レビューメディア「ジグソー」

フュージョンと言うよりはブラコン。知る人ぞ知る異色グループ。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。フュージョンというジャンルがあります。元々はジャズに電子楽器を導入する過程でロックやポップスの要素を入れたものですが、その後ブラックミュージックやEDMも要素も入れて発展しました。海外においてはその後より洗練されたジャズの要素が強いスムーズジャズに発展しましたが、日本においては明解なロックとポップスのニュアンスが濃い形で独特の「フュージョン」が定着しました。そんな中、ベテランプレイヤーのグループでありながら、日本式のフュージョンとは異なる道を歩んだため今では忘れられたようになっているグループがあります。そんなグループの最も「ジャパニーズ・フュージョン」とは異なるテイストの作品をご紹介します。

ChickenShack(チキンシャック)。ソウルやR&Bを好むメンツが集う六本木のsoul bar「TEMPS」の常連、土岐英史(サックス)、山岸潤史(ギター)、続木徹(キーボード)を中心として組まれたバンド。1980年代後半のフュージョンブームが下火になる中出てきたバンドで、そこそこヴォーカル入りの曲もあるのだがインストの曲も多く、「フュージョンバンド」のカテゴリーに入れられてしまったのが彼等にとってはむしろ不幸だったかも知れない。

ソウル系のテイストが強いキーボーディスト続木や現在はブルースギタリストとして本場アメリカで活動している山岸、ブラジル系のミュージシャンとの交流も多い土岐が奏でる音楽は、どことなくイロクでシャレオツな雰囲気。フュージョンと言うより、ソウルやブラコンといった方がしっくりくるような曲が多い。ヴォーカリストはメンバーにはおらずゲスト扱いであり、曲によって異なる。そのため彼等の曲の印象は「歌」よりもバックの彼等のプレイ。それが彼等が「フュージョン系」に分類される要因だったのかも知れないけれど。

ChickenShackのメンバーは、フロントの3人は不動だがリズム隊は何度か変わっている。その中でも3rdとこの4thアルバムは両方が黒人で、「ならでは」の粘りとキレのあるリズムが聴くことができる(ベースBobby Watson、ドラムスMarvin Baker)。特に本作はほとんどの曲でリードヴォーカルパートがある曲で編まれており、コーラス入りも含めると「声」が入らないのは9曲中1曲だけという「ヴォーカルアルバム」でもある。

シンベとハンドクラップがタイトなリズムを刻み、山岸のパーカッシヴなミュートギターが彩る「Love Is Here To Stay」は男性ヴォーカリストJohn Blackがリードを取る夜の雰囲気のブラコン曲。中間部のソプラノサックスソロが尊い。

続くハチロクの「Just Go On」は泣きの?バラード。女性ヴォーカリストPatrice "Chocolate" Banks(たぶんGraham Central StationにいたPatryce Banksだと思う)が♪Until I am free, I must go on♪と歌う。終盤の土岐のサックスと山岸のクリーンな音のギターの掛け合いソロにPatriceがフェイクで絡んでいくところは日本人離れした感性。

続木の筆になる「Rise」は最も硬質のダンスチューン。「抜き」を多用したMarvinのリズムパターンにシンベとスラップベースを織り交ぜたBobbyのプレイが打ち込みのパーカッションと絡み、タイトかつうねりがあるイロクな薫り。Tony Boydの粘るヴォーカルが煌びやかなキーボードプレイに彩られる。全体通しては比較的マシン優勢なのだが、山岸のワウが効いてる弾きまくりソロが始まると...www

全体としてはフュージョンアルバム、というのにとても抵抗がある感じの良質のブラコンアルバム。クロスオーバーからフュージョンへの切り替わり時代には日本でも結構ヴォーカル/コーラスフィーチャリンググループもいて人気を得ていたので彼等の登場がもう少し早いか、もしくはソウル系楽曲がヒットチャートに賑わすようになった20世紀末まで活動していれば、もっと有名になっていたと思われる実力派グループ。ちょうどジャンルのピークの狭間に落ちてしまった感じ。その実は体育会系インストグループの一部に見られたテクニックひけらかし曲よりも、もっと高い次元の良質な音楽を提供するグループなのだけれども。

相変わらず色気のある装丁だw
相変わらず色気のある装丁だw
 

相変わらずのちょっとエロいジャケットとともに「オトナの色気」を感じる作品です。

【収録曲】
1. Body Slam
2. Love Is Here To Stay
3. Just Go On
4. Is It Love
5. 2・1/2 Nights
6. Rise
7. Are We Dreamin'
8. Impulse Love
9. Forever

「ChickenShack IV (Full Album)」

更新: 2020/07/18
必聴度

ブラコン側に振り切っているので、迷いはない

それまでの路線とはかなり違うけれど。

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1988年頃

  • 購入場所

16人がこのレビューをCOOLしました!

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