待ち合わせの時間調整でHARD OFFに入ったところ、オーディオアクセサリーの棚にジャンク扱いのヘッドシェルがいくつか並んでいるところを見つけました。
最近ヘッドシェルというと、軽量カートリッジをしっかり支えるべく比較的重めのものを買っていますが、私が普段レコード音源の取込に使っているKENWOOD KP-9010はヘッドシェル込みで24g以下のカートリッジしか使うことが出来ず、本来は軽量級のヘッドシェルの方が必要となりやすいのです。
そこにあったヘッドシェルを見ていると、軽量級かつある程度剛性の高そうなものとして、audio-technica製の旧製品、AT-LT8(自重8.1g)とAT-LS10(自重10.2g)が含まれていました。特にAT-LT8の約8gという重量では、今となってはしっかりしたものを選ぶのはほぼ不可能なのです。これを使えば、自重の重さで有名なOrtofon SPUシリーズでも、専用シェルを持たないSPU Royal-Nであれば装着可能となるという点に惹かれて買ってくることにしました。AT-LS10も安かったのでついでに購入しています。もっとも、SPU Royal-Nを買うような予算は全くないということは言うまでもありません。
さて、買ってきた2つの内AT-LS10には「針なし」とシールが貼られていました。ヘッドシェルに針がないのは当たり前の話なのですが、カートリッジとセットで売られているものと思ったのでしょうか。いずれにしても、逆にAT-LT8には針があるということです。
中を見ると、確かに何かしらのカートリッジは存在しているようです。針先などはよく見えませんが、別にこれが使えなくても欲しいのはヘッドシェルですから問題は無いわけです。
箱を開けてみると、意外ときれいな状態でカートリッジが装着されていました。一応カンチレバーも見えています。色からして普通のアルミパイプっぽいものですが。
取り出してみると素性は直ぐに解りました。腹の部分に「MC-4」という型番が書かれていて、この位置からは見えていないもののYAMAHAのロゴもありますので、YAMAHA MC-4で間違いありません。
カンチレバーが短いので途中で折れているのかとも思ったのですが、きちんと針先もありました。単に最初から短いだけだったようです。
何と空芯コイル採用
取り敢えず外観からは無事そうに見えましたので、音を出してテストしてみようと思いました。しかし、このカートリッジは自重が軽く、総合計で約14gと、KP-9010で使える下限の重量しかありません。
生憎重量級のヘッドシェルに余りがなかったため、いくらかはマシだろうと思いついでに買ってきたAT-LS10の方に移してから音出しをしました。AT-LS10のリード線はストック分のAT6101に交換しています。
さて、使い始める前に針圧などを確認しなければいけないため、この製品のデータを探したのですが、発売当初29,000円と特別に高級というわけではない(当時のDENON DL-103が約2万円ですから、中級グレードということになるのでしょうか)製品でありながら、空芯コイルを採用しているなかなか凝った製品であることが判りました。当時DENONもDL-103シリーズの現代版高性能モデルという位置付けで空芯コイル採用のDL-103Mという製品を発売していましたが、価格的にもそれと競合する存在だったということでしょうか。針先も特殊楕円針とのことで、想定寿命は恐らく3~500時間程度ではないかと予想されます。
さて、最初は盤面の荒れがひどく、溝を痛めてしまってもさほど害にならない盤から試していったのですが、出てくる音に問題は無いようです。そこで徐々に普段聴く盤へと替えていったのですが、35年も前の製品ながらコンディションはかなり良好であることが判ってきました。よほど保管条件が良かったのか、まだダンパーもしっかりと効いているようです。
音質的には、直前に取り付けていたZYX R50 Bloomと比べるとやや低域の深さは足りませんし、中域も少し解像感が足りない感じはするのですが、それでも年代と価格を考えればかなり高水準な音で驚かされました。しかもR50 Bloomはヘッドシェルが重量級かつ高剛性のaudio-technica AT-LH18ですし、リード線もOrtofon製の7N-LW1ですから、条件はこちらの方がずっと有利なのです。
こうなってくるともう少し良い条件で使ってやりたくなり、先ほどヘッドシェルをR50 Bloomと同じAT-LH18に付け替えました。
これにより少しハイが上がった感はあるのですが、目に見えて中域の解像感と低域の重量感が増しました。率直に言って傾向こそ違うものの、水準としてR50 Bloomに特に劣っているとは感じられないほどとなったのです。
さすがに音のバランス的に近いaudio-technica AT33Rほど美音系ではないのですが、普段使いはこれでいいのではないかと感じられる程です。
ヘッドシェルを買ったつもりがカートリッジを入手して、それにヘッドシェルを新たに用意するという本末転倒気味な結果ではあったのですが、この価格でこの音が手に入れば満足感しかありません。
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購入金額
1,620円
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購入日
2018年04月09日
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購入場所
HARD OFF
フェレンギさん
2018/04/12
ヤマハのMCカートリッジ すっかり忘却しておりましたが、たしかにありました。
読ませていただいた私も非常にラッキーな気持ちです
ありがとうございます。
jive9821さん
2018/04/12
有難うございます。昔からどういうわけか、カートリッジはお買い得品に出くわすことが割合よくあるのです。
ヤマハ製のMCとしては標準グレードだったらしいのですが、DENONから技術者が移ってきて作ったとも言われている製品のようで、かなり凝った構造となっていて、上位モデルとはカンチレバーの素材や針先で差別化されていたようです。
そういえば昨年ヤマハの試作ターンテーブルを試聴したときに「『今は』ヤマハではカートリッジを用意できないから」と担当の方が仰っていましたが、確かにかつては結構豊富なラインナップを揃えていたようです。
MC-4は1982年頃発売だそうですから、よく考えると、私が持っている初期型のGT-2000とほぼ同時期の製品でした…。