ビット・トレード・ワンから発売されているポータブルヘッドホンアンプです。これは電子工作キットなので、組み立てには半田ごてやニッパー、ラジオペンチ、プラスドライバーといった一般的な電子工作で使う工具が必要です。
別途、半田と電池、音楽プレイヤーが必要です。電池は単4を4本使います。オーディオケーブルが1本、及び筐体が1セット付属します。
姉妹品に完成品として販売されるAD00032と、スピーカーアンプのAD00026があります。
【2017/6/23追記】受動素子の換装について追記しました。
説明書通りに作れば完成
説明書通りに、プリント基板に半田付けしていけば完成します。気をつけることはLEDの足を折り曲げて実装することと、電池ボックスが筐体と干渉しないようにすることくらいです(電解コンデンサの極性とかは基本として)。部品番号が基板にシルク印刷されていますので間違えないでしょう。トランジスタの向きもシルク印刷の向きでわかります。
また、筐体がセットに付属しますので、電子工作でありがちな「筐体に困る」ということもありません。
電力駆動
一般的なオーディオアンプは電圧駆動です。オームの法則によれば、抵抗が一定であれば、電流は電圧に比例し、電力は電圧の2乗に比例するはずです。イヤホンのスペック表には公称インピーダンスが書かれていますが、実際のインピーダンスは周波数で上下します。このため、高音や低音が足りなくなったりします。イヤホンやスピーカーを動かしているのは電力であって、電圧ではないからです。
AD00031は電流帰還アンプで、電力駆動できるように設計されています。ビット・トレード・ワンのサイトにCAD図が掲載されていますが、これを元にBSch3Vで回路図を起こしてみたところで私には理解できませんでした。
このアンプには2箇所、抵抗がソケット実装になっている箇所があります。これは使用するイヤホンの公称インピーダンスに合わせて最適のものを選びます。高すぎる抵抗を選ぶと音が薄っぺらくなることを確認しています。
解像度感があるが僅かに熱雑音が聞こえる
音質としては、解像度感がある印象です。普段からこれで聞いていた時、久々にcMoyで聞くと、まったりした音だと感じました。同じOPA2134を使っていたのにです。そのくらい、情報量が多いです。尤も、この音が好みに合うかどうかは別の話です。
なおこのアンプの特性上、熱雑音が大きめです。高分解能モードでACカップリングにしたオシロスコープのリードアウトでは、およそ100μVrmsを観測しました。測定限界(オシロの自己ノイズフロア)より少なくとも3dB程度上です。カナル型イヤホンを使用、周りが静かな環境、入力信号なしの条件が揃うとホワイトノイズが聞こえることがありますが、屋外の幹線道路沿いなどでは気にならなくなりますし、ましてや音楽を再生中にホワイトノイズが聞こえるわけではありません。
【2017/6/23追記】受動素子をオーディオ用のものにしてみるとより音質が良くなります。詳細は後述します。
【2017/6/23追記】オーディオにカーボン抵抗なんて、わけがわからないよ
このキットに付属する抵抗は、1W品の酸金のほかは、コスト削減のためにカーボン抵抗になっています。出来る限り販売価格を下げるために、こういうところで原価を下げているのです(なお、完成品として販売されているAD00032では「1%誤差」と紹介されていることから金属皮膜抵抗が使われていると思われます)。しかしオーディオアンプの抵抗器にわざわざ(100本108円で売っているような)カーボン抵抗を使って設計する人がどこにいるでしょうか(蛇足ですが1000本540円(つまり1本あたり54銭!)のパックを見かけたことがあります)。カーボン抵抗より金皮抵抗のほうが音が良いということは電子工作(特にオーディオ分野)をする人であれば知っているでしょう。
これは電子工作キットなので、付属部品が気に入らなければ別に部品を調達すればいいのです。そこでもう1セット買ってきて、オーディオ用受動素子で実装してみました。本当はカーボン抵抗を取り外してつけ直せるならそれでいいのですが、取り外し時の不手際で銅箔がもげてしまったので、修理部品の調達を兼ねてもう1セット買いました。
今回調達したのはオーディオ用抵抗として有名なタクマン電子のREY25です。また、コンデンサも「ケミコンで迷ったらこれ」と決めている東信工業のUTSJ Jovial(50V品)を使うことにしました。
聴き比べてみると、無信号時のホワイトノイズは相変わらずですが、キットの付属品を実装したもの(修理した)よりもREYとJovialのほうが音の分離が良くなっています。なお、オペアンプは双方ともOPA2134を使用しました。
入出力直結
オーディオアンプでは普通、直流成分をカットするためにカップリングコンデンサ(真空管アンプではトランス)を使いますが、それでは低域もカットされてしまいます(0.1μFでカップリングした場合は顕著で、10μFにすると改善しますが)。このアンプは入出力ともに直結なので低域がカットされることはありません。電解コンデンサが6個使われていますが、うち2つは電源デカップリング用で、残り4つはトランジスタのベースとコレクタ(コレクタとエミッタは短絡されています)の間に接続されています。
オペアンプを交換できる
この手の電子工作キットにはよくあることですが、オペアンプを交換できます(但し動作保証外です)。デフォルトではNJM4580DDが付属しています。±2.5V程度で駆動する石であれば使用できるようです。このアンプでもオペアンプの交換で聴感上の違いは出てくるようです。
私は現在OPA2134にして使っています。音が良いのはもちろん無線妨害を受けにくいからです。LME49860もそれ自体は良い石ですが地下鉄などで無線ノイズが入りやすく使いづらいです。
短辺シス型
入出力端子の配置は短辺シス型です。これは私が勝手にそう呼んでいるだけの分類で、シスとはシス・トランス異性体のシスです。一般的なポタアンは短辺シス型ですが、たまに短辺トランス型の機種もあるようです。短辺シス型のポタアンはポケットに入ります。後はケーブル次第ですが、シス型はL字型よりもストレートケーブルのほうが向いているようです。
電池交換しづらい
よく言われている難点として、「電池交換がしづらい」というものがあります。電池交換にいちいちプラスドライバーが必要なのは面倒です。
そこで、前面2つのネジをローレットネジに置き換えることをおすすめします。私も同様の変更をしましたが、私が入手出来たものはつまみが金属製ではなく樹脂製のものです。実際に電池切れになった時に出先でも電池を交換できました(但しネジを落とさないように注意が必要です)。
なお、完成品として販売されているAD00032ではこの点が改良されています。
手頃で高音質
ポタアンの中には福沢諭吉数人~10人以上の高価なものもある中で、工作キットとはいえ諭吉1人分です。音質も良く、しかも手頃です。
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購入金額
10,265円
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購入日
2016年01月頃
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購入場所
シリコンハウス共立
北のラブリエさん
2016/06/25
不器用でなければほしいところ・・・
MihailJPさん
2016/06/25