芋づる式洲崎綾 Part4」。Webラジオのキャラクターの面白さと天使の歌声のギャップ萌えですっかりファンになった洲崎綾(あやちゃん/ぺっちゃん/あやっぺ)関連。またいろいろ買いこんだ彼女の直接参加した作品や楽曲、ラジオCDなどから、さらにイベントグッズなどを芋づる式にご紹介するシリーズレビュー第4弾。
前回のシリーズレビューでご紹介したハードSFマンガを描く漫画家弐瓶勉の「シドニアの騎士」
を原作としたアニメ。CGアニメを得意とするポリゴン・ピクチュアズの設立30周年記念作品として位置づけられ、第1期「シドニアの騎士」が2014年の4月から6月まで、第2期の「シドニアの騎士 第九惑星戦役」が翌年の4~6月に深夜帯のTVアニメとして製作された。
原作をなぞってはいるが、1期12話完結となるようにエピソードの順序が変えられたり、一部のエピソードが部分的に切り離されていたりしているし、(現在のところ)完結した原作漫画の途中で終わっているため、第2期のラストのあたりは完全にオリジナルストーリーとなっている。
このアニメの配役は、主人公の谷風長道(ながて)を逢坂良太、そのライバル?で後に天才科学者落合の精神に乗っ取られる岐神海苔夫(くなとのりお)に櫻井孝宏、その海苔夫を「海苔夫様」とよび献身的に仕える岐神海蘊(もずく)を佐倉綾音、かつて敵である奇居子(ガウナ)をシドニア船内に招き入れる原因をつくったため今は記憶を消去されて船長に仕える落合のクローンに子安武人。軍関係では、最初は長道と同じ訓練生で徐々に長通に惹かれ女体化していく中子(男子でも女子でもない第三の性)科戸瀬イザナ(しなとせいざな)を豊崎愛生、兄の敵を取ってくれた長道に猛烈アタックをかける肉食系女子緑川纈(ゆはた)を金元寿子、クローンであり同容姿の姉妹が二十二名もいる「仄(ほのか)シリーズ」全員を喜多村英梨、長道のじいさん=斎藤ヒロキを小山力也(←実際は祖父ではなくて撃墜王ヒロキを延命させるために造られた新たな器=クローンが長道なのだが)、冷静沈着で大を救うためなら小を切り捨てる判断もする怜悧な女艦長=小林を大原さやか、その小林とともに最古参の船員であり小林やヒロキと「裏切り者」落合らの関係や、長道の出自の秘密を識るヒ山ララァを新井里美が演じた。
この物語ではあやちゃんは多数のキャラを演じている。ただそれはたとえば佐倉綾音が後半に出番が集中している海蘊の役の傍ら、管制官や女性アナウンサー、看護師役を「兼任」していたというようなのとは少し意味が違う。
あやちゃんが演じたのは、星白閑(ほしじろしずか)、紅天蛾(べにすずめ)、エナ星白、白羽衣つむぎ(しらういつむぎ)の4役。これらは全てつながりがある。しかもすべて物語のキーとなるキャラクター。
もともと長道の同僚で成績優秀な訓練生が星白閑だった。隔離された場所で育った長道を気遣える彼女は徐々に長道との接点が多くなっていく。そんななか長道や海苔夫と一緒に出撃した戦闘で閑の乗る人型戦闘機=衛人(もりと)の推進機関が暴走し、帰還限界線を越えてしまう。海苔夫達がなすすべもなかった奇居子との戦闘をたった一人で片付け、その後閑を追ってきた長道と数日間二人っきりで宇宙を漂流することになる。
自分の事を顧みず救助に来てくれた長道に対して閑は淡い恋心を抱くが、単独で奇居子にトドメをさして一躍英雄になった長道を妬んだ海苔夫が次の戦闘時に仕掛けた奸計に長道が落ちそうになったとき、身を挺して長道を庇い奇居子に捕食され殉死する。
それでも人類安住の地を探して旅と戦闘を続けなければならない長道達の前に次に現れた奇居子は、その取り込んだものを何でも形態模倣できる能力で閑の乗っていた衛人を模写していた。3体のその赤い機体のうち1体がとても強力で、討伐隊3班のうち1班を全滅に追いやる。その個体はシドニア側の衛人を撃破するたびに、在りし日の閑に似た声で「ホシジロ、イッキゲキハ...」とつぶやいた。
シドニア側はこの時はそれを何とか退けたが、その個体はその後何度もシドニアを襲う「因縁の」敵となる。当初は単に識別番号「ガ490(奇居子には発見順に通し番号がつけられる)」と呼ばれていたその奇居子はのちに「紅天蛾」と呼ばれるようになる。
この戦闘のときにその3体の赤い奇居子のうち1体(ガ491)がぶら下げていた人型のものの回収命令があり、長道は戦闘中にそれを本体から切り離して回収したが、これは奇居子がその表皮である胞衣(エナ)で再現した星白閑(エナ星白)だった。本体から切り離された胞衣は単体では人間に徒なすことはなく、本体生存中に切り離された胞衣は、本体が泡状分解(泡状に分解して完全に消滅すること)しても単独で生き続ける。
それはのちに外生研(外宇宙生命体研究所)に運ばれ研究対象となる。知能は高くなさそうだが、その名前を呼んだり壁面に名前を書いたりするなど長道に対して親近感を示していた。しかし、ある日忽然とその姿を消す。
白羽衣つむぎは、落合の精神に乗っ取られた岐神海苔夫が、そのエナ星白の卵子に人工精子を受精させる事で生ませた奇居子と人類の両要素を持つ融合個体と呼ばれる兵器。
大きさとしては衛人とほぼ同じ大きさで、特段の装備なく宇宙空間に出られ、ヘイグス粒子(エネルギー源)を貯蔵して攻撃や高速移動することができ、その能力は汎用型の衛人を大きく上回る。人語を解し、自らもしゃべるが、綿密なコミュニケーションをとるときは胸のあたりからコミュニケーション用胞手(小つむぎ)を伸ばしてしゃべる。
あやちゃんは、落ち着いた優秀な訓練生であり、徐々に長道を好ましく思うようになった閑と、ほとんど戦闘に関することしかしゃべらないが狂気をはらんだ(そしてラストは長道を独占したいという女の執念も含んだ)声音の紅天蛾、生まれたばかりのような無垢な感じのエナ星白、キリっとした戦闘時の白羽衣つむぎと、ちょっと子供っぽい声音の小つむぎを演じ分けていた。あやちゃんの声の幅としてはデレマスの美波や1000ちゃんの仲間プリマなどもあるので、今回用いた声音よりバリエーションは広いのだが、すべて閑由来ともいえるこれらのキャラを芯となる声音を大きく変えずに全く違うキャラとして演じていたのは見事だった。
血統?図。紅天蛾とつむぎは伯母と姪というか、ガ489~491を同一と考えると母娘
特に第2期ラストあたりのつむぎと紅天蛾の戦いのシーンでの叫びは、声をつぶしてしまったほどの全力演技で、強力な敵である異生物と戦う苛烈な戦闘であるということ以外に、見方を変えれば一人の男(長道)をめぐる女の戦いであり、血縁?的にはある意味母と娘ともいえる関係の二人の闘い(娘が母を克えていく)でもあるという一面もある難しい複合構造を、良く表現していた。
紅天蛾が最後に下半身を吹き飛ばされながらも長道の機体に抱きつき胞衣を侵入させ、コクピット内で閑の形態をとって長道の首を締めつつキスをしようとする(体内に侵入しようとする)凄まじさは、成就することなく終わった閑の切ない想いが凝った断ち切りがたき思念を伝え、そしてそれが紅天蛾の本体と切り離されたときに、哀しげに「ぃや..」とつぶやくさまは、在りし日の閑が長道を助けようとして宇宙空間に放り出され、奇居子の触手に貫かれる寸前に漏らした言葉/その時の表情とオーバーラップして、とても切ない。
ストーリーとしては既説の原作本のレビューの方を読んでもらった方が詳しいのだが、原作が完結しているのに対して、アニメの方は途中で終わっている。第1期「シドニアの騎士」が、長道が地下から出てきて閑や海苔夫と出逢い⇒衛人に乗ることになり⇒100年ぶりに奇居子が出現し⇒戦闘時に閑と漂流し⇒戦闘で閑を喪い⇒エナ星白を回収し⇒紅天蛾と戦い⇒シドニアに匹敵する巨大な連結型奇居子と戦うさなかに紅天蛾を泡状分解させ⇒他の衛人操縦士の活躍で連結型奇居子を排除というところまで。第2期「シドニアの騎士 第九惑星戦役」が、落合の精神による海苔夫の乗っ取り&海蘊の殺害と別人格による復活⇒つむぎの戦闘デビュー⇒植民可能なレム恒星系への到着⇒つむぎとイザナ、纈による長道の奪い合い?⇒⇒レム恒星系第7惑星に向かった植民船との通信途絶⇒第9惑星での奇居子との戦闘⇒復活した(泡状分解が不完全であった?)紅天蛾との戦闘⇒第9惑星で追い詰められていたイザナの救助⇒つむぎと紅天蛾の一騎打ち⇒逆転され危機に陥ったつむぎを長道が助ける⇒衛人の内部に紅天蛾の胞衣に侵入され、閑に形態変化した胞衣に首を絞められながらも、イザナの働きで侵入経路を遮断し、今度こそ紅天蛾の泡状分解⇒他の衛人たちの働きで残余の奇居子を完全排除し、第9惑星を制圧する、というところまで。
原作としてはこのあと第7惑星の衛星に本隊を置く奇居子と、第2の融合個体を製作しそれをあらたな依代として乗り移った落合の精神との三つ巴の最終決戦、それを通した長道とつむぎとの関係の変化、イザナや纈のその後などが語られるのであるが、第2期ではそこまで届かなかったため、紅天蛾を斃した長道が叙勲され、その勲章を亡きじいさん(ヒロキ)と暮らした地下の部屋に飾るところで終わる形で、長道の成長物語の側面を強調したストーリーになっている。
第2期の終わりの方では落合が最後の依代とする第2の融合個体の姿もチラ見せされているし、長道とつむぎのその後の親展は語られないし、艦内に収容された長道の乗機のコクピットに侵入した紅天蛾由来のエナ星白はどうなってしまうのかもわからない。何より一つ橋頭堡は確保したものの、同じ星系に奇居子と対峙したままであるという状態で、いわゆる「引き」は十分な状態なのだが、今のところ第3期制作開始の話はまだ興っていない。制作元のポリゴン・ピクチュアズは他の作品の制作に移っていて現時点では多忙だし、原作が完結したので原作出版元の講談社としてもさらなる販売促進効果がさほどには大きくはないだろうからやや難しいかもしれないが、ぜひ感動のラストを絵で見てみたいし、その時のあやちゃんの演技も待ち望まれるのだが(あとひーさまがラストの纈をどう表現するのかw)。
☆はその期待値込みで。
なおAmazonは第1期「シドニアの騎士」6巻セットに繋いでいるれど、購入単位としては第1期、第2期一括購入で、しかも初回生産限定版に含まれる全封入特典と第1期+第2期収納BOX(全巻収納BOX)を含む完全セットで入手。
フルデジタルのCGメインの絵なのだけれど、セルアニメっぽい加工をしてあり、CG苦手な人でもとっつきやすい。なによりこの壮大な物語に命を吹き込んだ声優陣の熱演と、泡状分解やつむぎの飛翔シーンなど動画ならではの表現が素晴らしく、「観ておくべきアニメ」だと思います。
【各巻内容】全巻デジパック/スリーブケース仕様、見開きブックレット付き
●シドニアの騎士 一(初回生産限定版)
第1話「初陣」/第2話「星空」収録
<映像特典>新アングル版特別映像+ノンクレジットOP+ノンクレジットED
<封入特典>弐瓶勉描き下ろしコミック「シドニアの騎士 前日譚 第四次奇居子防衛線」
<音声特典>オーディオコメンタリー:監督静野孔文、逢坂良太(谷風長道役)、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 二(初回生産限定版)
第3話「栄光」/第4話「選択」収録
<映像特典>新アングル版特別映像
<封入特典>映像特典Blu-ray Disc(製作発表会/先行上映会イベント模様&音楽制作メイキング/アニメーション制作メイキング前篇)
<音声特典>オーディオコメンタリー:音響監督岩浪美和、音響効果小山恭正、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 三(初回生産限定版)
第5話「漂流」/第6話「敬礼」収録
<映像特典>新アングル版特別映像
<封入特典>書き下ろしドラマCD「司令補・勢威一郎の苦悩」
<音声特典>オーディオコメンタリー:シリーズ構成村井さだゆき、エグゼクティブプロデューサー守屋秀樹、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 四(初回生産限定版)
第7話「覚悟」/第8話「不死」収録
<映像特典>新アングル版特別映像
<封入特典>継衛 左腕USBメモリー
<音声特典>オーディオコメンタリー:洲崎綾(星白閑役)、豊崎愛生(科戸瀬イザナ役)、櫻井孝宏(岐神海苔夫役)、金元寿子(緑川纈役)、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 五(初回生産限定版)
第9話「眼差」/第10話「決意」収録
<映像特典>新アングル版特別映像、アニメーション制作メイキング後篇
<封入特典>WebラジオCD「綾と綾音の秘密の光合成」出張版
<音声特典>オーディオコメンタリー:プロダクションデザイナー田中直哉、造形監督片塰満則、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 六(初回生産限定版)
第11話「衝突」/第12話「帰艦」収録
<映像特典>ディレクターズカット版第12話
<封入特典>シドニア百景ポートレート
<音声特典>オーディオコメンタリー:原作者弐瓶勉 副監督瀬下寛之、吉田尚記(司会)
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 一(初回生産限定版)
第1話「葛藤」/第2話「能力」収録
<映像特典>新アングル版特別映像+ノンクレジットOP+ノンクレジットED
<封入特典>弐瓶便描き下ろしコミックス「つむぎ、『ブラム!』にハマる。の巻」、
シドニア百景ポートレート4種
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 二(初回生産限定版)
第3話「進路」/第4話「激昂」収録
<映像特典>新アングル版特別映像、「シドニアの騎士」プレミアムイベントダイジェスト映像
<封入特典>シドニア百景ポートレートバインダー、シドニア百景ポートレート4種
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 三(初回生産限定版)
第5話「願望」/第6話「起動」収録
<映像特典>新アングル版特別映像
<封入特典>「シドニアの騎士」特製USB式充電器、シドニア百景ポートレート4種
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 四(初回生産限定版)
第7話「鳴動」/第8話「再会」収録
<映像特典>新アングル版特別映像、「BLAME!端末遺構都市」TV未公開Ver.
<封入特典>「BLAME!端末遺構都市」別冊アニメ設定資料集、シドニア百景ポートレート4種
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 五(初回生産限定版)
第9話「任務」/第10話「侵入」収録
<映像特典>新アングル版特別映像
<封入特典>WEBラジオCD「綾と彩音の秘密の光合成」出版版、シドニア百景ポートレート4種
●シドニアの騎士 第九惑星戦役 六(初回生産限定版)
第11話「邂逅」/第12話「決戦」収録
<映像特典>ディレクターズカット版第12話
<封入特典>つむぎのなにか、シドニア百景ポートレート4種
「シドニアの騎士」公式サイト
「シドニアの騎士 Knights of Sidonia PV Part 2」
「シドニアの騎士 第九惑星戦役 予告映像 Knights of Sidonia Battle for Planet Nine PV」
ほしじろぉ....(泣いてゐる
長道に仄かな好意を寄せ、恋の予感がありながらも、奇居子(ガウナ)との戦闘によってそれを絶たれた閑。奇居子(ガウナ)に取り込まれた「かつて閑だったもの」は叶わなかった情念(=紅天蛾)と、外面だけコピーの殻(=エナ星白)、人格形成から「リセットしやり直した」兵器(=つむぎ)に分化する。いまのままだと星白は浮かばれない。ラスト前のシーンの台詞、何としてもあやちゃんが演じているのを聴きたい-「もう二度と会えないと思っていました」
3期、ぜひ。
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購入金額
61,000円
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購入日
2016年06月25日
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購入場所
ヤフオク!
れいんさん
2016/12/06
cybercatさん
2016/12/06
そうですね。自分はとくに第1期のカット割りが好きですね。angelaのOP楽曲とのシンクロ具合が素晴らしくて。
シーンとしては第2期オープニングラストの、つむぎと長道の乗った継護が掌位(互いの手をつかんで合体すること)して、つむぎはピンク、継護は青の軌跡を残しながら宇宙空間を飛翔していく画も捨てがたいですが。
kaerkiさん
2016/12/06
一人の男(長道)をめぐる女の戦いであり・・・・
↑
こういう男になってみたかったw
cybercatさん
2016/12/06
薄っぺらく単に宇宙人相手の戦闘ロボットものとしてみても構図や絵が素晴らしかったですし、長道の成長物語として見ても楽しめるんですが、閑関連キャラの心理にまで注目して見ると、特に。
言い方を変えれば、恋愛まで発展せず「綺麗な想い出」として残り、助けられつつも護れなかったという自責の念も含めて長道の心に深く刻まれた閑への想いを、その直系ともいうべき紅天蛾(しかも邪悪な存在)を斃すことで断ち切り、つむぎが大好きな「谷風さん」の心をを救いたいがための闘いですから。
だから、最後に第9惑星で長道をイザナの救出に向かわせ、つむぎと紅天蛾が二人きりになった時、つむぎが相手に決戦前に語りかける言葉=「よかった...あなたの息の根を止めるのは私の役目だと思っていました」にしびれますね。
あやちゃんのあの静かで、でも力がこもった言霊を聴いた時にはゾクゾク来ました。
hatahataさん
2016/12/06
なるほど〜 男を巡る女の戦い。そこまで深く考えてませんでした。演技分けとか。
為になりました。
cybercatさん
2016/12/06
あやちゃんはこれの演技で第9回声優アワードの賞(新人女優賞)獲ったンですよね。