いつものように激辛レビューです。事実しか述べません。
【総評】
ニチコンの MUSE KZ、
Onkyo P-306R(プリアンプ)用に購入(電源および信号部)。
今回試したのは、下記の通り。
50V 1000μF
25V 1000μF
16V330μF (これのみFine Gold)
50V 47μF
500時間ほどエージングしているが、ほとんど音質は変わらない。低音が多少は量的に増えたくらいか。それでも質としてみれば伸びも響き(余韻)もなくひどいもんだ。
KZに交換後、一言で言って、音は劣化の方が目立つことになってしまった。誰が聞いても確実にわかるほどの変化の激しさ。特に線が細くなってしまい聞けたものではない。陳腐な言葉で表現すれば、艶がない。バイオリンなどの弦楽器にそれは特に現れている。
あまりにひどかったので、M-506R(パワーアンプ)はコンデンサの交換をしないことにした。
発売当時、プリ+パワーで30万クラスだったアンプが、まるで80年代半ばの安いミニコンポのような音になってしまった。シャカシャカした薄っぺらい音。オリジナルのコンデンサの方が音質はよかった。やはりメーカーはきちんと計算して部材を、選別品を選択しているようだ。
MUSE KZの音が良いって、どう見てもウソだろ!これのどこが音が良いのだろうか?
MUSE KZについて最高とか音質が良いなんて言ってるのは、単に思い込みか聞き分ける耳を持ってないだけだろ!と。
最近の若い人は、アコースティックの楽器で奏でる音楽を聴くことがほとんどないから?、あるいはパソコンやスマホでMP3など圧縮音楽ばかり聴く人が多いからなのか(192kbps超えたら私もほとんどの場合でCDとの違いは判らないけど)?。
本当の音 (なるべく原音に近い音) を知らないのではないか?
それとも今後更なるエージングを続ければ音質は変わってくるのか?
それとも単にこのP-306RにはMUSE KZは全く持って合わなかったといういことか?
(オリジナルコンデンサもニチコンが多用されていますがね)
ニチコンのコンデンサ MUSE KZは、少なくともクラッシックやジャズには向かない。あるいはクラッシック向けのアンプ用には向かない。コンデンサ交換するなら、別のメーカーを選ぶ方がいい。
テクノ系なら MUSE KZでもいいかもしれないが、中年に差し掛かった私の耳 でも高域がきつく感じるくらいだから、若い20代ならもっと疲れてしまうのではないかと思う。
パッと聴くと、解像感が上がって透き通って聞こえるが、それは中域の音が出てないのに、高域の音が出すぎるほど前に出てくる上に線も細いからであり、よく聞けば高域の音に付帯音が出たりしてゆがんでることがわかる。
細かい音の傾向は下記に箇条書きにした。
コンデンサ交換後とりあえず300時間はエージングしている。
そのうち200時間以上はスピーカーを駆動させている状態、残りは電源だけ入れている状態。
【テストに使用した機材】
(いずれも90年代後半が多くて年代物だが、ほとんどは民間業者やメーカーで修理やチェック済み)
プリアンプ:Onkyo P-306R
パワーアンプ:Onkyo M-506R (純正サーボケーブルでプリと接続)
CDP:DENON DCD-1650AR
DENON DCD-S10
Tuner:KT-6050&KT-1100D
CassetteDeck:Sony TC-K555ESG
Pioneer T-WO5SR, T-D7
Speaker: DIATONE D-2000
Onkyo D-77RX
【音質の傾向 (ソースは主にクラッシック系CD。用いたCDPは中域が厚め傾向のはずだが…)】
1. 全体的に線が細く伸びもない。ドンシャリ系だが、そのドンさえも足りない。シャリシャリか。ただし、交換直後に比べエージングしたらわずかだが低域は量的には出るようになってきた。
2. しかし、低域に伸びがない。伸びというか響き、余韻がない(これは高域でも同じだが)。そのためコントラバスやチェロなどの音があまりにも醜い。聞けたものではない。ドラムなどはドンとなって終わり。音が最後まで響かずに途切れるという感じが如実に聞こてくる。こもりでもあるのか、古いカセットテープのよう。
3. 中域が抜け落ちてる感がハンパない。これはひどい。
例えば、深海をイメージした某曲のエコーなどがほとんど再現されなくなった。これは非常に明瞭に出た。かなりひどい。上記2とも関係してると思われる。響かないんだな。
4. 高域も線が細くなっただけで響きも何もない。
もっともよくわかるのはホールでの拍手の音。まるで雨が降ったようなパラパラとした音になってしまった。これは高域から中域高部にかけて余韻がなくなったからだろう。
5. 解像感が高まり、高域が伸びると評している人も見かけるが、伸びてるのではなく単に高域の線が細くなってるだけ。音質としてみれば高域は全く伸びてない。
高域が(その質は別として)量的には出るのに中域がまともに出ないから、高域の音が前に出てくる。そのため、解像感が高まったように聞こえるだけ。楽曲としてみれば、明らかに全体のバランスが完全に崩れてる。
6.高域には歪みや附帯音もあり、明らかに周波数特性は狂ってる。まるでドルビー録音したカセットテープをドルビーなしで再生させているような状態。ひどい歪みようでキンキンする。
7. クラッシックやポップスのライブコンサートなどを聞いても、ホール感、奥行き感がすさまじく減少。 本来あるはずの立体感がなさすぎる。これはあまりにもひどい。恐らく1や2、3に関係すると思われる。
手持ちのLondon Record(DECCA Record)『ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 (ピアノ:アシュケナージ、演奏コンセルトヘボウ管弦楽団、指揮:ハイティンク)』を流すと、しょっぱなかからホール感がなくなっていることがわかる。ホール感だけではなく、とにかく中低音が出ていないため、「誰が聞いても確実に認識できるほど音が軽くなった、立体感(奥行き感、前後方向へのステレオ感)がなくなり薄っぺらくなった」ことがわかる。
8. 高域寄りがきつく、中域から低域に欠けて不足しているため高音部だけがやたらと前に出てくる。
ピアノ協奏曲を聞いても、ピアノがやたらと前に出ており、他の高音楽器も前に出てくるが、それ以外の中低域の楽器が全く引っ込んでしまって、オケ全体のバランスが明らかに崩れた。そのためなのか立体感が減少した。
9.ピアノの高音が硬く細くなり耳がつかれる。
10. 全域において余韻が出ず線が細く、特に中低域では量的にも非常に不足していること、高域は線は細いが量的には出ていることからなのか(?)、3Wayスピーカーでは、音像の位置が明らかに高いところに出るようになった。音場も狭くなった。
11.中域がでてないためか、人の声の質が変わった。女性ボーカルの音声はきわめて硬く細くなった。
声楽、ポップスのボーカル、FM放送などで男女にかかわらず人の声が細くなった。
12. FM放送を聞くと、やたらとサ行やタ行が耳につくようになった
(音が硬くなった、ゆがんだ、附帯音がつくようになった)。これはかなり顕著である。
上記 9に関係しているだろう。
13. 同じボリュームの状態なら、コンデンサ交換前に比べ、明らかに音場が狭くなった。
左右方向へのステレオ感が減ったからか?
ボリュームを上げても音場は狭く、スピーカーを超えない感じがする。前後の立体感が薄っぺらくなったことも関係しているのだろう。
14. 中低音が響かないオーケストラの演奏くらい聞いていてつらいものはない。
つらいを通り越して、悲しくなる。
雅楽聞いてるんじゃないんだからさあ…
15. 音響用最高グレードというのは誇大広告だろ。
少なくとも 私 (あるいはP-306R) にとってはデタラメだ!の一言につきる。
ということで、200時間以上エージングしても良くならないので、残りの信号部にSIMIC IIを混ぜてみた。SIMIC IIを混ぜてからはエージングは50から70時間ほどだと思う。この記事を書いてからも鳴らし続けており、すでに12時間以上はたっている。
で、少しはマシになるかと思ったが、逆に、薄皮一枚を置いた感じになってしまった。
そのため、解像感はやや下がったように聞こえる。SILMIC IIを混ぜると全体的に輪郭が以前よりは甘くなる。そのため、高域のキンキンした歪みが多少は軽減された。それでもやはりまだキンキン感はキツイが。
バックにSIMIC II が、手前にMUSE KZ の音がある感じになった。
全域で音に厚みがありかつ輪郭もシャープになるコンデンサの組み合わせはないものなのだろうか。
MUSE KZ も SILMIC II もそれぞれ一長一短のようだ。
コンデンサの特徴ががストレートに現れる回路設計なのだろうか?
これからも、エージングは続けてみるが、SILMIC IIは変化があるかもしれないが、恐らくMUSE KZの傾向は変わらないと思う。すでに200数十時間、恐らく250時間はたっているので。
そもそも交換直後に全く出ていない中域が、エージング後にいきなり出てくることはありえない。
低音については、もう少し伸びが出てくることに期待したいが、これも恐らく無理だろう。
高音の硬さ、附帯音、ゆがみはひどすぎる。
ただ、古いカセットテープなど音がこもってるかもしれないソースを聞くには、KZはいいかもしれない。それでも各パートのバランスが崩れているので演奏は聞けたものではないが。深夜放送などトーク中心の録音テープなら、高音が強調されることでテープ独特のこもりはなくなった。
PioneerのカセットデッキはFLATシステムという高域を補正する機能がついているが、これをいれると逆に高域がきつくなった。ただし、音像はわずかに明瞭になった。それでもスピーカーの間でかなり小さくまとまってしまう感ハンパ無いけど。FLATシステムを入れなくても、MUSE KZの高域特性はカセットテープ(ただしトーク中心のソース)なら、それなりに使える。附帯音は覚悟の上だが。
【アンプについてたオリジナルのコンデンサについて】
元の信号用のコンデンサ(ニチコンとニッケミ)の容量抜けは全くなくて驚いた。信号部のコンデンサは至って元気なよう。結局、こちらへ戻すことになりそう。
やはりメーカーは選別品を利用しているのかもしれない。
ただ、ESRは計測していない(ESR計測テスターを持っていないので)。
DC漏れは容量抜けチェックだけでは不明なので、いずれはESRを計測してみたい。
ちなみに、信号部をオリジナルのコンデンサに戻しても、上記の傾向はそれほど大きく変わらなかった(それでも多少は変わった)。
ということは、電源部の平滑コンデンサやトランジェントキラー部のコンデンサの影響が大きいのだろうか。これらはMUSE KZ (一つだけはFineGold) のままなので。電源部のコンデンサの音質への影響がここまであるとは思っていなかったのでかなり驚いた。
小容量のフィルムコンデンサをパラっても中域の厚さ、あるいは全体的な線の太さは出てこない?だろうなあ…
信号部でも、EQ部とフラットアンプ部のコンデンサを入れ替えてみてるとどうなるか?こちらは試していないので、いつか試してみたい。
【最後に】
こうしたMUSE KZの傾向は、恐らく全体的に似た傾向にはあるだろう。
ただ、アンプの回路ごとに若干異なってくるはずなので、あくまでもOnkyo P-306Rという古いアンプで見られた現象、このアンプを使い MUSE KZ を評価すると最悪だったということにすぎない。
同アンプを再生修理している人がネットに散見され、私も参考にさせてもらったが、コンデンサ自体の交換は、元の音に慣れているなら、よほどのことがない限り行わない方がいいと思う。音質が全く変わってしまうので。
私の場合は、ICピン用ソケットを購入したので、いずれはソケットを基板に取り付けて、手持ちコンデンサをとっかえひっかえしながら音質の変化を楽しんでみたい。パワーアンプの方はいじりたくはないけれど。プリアンプのコンデンサ交換だけでここまで音が変わるということを知って、むしろ驚いた。
ちなみに、かつて某雑誌で一時推奨されたパワーアンプ直結については、メーカーや機種ごとにそれぞれ違いがあるので何とも言えない。良くなることもあれば悪くなることもある。ただ、直結はその後、衰退した。
音が悪くなるから衰退したというよりも、ソースセレクターが使えなくなることや、そもそもセパレートアンプを持ってる層が限られること、プリアンプとセットで売りたいメーカーからの依頼で薦めなくなったことが原因である。
もちろんCDPのバリアブルを通すことによる音質の劣化はあるだろうが、微々たるもの。そもそも2000年代以降のCDPにはバリアブル端子がついてない。パワーアンプのアッテネーターで調整するしかない。
ただ、M-506Rについていえば、下手にコンデンサ交換したプリアンプを通すよりも、オリジナルのままのパワーアンプへソース直結の方が音はよかった(明らかにホール感や中域や低域がしっかりと出ており、クラッシックソース向きであった)。元のコンデンサのプリアンプを通した状態にやや似るが、わずかに音が厚くなり低音も量的に出るようになる。
やはりセパレートアンプは、セットで音質が計算されているので、下手にプリアンプのみをいじると、とんでもないことになることがよくわかった。
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購入金額
0円
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購入日
2018年02月22日
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購入場所
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