レビューメディア「ジグソー」

V-Low帯を使った新たなサービス、しかしガッカリ

テレビのデジタル化で空いた電波帯V-Lowを利用する新しいサービス「i-dio」が、2016年3月1日から、東京・大阪・福岡圏で試験放送として始まりました。

 

サービス会社「VIP」が1月から5万人を対象とする無料モニターを募集(PDF)しており、それに応募したところ、2月9日にWi-Fiチューナーが届きました。

更新: 2016/03/02
開封の儀

モニターだから仕方なし?

届いた箱は、茶色で文字はまったくなし。そんなそっけない箱を開けると、白い袋にWi-Fiチューナー本体が入っています。ほかに入っていたのは、簡単な説明文書1枚とマニュアル。

 

充電はUSB経由で行うのですが、そのためのケーブルは同梱されていません。まあこの時代、マイクロUSBケーブルなど掃いて捨てるほどあるので、実際上は困りませんが、不親切の感はまぬかれません。

 

届いた時点でできるのは、充電ぐらい。その充電も、6時間もかかるというのです。しかも利用時間は6時間という仕様。V-Low受信とスマホとの接続のためWi-FiDirectと、ダブルで送受信するからかもしれませんが、いつでもどこでも気軽に使うというわけにはいかないでしょう。

更新: 2016/03/03
使用感

マルチメディア放送って、こんなもの?

Wi-Fiチューナーは、上部左にアンテナ、右側にmicroUSB(メス)、左にイヤホンジャック、前面に電源ボタンとLEDインジケーターがある簡素なものです。デザイン性や「モノ」感、所有する&持ち歩いての満足感などとは無縁の、まるで業務用のようです。

 

裏のラベルとみると、日本アンテナが製造したようで、Made in Taiwanとなっていました。

こぢんまりとしてはいますが、中にリチウム電池が入っているため、軽いというわけでもありません。かつ、放送波を受信することになるため、利用時はカバンの中などに入れておくのではなく、外に出す必要があります。

 

3月1日から放送が始まったので、受信してみましょう。

 

まずはスマホにアプリを入れる必要があります。AndroidとiOS用が公開されています。インストールし、まずチューナー側の電源を入れ、アプリを起動すると、AndroidではWi-Fiダイレクトでの接続を求められます。それを許可すると、初回は利用地域などを選択する必要があり、それが終わると選局を始めます。

 

公式サイトによると、関東では「TS ONE」「Amanekチャンネル」「i-dio Selection」「i-dio Creators」の4チャンネルが利用可能です。

 

ただし。

 

 

この選局に、異様に時間がかかります。そしていざ選局されたと思ったら、「コンテンツ受信中」と、何をダウンロードするのかも分からない画面が出ます。どうやら「マルチメディア」部分を落としているようなのですが、放送波の極めて狭い帯域を使っているのでしょうか、ダウンロードにもかなり待たされます。ちょうど、地上波デジタルのデータ放送のような形です。

 

音楽を聞いてみましたが、なるほど音質は高めです。「デジタル地上波放送最高音質」(AAC形式/320kbpsで放送し、2017年にはHDS「96kHz」音源にも対応予定)とあるのはダテではありません。

 

しかし別のチャンネルに移ろうとするたびに選局とダウンロードで待たされるのでは、放送内容を聞くまでの障害がありすぎます。

 

Amanekチャンネルなどで流れる音声が、人工合成であることも何だかショボーンです。FM東京が絡んでいるのだから、アナウンサーを使うことぐらいは簡単だったはず。何もかも省力化が目立ちすぎ、萎えますね。

 

チャンネルを切り替えつつしばらく試聴していると、フル充電かつスタミナモードのXperiaZ5 premiumのバッテリーが数分間で5ポイントも下がってしまいました。通信を頻繁にしていることと、アプリ側の電源管理がまずいのでしょう。

更新: 2016/03/18
総評

所詮、官僚と業界が描いたモチ

V-Low「マルチメディア」放送と名乗っていることから分かる通り、これは一種の官製サービスにほかなりません。「デジタル化は必須」と大山鳴動して、空いたVHF帯の下の方を正体不明の「マルチメディア」に利用するという絵柄ですが、さて、その上の方の帯域V-Highを利用した「NOTTV」は先日、今年6月末に事業を終了すると発表しています。

 

空いた電波帯域に対する許認可という既得権を手放したくない総務省と、昔ながらの「波取り」、つまりチャンネル確保に動いたFM東京との思惑が単に合致しただけでしょう。言ってみれば、サプライサイドの論理だけであり、ユーザがどういうサービスを求めているのか、どんなサービスが必要なのかというデマンドサイドの視点が全くないのは、没落しつつある日本の産業界全般に言えることなのかもしれません。

 

一方で、スマホの普及と回線速度のアップ、通信料の定額制の普及で、スマホ単体で動画やストリーミングサービスを利用することも珍しくなくなりました。そんな状況下で、オンデマンド性がなく、これだけ操作性が悪いi-dioサービスが、無料モデルでどうやってビジネスをたてていくのでしょうか。有料ならなおさら、NOTTV同様にユーザがつかないでしょう。

 

3月1日からは第2弾モニター3万人を募集していますが、現状を見る限り、ユーザに大歓迎されるサービスとはなっていないと思います。

 

<以下、2016年3月18日追記>

3月4日付でVer. 1.0.1にアップデートされたので、アプリを更新してみました。しかし、接続に時間がかかる点、謎の「ダウンロード」、選局に手間取る点は何ら変わっていませんでした。

 

そもそも、Google Play上で、アップデート内容すら案内がありません。まあ、コンマ1だけのアップデートなので、バグフィクスか何かでしょう。レビューでこれほど手厳しい内容が多数上がっているのですから、本気でモニターしてもらいたいのであれば早急に改善すべきなのですが、それはいつになるのでしょうかねぇ。

  • 購入金額

    0円

  • 購入日

    2016年02月09日

  • 購入場所

    モニター応募

26人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • CAT-2さん

    2016/03/02

    さすがに今の状態だと、手間の掛かるラジオなので、普及する感じは無いですね。この段階で、どういった番組にするか考えながらやってる感じなのが何とも。
  • Quadrigaさん

    2016/03/03

    CAT-2さん

    コメントありがとうございます。ページも拝見しました。
    曲のスキップができない不満など、同じような感想をお持ちと感じました。
    テレビですら、リアルタイムで放送を見るという生活習慣が崩れつつあるのに、
    そこでこのサービスですから、全国展開はしても、普及はしないでしょうねぇ。
  • Ikkeさん

    2016/03/03

    モバHOとか、NOTTVとか、新規で機器が必要な物は、よほど魅力的なコンテンツが出てくるか、地デジ移行みたいに力業でやらないと厳しいでしょうね。
    そういや、デジタルラジオって、どうしたっけか。
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