新たにメイン級で使うために導入したMCカートリッジ、audio-technica AT-OC9/III。レビューにも記載した通り、基本性能の高さは一聴して判りますが、組み合わせたヘッドシェルAT-LH15/OCCとの組み合わせでは、やや淡泊で素っ気なく聞こえてしまう一面があり、これを改善することで大きく魅力が増すだろうという印象を受けました。
ヘッドシェルとカートリッジの間で最も音質に大きく影響する要素は、その2つの間を接続するリード線ですので、まずはリード線を何か別のものにしてみようと考えました。そこで毎度おなじみのオーディオ店に行ってみたところ、事実上唯一となるリード線の選択肢がこの製品でしたので、取り敢えずこれを入手してみました。Ortofon(オルトフォン)製のLW-7Nです。
オルトフォンといえば、フォノカートリッジ製造メーカーでは世界でも最大規模となるデンマークの企業ですが、この製品はオルトフォンジャパンという、同社系列の日本企業により開発されています。実際にパッケージには「made in Japan」と明記されていますね。
ちなみに、初期のオルトフォンブランドのケーブルを手掛けていた方が、その後独立して立ち上げた会社が、前園サウンドラボ(ブランド名「Zonotone」)であり、今でも両社の製品には構造等に類似点が見られます。
LW-7Nは、型番が示す通り7N(純度99.99999%)の無酸素銅を採用しているのですが、厳密にはこの製品の場合7N OFCと6N OFC(線径が異なる)を組み合わせたハイブリッド導線となっています。それぞれの線材に音質的な特徴があるため、それらを組み合わせることで狙った方向の音に組み立てていくということだそうです。
価格なりの違いは感じられる
早速ですが、ヘッドシェル標準添付のリード線(audio-technica AT6101相当品)と交換してみました。なお、このLW-7Nは希望小売価格5,000円、AT6101は希望小売価格1,000円(いずれも税別)と、実に5倍の価格差が付いていますので、さすがに聴き比べて違いが判らないレベルにはならないだろうという安心感はあります。
実はオルトフォン製のリード線は、端子部がやや窮屈なほどきつく作られているため、入りにくければこのように千枚通し等を使って径を広げてやった方が良いでしょう。ちなみに同じメーカー同士となるAT6101では、ごく普通に指でそのままターミナルピンに挿入できる程度のきつさです。
どのみちこの作業に使えるような工具は用意していませんでしたので、4本とも千枚通しで穴を広げて、指でそのまま押し込みました。本来は精密作業が可能な程度のラジオペンチ等を使った方が良い作業ですので、あまり真似はされない方が良いかと思いますが…。
早速試聴してみましたが、大きな違いとなったのは中低域の密度感であり、AT6101で見られた淡泊さは大幅に緩和されました。低域方向の馬力や深さも結構変わったように思えます。
AT6101は決して出来が悪いリード線ではなく、カートリッジの特徴を割合素直に表してくれるという良さはあるのですが、AT-OC9/IIIの音質傾向をあからさまに出し過ぎる傾向があったようです。その点、リード線自体にある程度低域方向の濃さがあるLW-7Nは、最終的に出てくる音質でAT6101よりは好ましい方向に動いたように思えます。淡泊さがある程度改善したことで、AT-OC9/IIIを常用できる目処は立ったといえます。
ただ、これで完全に満足かと言われるとまだそこまでには至っていません。もう一歩の「熱気」や「生々しさ」という要素が出てくれば文句ないレベルに達すると思うのですが…。
そういえば、以前この製品の前身に当たる7N-LW1という製品も入手していて、ZYX R50 Bloomで使っているのですが、これとの違いについては組み合わせているカートリッジが違いますのでコメントは難しいのものの、LW-7Nの方が中低域のエネルギー感は上回っている感があります。
また色々な意味で余裕が出てきたら、他のリード線も試してみようと思っています。
3ヶ月しか使えないのは論外
購入から約3ヶ月使ってきましたが、右chの音が途切れたり、ノイズが乗ったりするようになってきてしまいました。
そこでカートリッジを取り外して調べたところ、何と右ch+のカートリッジ側リードチップが脱落していたことがわかりました。それこそ小学生時代から数十組のリード線を使ってきましたが、こんなにあっさりと壊れたリード線は見たことがありません。というか、使っていて壊れたリード線自体が初めてです。
一応オルトフォンジャパンにメールで確認を入れてみましたが、リード線はそもそも保証が付かない商品なのでサポート対象外という回答が返ってきました。一応細かい事情を電話で聞かせて欲しいということでしたが、平日昼間に電話をかけてこいといわれても、大抵の社会人は難しいと思います。そもそもサポート外という結論が出ている以上説明してどうなるものでもないでしょうし。
というわけで、音質的には充分な実力を持った製品ではありましたが、3ヶ月しか使えない製品を他人様にお勧めするわけにはいきませんので、ここに追記させていただきました。私も他社製品を何か調達することにします。
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購入金額
4,320円
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購入日
2019年03月02日
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購入場所
ノジマオーディオスクエア
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