アルバムが売れすぎてシングルカットしようにも「弾」がなくなることがある。Michael Jacksonの“Thriller”
等は有名だが、もう少しニッチな?ジャンルのアーティストでもそういう場合がある。
Genesisというバンド、一番「売れた」時期
はポップロックグループの印象があるかもしれないが、本来プログレバンド。元々Peter Gabriel中心のバンドで、難解なプログレが中心だったが、彼が脱退して後、Phil Collinsが主導権を握るようになってからはポップな路線に舵を切り、大成功を収める。特に3rdアルバムから参加していたSteve Hackettが抜けたあとはそれが顕著で、アメリカでのセールスの頂点を極めた“Invisible Touch”で完成する。
ただポップと言っても根底にはプログレ的テイストがあり、本国(イギリス)のファンはそれを忘れているわけではなかった。Philが最後に参加した“We Can't Dance”
は前作までに比べて内省的でプログレに回帰している。暗く、長く、深い。この作品はイギリスで最大の売り上げを上げるまでになる。
シングルカットとしては「No Son Of Mine」、「I Can't Dance」、「Hold On My Heart」、「Jesus He Knows Me」に続いて5枚目が企画された。ただイギリスとアメリカでは曲のチョイスが違ったようだ。イギリス向けには足元で死んだ子を嘆く母や路で寝る路上生活者を歌った重い「Tell Me Why」だったが、アメリカ&日本向けにはバラードの本作「Never A Time」とやや“Invisible Touch”路線。
その「Never A Time」。「ザPhilバラード」でまさにアメリカ向け?シャウトしながらもえげつなくならないPhilの歌声が心地よい。♪Can't you see what's going on/It's so sad, that a love so strong, has gone♪という歌詞が本作がGenesisとしての活動のラストになるPhilの本心と捉えるのはうがち過ぎか。
「Tonight, Tonight, Tonight/Invisible Touch」は前アルバム“Invisible Touch”から「Tonight, Tonight, Tonight」と「Invisible Touch」がライヴ音源で収められる...って同じアルバムからはもはやネタ切れ?wこれは2巻?同時発売のライヴ、“The Way We Walk”のうち短めの曲があつめられた第1巻“The Shorts”のラスト2曲メドレーが収められる。やっぱり聴き比べると前作“Invisible Touch”はキャッチー。それは「Invisible Touch」のようにポップな曲でなく、「Tonight, Tonight, Tonight」のように抽象的で暗い曲も音造りのエレドラなどが沈む暗さではなく、淡々としている。
このアメリカという巨大市場の求めるモノと英国の旧来のファンが求めるモノの差が明晰になったからか、Philは本作を最後にGenesisを離れる。その後何回か再合流の話もあったが、健康問題などで実現はしていない。彼等にとっての残り時間からするともうチャンスはないのかな、なんて思ったり。でもアルバムから最後にひねり出したシングルカット曲がこれほど質を保っていたことにより彼等の才能が分かる。何とかもう一度、彼等の作品が聴きたいものです。
【収録曲】
1. Never A Time
2. Tonight, Tonight, Tonight/Invisible Touch - Live
「Never A Time」
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購入金額
1,200円
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購入日
1993年頃
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購入場所
ナンチャンさん
2015/10/19
cybercatさん
2015/10/19
上手いのはPhilの方だと思いますが。