松原正樹。日本を代表するスタジオギタリスト。とくに20世紀のアイドル曲やニューミュージックは彼のソロなしでは語れないと言われるほど出ずっぱりで、山口百恵の「さよならの向こう側」、キャンディーズ「微笑がえし」、松田聖子「渚のバルコニー」、中森明菜の「北ウイング」といったアイドル系、松任谷由実の「リフレインが叫んでる」、松原みき「真夜中のドア」、松山千春「長い夜」、古内東子の「DISTANCE」といったニューミュージック系などなど1980~1990年代の売れた曲のキラリと光るギタープレイは彼だったことが多い。
そんな彼がリリースしたメジャーデビューアルバム(通算では3rd)。弾きまくる曲は弾き倒し、抑える曲はツボを押さえたプレイで楽曲を盛り上げる、そんな変幻自在の彼のプレイが楽しめる。
なんと言っても「SNIPER」。このヘヴィなディストーションギターのバッキング(印象としてはタンタタタンタタ~なんだけれど実は左右chでリズムが微妙に違う複雑なリズム)で始まり、重い山木秀夫のドラムスを斉藤ノヴの煌びやかなパーカッションが盛り上げ、Bメロで裏裏に入る印象的な美久月千晴のベースライン、シンプルにピアノ主体で攻める佐藤準といったバックが曲を構築する中、松原のギターが盛り上げる盛り上げる。1'28''からのブリッジでは狙撃に至る緊張感がひしひしと伝わり、1'46''の「その」瞬間!スルドイ銃声のようなギターが鳴り響き...状況が目に浮かぶような完璧なギタープレイ...
「BUSTED」は次作“PAINTED WOMAN”につながるような、まさに「松原音色」とでも言いたいなんとも言えない美しく歪んだ(←ヘンな表現だな)音色が美しいミドルテンポの曲。ソロは弾きすぎず間を生かしたもので、表現と音色のダイナミックレンジの広いプレイはCarltonにも通じるところがある。佐藤のオルガンが夜!だなー。
ラストの「SOMEDAY」は歌もの。Jesse BarishとAmyによる男女掛け合いの曲だが、AORテイストのシャッフルでサワヤカ~って感じ。松原のプレイはクリアな音でのハネるカッティングと残響を強めに効かせた音でのオブリ中心。ギタリストのアルバムなのにギターソロなし。でもこういった抑えたプレイの中に光る「松原節」の存在感たるや!これぞ職人!!
インスト4曲、歌あり4曲だけれど、どれも曲としての完成度が高い。楽器プレイヤーのソロアルバムって、特にスタジオミュージシャンで発散の?場所を持たない人の場合、濃く、くどくなりがちなんだけれど、それがない。曲の完成度が非常に高く、でもそこにリスナーに響く「何か」を確実にねじ込んでくる。それには「長さ」が必要なわけではなくて...
そんな日本の宝とも言うべきプレイヤーが旅立った。享年62(満61歳)。このところ数年ライヴアルバムばかりのリリースだった彼が満を持して放ったオリジナルアルバム(“現実と幻覚”)からまだあまり経っておらず、まだまだこれからいろんな技を聴かせて欲しかった...名前よりもそのプレイを遺した名手でした。松原サン、I miss you..
【収録曲】
1. CAN’T LET GO
2. I REMEMBER
3. YOU BABE
4. GIVE OUR LOVE
5. YOU KNOW WHAT I LIKE
6. SNIPER
7. BUSTED
8. SOMEDAY
「SNIPER」
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購入金額
3,200円
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購入日
1985年頃
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購入場所
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