本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
「芋づる式洲崎綾Part3」。Webラジオのキャラクターの面白さと天使の歌声のギャップ萌えで?手を広げはじめた洲崎綾(あやっぺ)関連。今まで2回彼女の関わった楽曲、アニメやラジオCDといったものから、その原作や関連楽曲、さらにイベントグッズと芋づる式に関連アイテムをまとめてご紹介してきたが今回3回目のまとめ紹介。
ラジオ
でその設定や世界観に注目した「シドニアの騎士」。アニメの方も揃いつつあるが、一括入手で揃えられた原作コミックを先にご紹介。
マンガ「シドニアの騎士」。漫画家弐瓶勉によって執筆され、2009年から2015年にかけて「月刊アフタヌーン」に連載された。SF作品を多く手掛ける弐瓶の2016年5月時点の最新長編。
弐瓶のタッチはあまり似た作家がおらず、特に白黒原稿ではどことなく日本画を思い出させる感じの墨塗りが多いすっきりしたラインで、立体感がやや薄い淡泊で端正な感じを受ける絵を描く。それでいてそこで使われるメカや異生物の描写は存在感があるという、独特の筆致。
そして語られる物語もユニーク。温度感があるようなないようなドライな肌触りの物語で、cybercat的には、大友克洋のような日本人離れした感性に、士郎正宗のようなしっかりとした作品世界観、楳図かずおのようなシュールな展開が絡み合ったような作品であるような印象を受ける(弐瓶が上記作家から影響を受けたかどうかは不明)。
デビュー時は現在よりもさらに個性的なタッチの作風だったらしく、そのころからのコアなファンからは大衆的になったといわれることもあるらしいが、異星人との種の存亡を賭けた戦いとそこで描かれる恋愛模様のミックスがとても印象的だった作品が本作。一般的にこういう骨組みの物語の場合、異星人と戦う兵士が主人公で、同僚の兵士や通信士などにヒロインが設定されていることが多く、二人が横恋慕されたり、離れ離れになったりするような障害を乗り越えて結ばれる...というのが王道プロット。この作品も皮をはいで肉をそげ落とし、さらに骨まで削って神経軸索だけにしてしまうと確かにその通りなのだが...そこについている肉や皮があまりに異質。それゆえ、唯一無二感が強い物語となっている。
物語は主人公の谷風長道(たにかぜながて)が、食糧を求めて死んだ祖父から禁じられていた階段をのぼり「地上」に出てきたところから始まる。米泥棒としてつかまりながら、その身元引受人が現れたので釈放される。その身元引受人は小林という女性で、長道に宇宙を見せ、今いるところが宇宙船シドニアの内部であることを教える。
対話不能の異生物奇居子(ガウナ)によって太陽系が破壊されて千年後の未来。人類は移住できる星系を探して複数の播種船と呼ばれる巨大な船で宇宙を放浪している。シドニアもその一つだが、他船との連絡も途絶えて久しい。
小林はその艦長で、長道を対奇居子の兵器「衛人(もりと)」の操縦士に推薦する。地下で祖父からシミュレーターによって操縦法を教えられていた長道には、現行機より旧式で操縦が自動化されていない分、パイロットの能力が求められる「一七式衛人」のチューンアップ版「継衛(つぐもり)」が与えられる。
その時代の人類は食糧難を切り抜けるために光合成をできるように改造されていたが、長道にはその能力がなく頻繁な食事を必要とすること、さらに社会と分断されて生きてきたため言動もズレていることなどから、差別やいじめにあうが、訓練の中で衛人操縦士としての頭角を現していく。
同期の訓練生には成績優秀な岐神海苔夫(くなとのりお)や星白閑(ほしじろしずか)がいたが、彼らが長道が地上に出た際に最初に出会った人間のうちの二人だった、というのもまた運命か。海苔夫は現行衛人一八式の生産を手掛ける岐神開発の御曹司で腕も確か。正規操縦士になったあかつきにはぜひ自分が操縦したいと思っていた、伝説の撃墜王が搭乗したといわれる継衛を長道に「横取り」された形になり穏やかならぬ気持ちを抱く。
そうして100年間出現していない奇居子に対する戦闘訓練を続けていた彼らだが、資源採掘任務に就いていた際についに奇居子に遭遇する。奇居子は長道を昏倒させ、訓練生のひとりを捕食、その訓練生の姿を模した形状をとり、攻撃を加えてきた。交戦のさなか長道にとどめを刺そうと奇居子が迫った時に心肺停止状態だった長道が蘇生、人間離れした操縦で奇居子の攻撃をかわす。この時はシドニアからの攻撃で奇居子を遠ざけたが、奇居子は胞衣(エナ)と呼ばれる外殻で覆われている本体を露出させ、そこにカビザシと呼ばれる特殊な物質で作った兵器で穴を開けないと斃せないためこれは一時しのぎにすぎなかった。
このあとの奇居子との戦闘でカビザシの回収を命じられた長道らだが、推進機関が暴走して帰還限界を超えてしまった閑を追って長道が探索、無事発見はするものの単機では帰還できないほどシドニアからは離れてしまった。このため漂流しながら救助を待つことになるが、この一週間ほどの漂流で今まで訓練以外での接点があまりなかった二人は互いに意識するようになる。
ふたりは無事に救助されるが、ホっとするまもなくまた戦闘に駆り出される。この戦闘のさなか海苔夫は、自分の憧れだった継衛を横取りした長道に策略を仕掛ける。しかしその巻き添えを喰って閑が奇居子に捕食されてしまう。その戦闘で負傷しながらも救助された長道だが、戦闘時の記憶を失っていた。訓練生仲間の中子、科戸瀬(しなとせ)イザナに介抱されたりして徐々に体力を取り戻していった長道だが、ニュースで流れた対奇居子戦闘で命を落とした人の名簿の中に閑の名を見つけてすべてを思い出す。
自分を陥れた海苔夫に対する怒りよりも、奇居子に対して人類を護ることが優先だと私情を抑える長道だが、次に現れた奇居子は閑が搭乗していた一八式衛人702号機を模したものだった。ほぼ同じ姿で3体現れた奇居子のうち1体が異様に強力で次々倒される衛人たち。衛人が倒されたときに通信装置から響いた声は...「ホシジロ、イッキゲキハ..」という在りし日の閑に似た不気味な声だった。シドニア側は何とか2体を撃破し、強力な1体(のちに紅天蛾(べにすずめ)と命名)を遠ざけ、撃破した1体が引きずるようにしていたヒト型のものを回収した。
そのヒト型のものは奇居子の胞衣でできていたが、なんと閑の形をしていた。その「エナ星白」は研究所に運ばれ、さまざまな調査がされるが、長道に対面させると片言で名前をしゃべったり、触手を伸ばして触ろうとしたりした。奇居子に捕食されたヒトの胞衣による再現はその感情まで再現しているのか??
一方、次期衛人の生産をライバル会社に取られ、パイロットとしても長道に越えられ、焦る海苔夫は禁断の落合の研究室の扉を開ける。落合とは以前シドニアの最上位船員の一人で奇居子研究の第一人者であったが、奇居子と人間の融合個体を作成したのちその制御を失い、シドニア内部に奇居子の侵入を許し多数の船員を死なせ、貴重なカビザシを船外廃棄するなどシドニアに対して害となる行為をした人物。さらに落合はメインコンピューターから当時の重要情報を自分の補助脳に写し、元を消去するというような行為に出たため捕らえられた。その補助脳は生体の落合自身が解錠キーとなっていたため、記憶矯正・人格調整された脳が落合自身のクローンに移植されそのクローンは艦長の小林の手元に置かれているような要注意人物。その「裏切り者」落合の閉ざされた部屋に侵入した海苔夫は落合(の人格)に乗っ取られてしまう。
在りし日の閑生き写しの姿で、長道に対して親愛の情を示す「エナ星白」に逢うため研究所に足しげく通う長道を心配して、イザナや兄の仇を取ってくれた長道に対して猛烈アプローチをする肉食系女子、緑川纈(ゆはた)は忠告するが、そんな時「エナ星白」が長道の前から姿を消す。小林艦長からもあれは対奇居子の研究対象だから心を残さないようにと諭される。
奇居子は手を変え品を変えシドニアを攻撃してくる。巨大な奇居子が現れ、絶体絶命と思われたときにシドニア付近に急に奇居子反応が出現、そしてその個体が敵奇居子を攻撃しはじめた。その個体は海苔夫を「お父様」と呼び、「白羽衣(しらうい)つむぎ」と名乗った。その攻撃力や身体能力は衛人をしのぐつむぎだが精神年齢的には幼い子供で、内輪もめに見えた奇居子同士の戦闘でつむぎをいち早く味方と看破し、助勢した長道を慕うようになる。
つむぎは融合個体と呼ばれる存在で、エナ星白の卵子と人工の人間の精子で造られたもの。人々はそんなつむぎを信用できないが、戦いの中でつむぎは自分の胞衣を広げて奇居子からの粒子砲の弾道を曲げてシドニアを護る。体組織の9割を失いながらもシドニアを護ったつむぎは徐々に人々に受け入れられていく。
つむぎの本体は巨体で衛人とほぼ同じ大きさではあるが、コミュニケーション用胞手(触手)を伸ばして閑にそっくりの声で言葉をしゃべり、好奇心豊かで素直で礼儀正しい性格。異形ではあるものの、そのかわいらしい性格がわかるとイザナや纈とも親交するようになり、長道が気になる中子イザナ、もともと長道に猛烈アタックをかけている纈とともに長道の関心を惹きたいライバル?となり、4人?は一緒に暮らし始めた。
偵察任務に出たイザナが消息を絶ったのを救助に行った長道とつむぎは、さらに強力になった紅天蛾と対峙し、つむぎは磔にされエネルギーを吸い取られたり、長道は閑の形態を模した胞衣にコクピットに侵入されたりもしたが、からくもこれを撃退する。このような戦いを通して長道とつむぎの絆は深くなっていった。
つむぎが成功したことにより、第二の融合個体であるかなたが造られた。かなたにはなんでも成形できる奇居子の胞衣の特性を利用して、かつての落合の研究では未完に終わった武器=重力子放射線射出装置が埋め込まれている。しかし自我が安定しなかったかなたは、シドニアに取りついた奇居子を友達と思い接触しようと暴走したため、頭を打ち抜かれて封印される。
その後シドニアは別の方法で重力子放射線射出装置を完成させ、それとともに制御困難なかなたを解体処分にする事にしたが、その処置のさなか海苔夫からかなたに乗り移った落合の人格はシドニアに離反する。
一方奇居子の母船=大衆合船(だいしゅがふせん)も迫り、シドニアは落合=かなたを含めた二方面の最終決戦を強いられようとしていた...
果たしてシドニアに、人類に、長道やつむぎたちに安らぎは訪れるのだろうか...?
設定的にはハードSFでありながら、「愛」が語られる。遠い未来の義足・義手や人体機械化なんか当然、果てはクローンを使った脳移植やアンドロイド化による性別転換も普通にアリの世界において、他人(ひと)を愛することを描く。敵対する異種族由来の物質でできた「ヒト」に対する愛、クローン姉妹間の愛、そして人類愛...さらに一人の男に想いを寄せる女子と中子と異生物...?設定や語られる内容の硬さや深さに対して、物語の中に飛び込んでしまえば学園ラブコメ的柔らかな肌触りすらある。...比較的初期にヒロインが異生物に喰われて死んでしまい、主人公の心に深い傷跡を残すへヴィなストーリーにもかかわらず。
弐瓶の画の表現型が独特なため、そしてコミック装丁が原色を強調したものであったり血のような赤と白黒3色であるなどハードであるため、とっつきはしづらいけれど、一度「入って」しまえば15巻一気読みを強いられるほど引き込まれ、そして「惹き」込まれる作品。特にラスト15巻目はヤヴァイ。
これは女子にも読んでほしい、宇宙(そら)を駆ける壮大な「ラヴ」ストーリー。
キミは涙なくして読みきることができるだろうか?
...そうそう13巻特装版と15巻限定版にはあやっぺも含むTVシリーズの声優が演じるドラマCDが付くのだけれど、その内容は...すべて..ギャグですw(つむぎの耳かき、サイコー!!ww
【内容】
シドニアの騎士1~15巻(完結)
13巻ドラマCD付き特装版
15巻ドラマCD・操縦士用濾過保存容器付属の限定版
13巻ドラマCD内容
1. 社長・岐神海苔夫の初営業
2. 仄姉妹の日常
3. 新型艦水城の幽霊
15巻ドラマCD内容
1. 白羽衣つむぎの願い
2. 女子光合成室の人生設計
3. 男子光合成室のサバイバル
特典:耳かきシリーズ 星白/イザナ/つむぎ/纈/海蘊/長道/勢威 再循環音声
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購入金額
5,500円
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購入日
2015年12月12日
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購入場所
ヤフオク!
hatahataさん
2016/05/31
テレビ三期以降が期待されます。
つむぎがいいですねぇ… 見た目恥部ですが(笑)
つむぎのおかげで異性体萌えという新たなジャンルができたとか、出来なかったとか…
cybercatさん
2016/05/31
コミックは15巻は大感動です。
ぜひ!