意識が脳の中のどこで、もしくは何によって発生しているのかを、現在の科学的な事実と仮説検証と共に探っていくのが本書の内容。脳のメカニズムを模倣した機械(ソフトウェア的な実装を含む機械)に意識は本当に生まれるのかどうかを思考実験していきます。
化学的な現象としてだけみれば、脳は巨大なスイッチの塊。電気的な信号が伝わるだけ、であることを本書ではかなり詳細に書いています。このスイッチの塊を模倣しているのが、ニューラルネット、もしくはディープラーニングと言われる最近のAI技術であることは有名かと思います。ニューラルネットとの違いとして、脳内では電気信号なので信号が逆流することはない、つまり誤差逆伝搬による学習は脳内で行われていない、という当たり前の事実にちょっと驚きました。
脳が単なるスイッチの塊なら、サーモスタットにも意識があるのではないか?という狂気じみた問いかけについて書かれてました。哲学者のチャーマーズはサーモスタットにも意識があると言っているそうです。サーモスタットは「寒いなぁ」「暑いなぁ」と思ってると。万物に意識があるという話には日本的なアニミズムを感じます。
逆に、自由意志の存在を確認として、脳に特殊な装置をつけた被験者にある記号を見たら、スイッチを押してもらう、という極めて簡単な実験について書かれています。この実験を行うと、実際にスイッチを押した時刻より、記号を見て反応するニューロンの発火時刻は0.5秒程度遅くれるのだそうです。つまり、スイッチを押す動作が記号を見たという反応より早く行われているのだと。であれば、記号をみたら反応する、という自由意志は本当にあるのかという問いかけでです。この実験は割と有名で受動意識仮説の論拠の一つになってます。
さて、機能だけで見れば脳は巨大なスイッチの塊なので、そのスイッチのうち一つを人工的な機械に置き換えたとしても、おそらく問題なく脳は動き、意識が生まれています。では、全てを置き換えてしまった場合意識は存在するか、という疑問にたどり着きます。しかし、意識の存在を外部から観測できないため、この方法では意識があるかどうかを確認ができない。なので、右脳と左脳のうちどちらかを機械にしてみようというのが本書の最終的な思考実験の着地点です。著者は脳科学者なのですが、「その実験が実際にできるようになったらぜひ自分が最初にやってみたい」と迷いもなく書いていました。時に科学者ってイキ過ぎちゃんですよね...。
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購入金額
994円
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購入日
2018年10月頃
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購入場所
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