レビューメディア「ジグソー」

入手のハードルが高いレコード

アニメ/ゲーム等のメディアで展開される「ラブライブ!サンシャイン!!」発のユニット、Aqoursの初期シングル2枚が、アナログレコード盤で発売されたものです。シングルではあるのですが、Off Vocalトラックも含めて収録されるため、LPと同じ大きさの12インチ盤として発売されました。まあ、今時CDのシングルも12cmのアルバムと同じサイズの、所謂マキシシングルで発売されていますので、それと同じだと思えば良いのでしょうか。

 

ここ数年は新曲を殆どアナログ盤とダウンロードで購入している私からすれば、この類のネタはコレクション対象となり得ますので、発売予告が報じられた時点で購入するつもりでいました。

 

ところがこのレコードは、Aqoursのファンクラブである「Aqours CLUB」の会員限定販売で、しかも4月下旬発売予定であるにもかかわらず2月末までに注文された分のみが生産されるという完全限定生産であることが判明したのです。

 

もっとも、Aqours CLUBはファンクラブとはいっても、実際には年度ごとに発売される「Aqours CLUB CD Set」を購入して、そこに封入されたシリアルを登録することで会員になるという、比較的敷居の低い入会方法が採られています。

 

どうせこの類の品は転売目的の人間が出てきますのでそれを待つということも考えたのですが、確実性を取って、私もまず「Aqours CLUB 2018 CD Set」を購入して会員IDを取得後、こちらのレコードを予約しました。

 

その後生産遅延による発売延期により5月中の出荷という連絡があり、昨日ようやく手元に到着しました。注文してから実に半年近く待たされた計算です。発売された2枚は両方購入していますが、今回は2ndシングル「恋になりたいAQUARIUM」の方を取り上げることにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本盤のLPレコードには意外と用意されないことが多い、帯が付いていますね。表のジャケットデザイン自体はCDと同じなのですが、帯があることで少し印象が変わりますし、何よりイラストがLPジャケットサイズとなるとある意味異様な迫力です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盤面は予告通りのピクチャーディスクとなっていますが、黒い通常の素材の上にプリントした形となっているようです。カラービニール盤よりは音質的なデメリットは少なそうです。

 

ところで、よく見るとCDには存在しなかった7トラック目が存在することに気付きます。それは「恋になりたいAQUARIUM Acappella」というトラックです。

 

これは簡単に言うとOff Vocalの正反対です。つまり通常の曲からオケの部分を全て取り除き、ヴォーカル部分だけを収録したものです。単純にオケを抜いただけですので、間奏の間など長々と無音が続くという不自然さがあり、この辺りは上手く編集すれば良いのにと思ってしまいました。

 

更新: 2019/05/17
総評

音質だけならハイレゾ配信が有利

それでは、肝心の中身について、音質評価をしてみましょう。

 

試聴環境はいつも通りの再生環境である、Technics SL-1200G+audio-technica AT-OC9/III+Phasemation EA-200を使います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際にレコードを置いてみると、何というかSL-1200Gの佇まいまで変わってしまうような、得体の知れない迫力があります。

 

 

 

 

 

 

 

再生していても、33 1/3回転のレコードではある程度イラストを目で追えてしまうので、迫力は充分にあります。

 

 

さて、本題の音質ですが、ハイレゾ配信されている2曲目「待ってて愛のうた」を購入して、それと聴き比べてみました。

 

 

レコードの方で一聴して感じられる特徴は「Hi-Fi感をそぎ落としている」ということです。高域方向の透明度や解像度、ヴォーカルの鮮度や音場の広さなど、多くの点でハイレゾ版が明らかに上回っています。レコードの方のヴォーカルは、まるでアナログカセットで3回ぐらいダビングを繰り返したかのような鮮度のなさです。まあ、この表現で理解できる人は間違いなく昭和世代でしょうけれど…。

 

しかし、ベースラインのバスドラムの力感や明瞭度、厚みといった低域方向の質はレコードが上回るのです。スペアナで確認しても、ベースやバスドラムの中心周波数がレコードの方が明確に下がっていますし、低域全体の量も増しています。

 

こうなった理由は恐らくマスタリング(カッティング)の音作りでしょう。ハイレゾが出ているソースを敢えてレコードで発売する以上、レコードっぽさが感じられるように音を組み立てたと見るべきではないでしょうか。

 

とはいえこれはステレオタイプなレコードのイメージであり、普段はデジタルソースに引けを取らないレベルのクリアさを発揮するSL-1200Gで聴いている限りは、レコードの音を曲解しているとしか思えません。一定の水準を超えるレコードの音は、並のデジタル以上の鮮烈さを持っていますからね。

 

 

さらにもう一点苦言を呈するとすれば、出荷時点で微細な塵が多く付着しているのか、結構スクラッチノイズが派手に乗るということです。恐らくピクチャーレコードにするためにプリントした後、上掛けしている層のせいだと思うのですが、乾式のクリーナーで拭いた程度では全く落ちません。これは以前紹介した液体クリーナー「OYAG」を使ってしっかりと磨いたところ、ピークレベルを遙かに超えるほどの大きなノイズは発生しなくなりました。細かいものはどうしても残ってしまいますが…。

 

 

 

 

 

 

折角レコード化するのであれば、音質面でも良い意味でレコードらしさを追求して欲しかったのですが、残念ながら今回のレコードはその水準には達していませんでした。コレクションとしてはアリですが、オーディオ的な価値は少々薄いと思います。

  • 購入金額

    3,240円

  • 購入日

    2019年05月15日

  • 購入場所

    ASMART

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