中西圭三。20世紀から活動するヴォーカリストで、特に前世紀においてはJ-POP系ではかなりファンキィ系の立ち位置(今世紀に入ってからは「ぱわわぷたいそう」のヴォーカルなどクロさやマニア度を薄めポップな方向に行っている)。ただ、活動時期が重なる久保田利伸ほどディープではなくかなりライト。クロさはフレーバー...という曲が多い。
何と言っても彼が一番知られているのは、のちにEXILEがリバイバルヒットさせたZOOの「Choo Choo TRAIN」の作者としてか。もしくは南原清隆+天野ひろゆき+ビビアン・スーからなるブラックビスケッツに提供した「Timing」の作者としてか。いずれも微ファンクのJ-POPで打ち込み中心の派手なダンス曲だった。彼のオリジナルアルバムもこういった雰囲気のものもあるのだが、この2曲の間の1995年に斬新に生ギターをポップスに融合させた作品をリリースしている。
それが本作「graffiti」。手書きで写真に書き込みがあるアゲアゲなにジャケ写だが、中身的には刺激的な音作りを少し控え、アコギの鮮烈な調べが響く作品となっている。
「SO BAD」。ファンキィィィィ!&ポップ!!この頃日本のファンキィポップの第一人者久保田利伸のポップさが抜けて来た時期でちょうどその穴にスポッと入ったような曲(中西と久保田は方向性がかぶる部分はあるが違うところは違うので「この曲は」だが)。名手佐橋佳幸の生ギターのカッティングとJerry Hey+Gary Grantのノリノリブラス隊がイイグルーヴ。アレンジが佐橋、ホーンアレンジが佐橋+Jerryというのが効いている感じ。もう20年前の曲なのに全然古くないな!
「Why Goodbye」は女性R&Bシンガーとして活躍したWendy Motenとの全編英詞のデュエット曲。ゴージャスなストリングスが彩るソウル~ブラコン系の曲。このアルバムでは豪華にリズム隊(打ち込み含む)をほぼ毎曲換えているが、さすがにこういうバラード系は人の緩いグルーヴが最高だ(ドラムスMike Baird、ベースJimmy Johnson)。
このアルバムは佐橋ががっつりと入っており、中西との共同プロデュース、あるいは共同アレンジの曲がほとんどで、いくつかの例外でもプレイヤーとして関わっているが、数少ない「佐橋レス」の曲「J」。ただ驚くほど肌触りが違和感がない。ピアノ+ゴスペル調コーラス+オルガンとかなりクロっぼく始まるが、曲に入ればソウルフレーバーのJ-POP。ホーンセクションも「ジェリー・ヘイ部隊」ではなく日本人組なのだがツボを押さえているし、なにより本場のゴスペルコーラスも含む日米混声の30人以上のコーラス隊がゴージャスだ。
この作品がリリースされたときは、それまでのヒット曲=ZOOの「Choo Choo TRAIN」や自身の「Woman」といった打ち込み系のエレクトロサウンドのイメージが強かった中西。そこであえてアコースティック系の佐橋を迎えて創った作品。当時は「..変わった??..」という感じで実はしっくりこなかった。でも今聴くと実に普遍的。20世紀末の刺激的な音を纏わなかったおかげで今でも古くない。そんな「時が経って」良さが浮かび出てくる貯蔵酒のような作品です。
【収録曲】
1. SO BAD
2. はじまりの虹
3. LIBERTY
4. 焦がれて
5. Why Goodbye
6. ’Round Midnight
7. Violet in your lonely heart
8. J
9. 新しい僕になろう
10. BLUEWATER
11. 月の上に腰かけて
「SO BAD」ライヴだけれどフルコーラスCDアレンジ
-
購入金額
3,000円
-
購入日
1995年頃
-
購入場所
くろぱんださん
2016/03/10
当時はお子様だったので、cybercat さんのように深く考えて聞いていなかったですが、
あらためて聞いてみようとおもいます。
今でもChoo Choo TRAINは脳内で中西さんの声に変換されちゃいます。
cybercatさん
2016/03/10
実に、実に上手いシンガーなのですが。
中西版「Choo Choo TRAIN」は声の強弱の「抜く」ところのタイミングが絶妙なグルーヴですよねー...