がっていました。L5PROだけが置き去りになっていて、このメーカーへの印象がかなり悪くなっていたというのもあります。

 

 

しかし、この事態が最近になって突如動き出します。LUXURY&PRECISIONのブランド発足10周年を記念して、これまで発売された全モデルに対して記念リリースの新ファームウェアが提供されたのです。L5PROに至っては約7年ぶりのファームウェア更新が行われたわけです。このファームウェアの完成度には難もあるのですが、ファイルの再生互換性は大幅に高まっていて、これまで再生できなかったファイルも試した限りでは全て再生できるようになっていました。そこで購入から5年以上経過しているものの、新たなDAPとして評価してみようと思いここで取り上げることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この辺りの写真は5年前に撮影しておいたものです。今見ても木の背面パネルなどなかなか個性的で優れたデザインだと思います。

更新: 2024/08/08
総評

ややアナログ的な個性の強い音調

当時ファイル互換性の低さにがっかりして、あまりきちんと音質評価はしていませんでした。再生中の写真に写っているイヤフォンがFiiO F9ですからね…。当時から64AUDIO U4やJH Audio Michelleは持っていたわけですから、本気で聴くならその辺りを使っていたはずです。

 

 

 

 

 

 

 

しかし今回はごく普通の試聴ですから、イヤフォンも主力級を投入します。Brise Audio YATONO-CONV LEを介して、64AUDIO U6t、qdc WHITE TIGERを組み合わせて聴いてみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソースは「Ten Summoner's Tales / Sting」「Freedom / Journey」辺りを聴いています。

 

まずオーディオ的に見ると、そこそこのクラスのDAPとしては珍しくやや中域が張ったカマボコバランスです。レンジ感はロー、ハイ共に端の方までは伸びきっている感じが無く、やや狭めに感じられます。

 

音場はやや狭めですが、その空間の中の密度が濃く描写されるタイプです。解像度がさほど高くはないため、音場の見通しは少し暗めです。

 

こうやって特徴を書いていくと何処が良いのかと疑問に思えてくるのですが、実際に出ている音の印象は決して悪くありません。それはアコースティック系の楽器は特にそうなのですが、独特の生っぽさを感じさせる質感の良さのおかげでしょう。ヴォーカルはやや遠目なのですが、ヴァイオリンやアコースティックギター、フラメンコギターといった音に謎の説得力があり、それがこの製品の独自の世界観として描かれます。次元は違うものの、LUXURY&PRECISIONの弩級DAP、LP6を聴いた時などもやはりこの楽器の説得力によって独特の世界観が構築されていました。これがある意味メーカートーンということなのでしょう。

 

以前サイラスの方に伺った話では、LUXURY&PRECISIONの開発者は基本的にクラシックでばかり試聴しているそうで、電子楽器や打ち込み音などはほぼ考慮されていないようです。ロック系の楽曲でヴォーカルの強さがやや不足するのもここに原因があるのかも知れません。

 

はっきり言ってしまうと、このDAPと音が似ているDAPというのは、私が知っている限りはありません。強いて言えばCOLORFLY U6の音を聴くと何となく共通項が見出せそうな気はしますが、それでも似ているという次元ではありません。というよりDAPどころかオーディオ全体で見ても、ここまでアコースティック系楽器以外の音を潔く諦めている製品などそうそうないはずです。

 

強烈な個性の持ち主であり、独特の魅力はあるのは間違いないのですが、このDAPを他人に勧められるかといえば間違いなくNOです。DAP複数使いで今までと全然音の傾向が違うものが欲しいという、極めてニッチな要求に応えるのであれば選択肢としてなり立つものとなります。

 

 

なお、序盤に触れた10周年記念ファームウェアについてですが、再生互換性が大幅に向上した一方で、日本語メニュー表示が出来なくなってしまいました。一応言語選択に日本語は存在するのですが、設定しても表示は何も変わりません。それ以外の言語は全て設定すれば表示はその時点で変わります。

 

個人的には再生互換性を優先して現在は英語設定で利用しています。ファイル名や曲名の日本語はこの状態でも表示されますので、まあ致命傷ではないから良いかという感じです…。

  • 購入金額

    20,000円

  • 購入日

    2019年07月13日

  • 購入場所

    ポタフェス 秋葉原 2019 夏 物販会場

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