レビューメディア「ジグソー」

時が解決することもある...「熟成」、その言葉が一番しっくりとくる

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。デビューからキリの良い年で記念イベントをするアーティストは少なくありません。それまでの自分を見つめ返し、時が解決したかつての問題を振り返り....今なお、玄人好みの音楽シーンで存在感を示すギタリストの記念ライヴの記録をご紹介します。

 

Char、ギタリスト。ヒットチャートの真ん中を歩むような曲は出していないのだが、「Char」と言えばそのプレイと音が想い出される数少ないアーティスト。

 

そんな彼もデビュー当時は「歌謡ロック」路線だった。今ほど情報拡散の手段がなかった時代で、「とりあえず売れる」ことが、音楽界やレコード会社に対する発言力を増すための手段だったため、彼自身も「シングルは別もの」と割りきり、いわゆるポップアイドル系の曲を出していた。

 

その後固定のファンが付いてからは徐々に自分のやりたい音楽に集中していき、アイドル系のアプローチからバンドへ移行、さらに通販専門のインディーズレーベル“江戸屋Record”を立ち上げ、レーベルのしがらみに縛られづらい活動へと軸足を移していく。

 

そんな彼にとって、特に初期シングルのいくつかは自分が関わった部分が少なく、「売れるために」「レコード会社主導で」リリースした、いわゆるくろれきーし。バンド活動に身を入れ、本格派として活動していたデビュー10周年あたりには「封印」していた過去。

 

そんな彼がデビュー20周年を迎えて、それまでの自分を俯瞰する形で、ソロ、バンド問わず自分が今まで関わってきた曲を演奏したライヴが開催された。1996年11月15日に日本武道館で行われたデビュー20周年記念ライヴ“Electric Guitar Concert”、これはその記録。

 

それまで避けてきた、デビュー当時のアイドル路線の売り方で創られた曲、20年の時がそれとの和解を促し、良いアレンジと共に蘇っている。

 

ディスクは、SE風の「SOUND OF VISIONS」で幕を開けるが、ライヴの「開幕」は、当然「SMOKY」。人中心のバンドならでは?盟友Jim Compleyのビートも奔り、喰い喰いの16ビートのコーラスに続く、コージーこと小島良喜のキーボードソロの部分は速い速いwこの時のベーシストはフュージョン~ファンク系の名ベーシストPaul Jacksonだったのでなおさら煽られ、Charのプレイも細かく、速い。

 

続く名曲「SHININ’ YOU,SHININ’ DAY」もベースのハネが感じられるファンキィなプレイで、軽やか。ワウとディレイを効かせたギターで、フィードバックを使った音色で、ヴァイオリン奏法を取り入れながら、幻想的かつ、泣きのプレイを聴かせるインスト曲「THE LEADING OF THE LEAVING (loneliness)」となどとヴァリエーション豊かな曲が続き、前半のポイントはCharの2ndシングル、「気絶するほど悩ましい」か。

 

この曲は、完全に他人の曲。レコ大の常連で売れっ子作詞家だった阿久悠が詞を手がけ、作曲は北原佐和子や小柳ルミ子への曲の提供や、千葉ロッテマリーンズのオフィシャルソング製作で識られる梅垣達志。元の曲調としては、多少は「ロック調」ではあったが、いわゆる歌謡曲・ヤングポップスの域を出ていないものであり、Charもバンドでの活動を開始した後は全く演奏していなかった曲。それがゲストギタリスト西慎嗣が加わり、二人の生ギターだけで奏でられると全く違う小粋な曲になる。この曲が前半の一番の聴き所かも知れない。

 

2枚目に入るといきなりPaulのベースソロ。スラップ中心ではなく、指弾きフレーズ中心のソロというのが意外だけれど。そのまま「GOT NO STRING ATTACHED」になだれ込む。この曲では西もエレキギターで参加、ギター2本体制になる。小島のオルガンに、米米CLUBのホーンセクションBig Horns Beeのメンツが加わり、スゴイファンキィィィ!(このときのBHBのメンバーは金子隆博、織田浩司、河合わかば、下神竜哉、小林太)。

 

ジャジィで小粋な「TOKYO NIGHT」などを挟みながら、徐々にライヴは後半。「RAINBOW SHOES」などおなじみの曲で盛り上げた後、アンコール前のラス曲は、シブいチョイスで「MERRY-GO-ROUND」。Big Horns Beeの生ラッパが入ると、異常にファンキィ!

 

演奏を終えてメンバー紹介をし、ステージを去るときに「どうもありがとう。ほな、残業で。タイムカード、ガッシャ」とイイながら去るのが茶目っ気がある。

 

アンコールでは、デビューシングル「NAVY BLUE」~初期の名バラード「Wondering Again」~4thシングル「闘牛士」と3連チャンで「今まで演奏されなかったけど、営業に頼まれた残業をいきます。」などとイイながら、最初期の曲を演りライヴを締める。

 

extra discに移るとダブルアンコールの「SMOKY」!こちらはBig Horns Beeも西も入った豪華ヴァージョン。西が入ったことにより、バッキングから解放された小島のパーカッシヴなオブリがスピード感溢れる。細かいPaulの刻みとJimの足技が低音域で光る。速い曲だけにライヴでは流れ気味になってしまうことがあるけれど、これは屈指の名演かも。コージー⇒Big Horns Beeのメンバー全員と続くなが~いソロもライヴならでは。10分ほどの演奏の後、挨拶をしてライヴは〆。ディスクにはそのあと、導入で流れた「SOUND OF VISIONS」と対をなす曲「SOUND OF SHADOWS」が収められている。

 

この作品、この3CD仕様は「完全生産限定盤」で、2CDの通常盤にはブラスが入ったゴージャスかつファンキィな「SMOKY」は収められなかった(その後の紙ジャケ再発盤では収められたが、「SOUND OF VISIONS」は省略)。そういう意味でもこっちの限定盤が、必聴盤。

 

現在は既に芸歴40年という彼だが、この20周年ライヴのあたりが一番、濃く、脂ぎっていて、活力もあり、それでいて「過去の自分」と和解していて、イイカンジの演奏。

 

あの頃を想い出して熱くなるね。

右上のネガポジ反転のような絵の部分には特にシカケはない
右上のネガポジ反転のような絵の部分には特にシカケはない

 

...しっかしJimの左手ライドカッコイイなー...

 

【収録曲】

<disc one>

1. SOUND OF VISIONS
2. SMOKY
3. SHININ’ YOU,SHININ’ DAY
4. 空模様のかげんが悪くなる前に
5. ALL AROUND ME
6. 逆光線
7. THE LEADING OF THE LEAVING (loneliness)
8. KINDESALTER
9. 気絶するほど悩ましい
10. 篭の鳥
11. SONG IN MY HEART
12. SO MUCH IN LOVE
13. DAZED (DAZED BY LOVE)

<disc two>

1. GOT NO STRING ATTACHED
2. LIVIN’ IN TOKYO
3. TOKYO NIGHT
4. NATURAL VIBRATION
5. RAINBOW SHOES
6. STAND
7. MERRY-GO-ROUND
8. NAVY BLUE
9. WONDERING AGAIN
10. 闘牛士

<extra disc>

1. SMOKY (Encore)

2. SOUND OF SHADOWS

更新: 2018/04/15
必聴度

活きたプレイが素晴らしい

周りにも恵まれ、時が解決した心情も合わせ、一番脂ののっている時のプレイ。

  • 購入金額

    6,800円

  • 購入日

    2000年頃

  • 購入場所

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