長らく使い続けているプリメインアンプ、SANSUI AU-α707DRですが、ここ最近セレクタースイッチやボリュームの接触不良がひどくなってしまいました。
ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、厳密にはスイッチの接触不良というよりはリレーの不良だそうで、これを修理するためにはリレーの交換か分解洗浄が必要となります。ボリュームは当然それ単体の不具合ですね。
最初は自分で出来ないか調べていたのですが、技術的な難易度はさておきリレーをいじれるようにするまでの分解が極めて面倒ということがわかり、素直に業者に出した方が無難かという結論に辿り着いています。そうなると下手をすれば1カ月ほどアンプが無いということになってしまい、その間単にスピーカーで音楽を聴けないというだけでは無く、音源加工やレコードからの取込なども出来ないなど、結構な不便を強いられることになります。
そこで修理に出している間に使えそうな、そこそこの水準のアンプを中古で調達しようと考えました。こちらの修理が終わった後は、別のシステムで使っているKENWOOD L-01Aのオーバーホールも考えなければいけませんので、そちらの代機にも使える水準であってほしいという希望もあります。
そこでHARD OFFやオーディオ店を数店回ってみて、比較的手ごろな価格で最も面白そうだと思ったのが、このPIONEER A-90Dでした。1987年発売で当時22万円という製品です。
1988年頃から一斉に登場してくる、各社のD/Aコンバーター内蔵型プリメインアンプ(当時はこれを「デジタルアンプ」と呼称していました)を、ALIPNE/LUXMAN LV-109(1986年発売)と共に先取りした製品であり、いわゆる798アンプの名作A-717をベースに、価格なりの強化を施したものとなっているそうです。
当時のPIONEERでは同じ90シリーズとして、セパレート型のC-90/M-90(マイナーチェンジモデルC-90a/M-90aも存在しています)も用意していて、近い価格帯でD/Aコンバーター内蔵プリメインアンプと、ビデオセレクター内蔵セパレートアンプを選択出来るようになっていました。
この20万円前後という価格帯は、各社の一般的な製品ラインナップの最上位モデルがひしめき合っていた所なのですが、当時は前述のLV-109やSANSUI AU-α907i/AU-α907i MOS VINTAGEがヒット作として知られていて、A-90Dは少々地味な存在だったようです。
結局後にD/Aコンバーターの撤去と多少のコストダウンを図っただけのA-838という下位製品が、実に10万円近くも安く発売されてしまったため、A-90Dはより存在感を失ってしまったようです。
パイオニアらしい高域と、ヴォーカルの艶
本来は普段レコード音源からハイレゾファイルを作成している、PCと接続されたシステムで使うためのものですが、まずは動作確認と音質チェックを兼ねて、KENWOOD L-01Aのポジションで代わりに使ってみました。
接続されるスピーカーは、JBL 4302とSANSUI SP-100iとなります。
まず、相性という意味ではSP-100iの方に分がありました。4302では音場は広がるものの少々密度が薄い傾向が見られました。
ロック系の楽曲でハイハットがソフトタッチで小綺麗にまとまる辺りは、いかにもかつてのパイオニアトーンです。ただ、今までもう少し安い価格帯のパイオニア製品で感じていた力感の乏しさや細身という印象は無く、やや低域不足であるはずの4302からも豊かなベースが鳴り響きます。
どちらのスピーカーでも共通しているのは比較的シンプルな編成のヴォーカルメインの楽曲で、ヴォーカルに独特のなまめかしさというか艶が感じられることです。「Shape Of My Heart / Sting」などは絶品ですし、普段特に好きというほどに思わない「Smooth Operator / SADE」なども、特にSP-100iでは絶品です。もっとも、本来渋みがあるはずの「Is This Love / Whitesnake」におけるDavid Coverdaleのヴォーカルですら優しげでソフトに感じる部分もあり、ちょっと雰囲気を作ってしまう傾向はあるのかも知れません。
意外なのはアコースティック系の楽曲でヴォーカルや弦楽器の良さが引き立つ一方で、電子楽器で組み立てられたような空間の表現もなかなか魅力的なのです。「Human / Human League」のような、いかにも80年代の少々安っぽい電子楽器の音も鮮やかで聴いていて楽しい音になります。ただ、「Now / Chicago」のホーンセクションが少々奥に引っ込んで聞こえるなど、私が重視するChicagoの楽曲ではさほど良さは感じられません。勿論それでも高水準といえる音ではあるのですが…。
レコードから起こした24bit/88.2KHzの「Dangerous / David Garrett」はヴァイオリンの質感もバックのスケール感も良好なのですが、192KbpsのMP3で聴く「Viva La Vida / David Garrett」のヴァイオリンはまるで電子ヴァイオリンであるかのような音色となってしまうなど、ソースのクオリティーに関してはかなりシビアな一面も覗かせます。
当時20万円オーバーという価格は伊達ではなく、予想以上に高水準な音を聴かせてくれました。もっとも、この当時自分がこの価格帯のアンプを買う予算を持っていたとすれば、かつての記憶と照らし合わせた限りではSANSUI AU-α907iの方を選んでいたと思います。A-90Dの音質も決して実力的に劣っているというほどでは無いのですが、やはり鮮烈さや豪快さはAU-α907iの方が勝っていたと思いますので…。
当時地味な存在であっただけに、中古価格が安くなりやすいということが最大のメリットといえるでしょう。この辺りの価格でここまで聴かせてくれるアンプはなかなか買えないと思いますからね。
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購入金額
43,200円
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購入日
2017年04月29日
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購入場所
HARD OFF
harmankardonさん
2017/04/30
その分,個性がないので,注目されにくいですが.
SANSUIのアンプより値下がりしていますが,それでも高いですね.
jive9821さん
2017/04/30
中~高域の辺りは典型的な旧パイオニアの音ですが、低域は意外なほど量も質も良好で、さすがに20万オーバーらしい貫禄はあるなと感じます。
実はヤフオク辺りで探せばもう少しは安く買えると思うのですが、今回は6カ月保証ということで多少の高さは目をつぶりました。今使っているAU-α707DRの同型を買おうとしても、これ以上の値段になってしまいますし…。