レビューメディア「ジグソー」

少々変化球なベスト盤

ロックバンド、シカゴの結成メンバーの1人にして、現時点での実質リーダー(シカゴは基本的にはリーダー等は置かないバンドですが、現在の活動で中心になっているのが彼であるため、こう見做されています)であるロバート・ラム。

 

シカゴは1967年結成(メジャーデビューは1969年)ですので、丁度50年間シカゴとしての活動を続けているわけですが、彼らはその間活動休止期間というものが無く、常に活動を続けていたため、活動歴やバンドの実績に反してメンバーのソロ活動が極めて少ないのです。

 

元々ソロや別のバンドの活動を続けたまま中途加入したビル・チャンプリン(2009年脱退)を除けば、シカゴ在籍中にソロ作品をリリースしたメンバーは、かつてのリード・ヴォーカルであったピーター・セテラの1作品と、つい先頃脱退を発表したピーター・セテラの後任ジェイソン・シェフの1作、そしてこのロバート・ラムの作品群があるだけです。

 

ロバートもシカゴがヒットチャートの常連だった1990年頃まではソロ作品は僅か1作品を発表したのみだったのですが、新作のリリースを巡ってレコード会社との対立が深まった辺りからソロ活動を急速に活発化していきます。

 

1993年の「Life Is Good In My Neighborhood」に始まり、1999年の「In My Head」(2004年にリイシュー及びトラック追加され、「Too Many Voices」と改題)、2003年「Subtlety & Passion」、2008年「The Bossa Project」、2012年「Living Proof」と、シカゴの純粋な新作よりもハイペースでリリースしているほか、ライブ盤の「Leap Of Faith」やリミックス盤の「Robert Lamm Songs : JVE Remixes」も発売されています。もっとも、「Life Is Good In My Neighborhood」以外は全て日本盤は出ていませんが…。

 

 

 

 

 

 

 

ソロ作品がそれなりにまとまったからでしょうか。今回新たにリリースされたのはソロ活動の集大成的なベスト盤です。

 

 

 

パッケージに貼付されたラベルに「シカゴ結成メンバー 初のベスト盤」と書かれている辺りは、彼なりのプライドなのかも知れません。

 

 

 

 

 

 

本作には、収録曲についてロバート本人の短いコメントが記載されたライナーノートが用意されています。もっとも、本人は発売後に本作を通して聴いてみて「思ったより歌詞が聴き取りにくい。歌詞カードを付けておけば良かった」と思ったそうですが…。

更新: 2017/06/23
総評

これまでの作品を十分に聴き込んだリスナー向けの選曲

それでは、本作の収録曲をリストアップしておきましょう。

 

 

01. 4 Bells
02. Angels Fly (JVE Remix) 
03. Sing To Me Lady
04. Does Anybody Really Know What Time It Is? (JVE Remix) 
05. Sleeping In The Middle Of The Bed
06. Send Rain
07. Everyday, It’s Always Something
08. Out Of The Blue
09. Sunny
10. Samba In Your Life (JVE Remix) 
11. You’re My Sunshine Everyday (JVE Remix) 
12. Standing At Your Door (Beckley-Lamm-Wilson)
13. It’s A Groove, This Life (JVE Remix) 
14. You Never Know The Story
15. Will People Ever Change?

 

 

ソロ作品のベスト盤といいながらも、シカゴの初期の名曲である「Does Anybody Really Know Waht Time It Is?」(邦題:一体現実を把握している者はいるだろうか?)が含まれていますが、これは先述の「Robert Lamm Songs : JVE Remixes」に収録された、ジョン・ヴァン・エプスのリミックスバージョンであり、原曲の面影は殆どありません。元音源自体も、シカゴの初期版では無く「The Nashville Sessions」で再録されたものを使っているようです。

 

 

 

また、「Standing At Your Door」もソロとしてリリースされたバージョンがありながら、アメリカのジェリー・ベックリー、ビーチ・ボーイズの故カール・ウイルソンとのユニットであったベックリー・ラム・ウイルソンのバージョンが収録されています

 

 

 

それ以外のソロ楽曲ですが、ソロ1作目の「Skinny Boy」、2作目の「Life Is Good In My Neighborhood」からの楽曲は全く収録されておらず、それ以降の作品からほぼ均等にセレクトされているのですが、これらも未発表のリミックスバージョンがいくつか含まれています。9曲目の「Sunny」は未発表曲で、「The Bossa Project」に間に合わず収録されなかった曲とのことです。

 

最近の作品は一般向けのリリースは無く、通販などの特定販路で取り扱うのみであったため、シングルヒットなどは一切無く、ただ自身の思い入れが強い楽曲を並べたという作品のようです。そのためか、今の彼が新作を作ったらこんな音になるのではないかと感じられ、新鮮な印象を受けます。もっとも、シカゴや以前の作品でしか彼を知らないリスナーが聴いたら、今までの印象とかけ離れていて面食らうのではないかと感じられるものとも感じられるというのは否定できません。彼の最近の作品を十分に聴き込んでいれば全く不自然さはないのですが…。

 

どちらかというと「シカゴのメンバーであるロバート・ラム」ではなく、「一人のアーティストとしてのロバート・ラム」に興味がわいた方に聴いていただきたい作品です。

  • 購入金額

    1,847円

  • 購入日

    2017年06月23日

  • 購入場所

    ローソンHMV

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