Genesis。1969年から活動している老舗プログレバンド。ただこの長い歴史の中には何度かの音楽的(メンバー的にも)変遷を受けている。特に1975年以前とそれ以後だと別のバントか、というくらい大きくその音楽性が異なる。演劇的・シンフォニカルな初期に比べて、1975年以降はビートが効いてポップな一面を見せるようになる。これはバンドの顔であるヴォーカリストであり、音楽的方向性を決めていた人物がこの前後で変更となるため。1975年以前はPeter Gabrielがその任に当たっていたが、脱退後はPhil Collinsがその任に当たる。特に1980年代はかなりポップとなり、もはやプログレバンドとは言えないとまで言われた。本作はその時代を過ぎてややプログレ側に戻ってきた1991年の作。
それまでの“Genesis”や“Invisible Touch”に比べるとより内省的で、詞のメッセージ性が高い。それでいながらそれまでの近作で自分たちのものにしたわかりやすさのツボは押さえており、とっつきは良いのに深い、という作品になっている。
そんなアルバム、“We Can't Dance”
からの3枚目のシングル。かなり歌詞のインパクトのある「No Son of Mine」と切々としていながら淡々としているという欧州的昏さがスパイスの「I Can't Dance」に続くものだが、やや地味な曲と思っていたので、続く4枚目のシングル=ごり押しのハイスピードチューン「Jesus He Knows Me」よりも売れているとは意外だった。
その表題曲「Hold on My Heart」。暗っ。中間部は一抹の明るさを漂わせるが、あとは淡々としたリズムマシン調のリズムパターンに乗せて、ギターのミュートカッティングとふわっとしたキーボードの和音が延々と続くなか、Philが切々と歌う♪Hold on My Heart♪(耐えよ、私のハート)。
スロー目のシャッフル「Way of the World」は一転、激し目の曲なのだが扱うテーマはさほどに明るくない。♪there's weak and there's strong/it's just way of the world, and that' how it's meant to be♪ただその重さの中でも明るさが見えるのは救いだ。
つづく2曲はライヴ。アルバム“Genesis”の名曲「Home by the Sea」は熱狂を持って迎えられ、表裏がひっくり返る例の引っかけリズムによって始まり、Philのシャウトの熱さとサビ後のふわっと包み込まれるようなキーボードのコード進行が印象的。その後のリズムチェンジからクラシカルに発展していくあたりは、このバンドがプログレバンドなんだな、というのを想い出させる。
一度ポップ側に振り切った彼等がもう一度内面を見つめ直したメッセージ性の高い作品“We Can't Dance”。その中でも本作の表題曲はその派手さではなく、歌詞の内容で迫ってくる。そんな歌詞の力、言霊の力を感じる作品です。
【収録曲】
1. Hold on My Heart
2. Way of the World
3. Home by the Sea (live)
4. Your Own Special Way (live)
「Hold on My Heart」
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購入金額
1,400円
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購入日
1992年頃
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購入場所
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