レビューメディア「ジグソー」

アルバムならさまざまなヴァリエーションが楽しめる...と言えるがシングルでやられると方向性が異質すぎて?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストの表現の幅。その道を究めるがごとく一つの狭い方向性しか見せない(出さない、のか、出せないのかは余人にはわからないので)アーティストもいれば、複雑なカットを持つ宝石のように、様々な面で魅せるアーティストもいます。アルバムに収められた曲にヴァリエーションがあると、そのアーティストの「引き出し」の多さに感心しますし、シングルリリースされる楽曲の方向性が毎回微妙に異なると「新しさ」を感じたりします。ただ同じシングルの、しかも両A面扱いの二つの楽曲の方向性があまりに異なるとアーティスト「その人」が見えなくなる事もあります。それぞれの楽曲のインパクトが強いのがむしろ全体としてのアーティストの姿を見えにくくしていると感じた作品をご紹介します。

絢香。女性ヴォーカリスト。彼女の活動期は2006年から2009年の3年少々の第一期と2012年以降の第二期に分かれる。第一期はYUIや最近では家入レオなどの特徴あるヴォーカリストを育てた「音楽塾ヴォイス」を主宰する西尾芳彦とタッグを組んだ時代。ほとんどの曲を西尾と創り、2~3か月おきのシングル攻勢、タイアップによる露出、多数のヴァージョン違い盤の同時リリースによる店頭ジャックなどで押した時期。その後結婚と病気治療による活動抑制時期を挟んで、2012年からは自主レーベルで活動を再開、以前のような怒涛の攻勢という感じではないが、それでも6年間でシングルは配信も含めると第一期と大差ない数になったし、オリジナルアルバムは同数(それぞれ2枚)となり、十分活発と言える活動をしている。

そんな彼女の第一期半ばに位置するシングル。この時は両A面扱いで、片方はゲームテーマソング、もう一方はドラマ主題歌と両タイアップ。ただあまりに方向性が違って「シングル」としては統一性がないかな...と。

CCFF7こと「CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII-」のテーマソング「Why」。CCFF7は大作RPG、FINAL FANTASY VIIの派生ストーリーの一つで、その高い物語性と当時としては美麗なグラフィックが高く評価された。そして根底を流れる悲劇的な設定・ストーリーがプレイヤーを魅了し、単なるレべ上げ作業RPGに陥ることなく人気を博したPSP用ソフト。そんなソフトのテーマソングが「Why」。戦闘時の高揚するBGMの流れ...というわけではなく切々とした歌い方で♪大きな荷物を背負った/あなたを受け入れられる力/あるわ 信じてみて…♪と宿命が重いこの物語の世界観に寄り添う。絢香の声は時に張り、時に囁くようで、抑揚と強弱を上手く使ったエモーショナルなもの。

一方の「CLAP&LOVE」はドラマ「地獄の沙汰もヨメ次第」の主題歌。江角マキコ主演の嫁姑確執バトルドラマで、チョイとコミカルタッチもあったみたい。絢香はドスの効いた「ぺらんめぇ」調?の歌い方で、♪計画通りになんかいかない/人生/だから面白いんじゃないの?/寄り道で見つけた/隠れ家♪と力強く歌う。

ただこの2曲の表現型、西尾のもとでヴォーカルの表現力を学んだ絢香にとっては完全守備範囲なのだけれど、あまりに両極すぎる。美しい声で感情の流れを大切にしながら歌う「Why」とちょっと投げやりに蓮っ葉に歌う「CLAP&LOVE」。これが同一アルバム収録曲と言うならもちろんアリで、間を埋める曲もあるので絢香のジャンルの幅を感じさせることになるが(実際両曲とも2ndアルバム“Sing to the Sky”

に収録)、シングルの、しかも両A面曲としては両極端すぎて「絢香というアーティストがどこに行きたいのか」がわからない感じ。それともこのシングル買うのは彼女のことを識っている人前提で一見さんお断りスタンスなのかしら?

映像の方は2曲とも「Why」。ひとつはいわゆるPVで夜汽車に乗って絢香が旅する設定の世界観。もう一つはCCFF7のプロモーションのBGMという感じ。ゲーム登場人物の台詞も入っているし、音楽がオフる部分もあって、CCFF7>「Why」という感じ。ただ、蒼を基調とした絵柄や薄暗い世界観とこの楽曲は結構合っていたけれどね。

夜汽車で旅をする設定のPVと...
夜汽車で旅をする設定のPVと...
 
同じ曲をBGMに使ったセリフ付きMV
同じ曲をBGMに使ったセリフ付きMV

シングルの中にはA面曲とB面曲の方向性の差がほとんどなく、「この系統の曲好きでしょ?」とリスナーを引っ張り込むタイプもあるが、比較的多いのがアップテンポ曲とバラードなどそのアーティストの別の面もアピールするタイプ。ただこれもあまりに離れすぎると「そのひと」が見えなくなるなーと感じた構成。

限定盤は「Why」がトップで、通常盤は「CLAP & LOVE」がリード曲
限定盤は「Why」がトップで、通常盤は「CLAP & LOVE」がリード曲
 

そういう意味では間口って広けりゃいいってわけじゃないンだね?

【収録曲】
<CD>
1. Why
2. CLAP&LOVE
3. Peace loving people <Live ver 2007/7/10 東京国際フォーラム>
4. Why (Instrumental)
5. CLAP&LOVE (Instrumental)
<DVD>
1. Why (Promotin Video <ayaka Ver.>)
2. Why (Music Video <CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII- Ver.>)

「Why」

更新: 2020/07/24
必聴度

両極端の2曲を同時に聴くのはしんどいか?

シングルのカップリングって、アルバム購入まで至るか否かなので、結構大切だと思うのだけれど...

  • 購入金額

    1,800円

  • 購入日

    2007年頃

  • 購入場所

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