レビューメディア「ジグソー」

幻の。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。高い評価を受けるバンドやアーティストも「まだ開花していない時期」というものはあるものです。その人達が売れてから原点に遡る熱心なファンにそういった初期の作品は「幻の名盤」扱いされたりします。「プログレ」というニッチな分野ではあるものの、高い評価を受けるバンドの今も昔も「幻の」作品をご紹介します。

KENSO。県立相模原高校の略称「県相」をその名の起源とするアマチュアプログレバンド。...といっても実は国内外から高い評価を受けており、ヨーロッパの一部ではカルト的人気を博している。既に9枚のオリジナルアルバムを出している(それもインディーズレーベルばかりではない)。でもアマチュアバンド(そういうのが語弊があるならばセミプロバンド、か)。メンバーの多くはプロミュージシャンで、かつてのメンバーには日本の誇るスーパードラマー村石雅行やウルトラマンや仮面ライダーの音楽担当を何度もしている佐橋俊彦がいるし、現メンバーもスターダストレビューに在籍していた光田健一、以前ご紹介した野獣王国

から力哉が抜けた後釜を務める小森啓資などプロミュージシャンによって構成されている。しかし、リーダーである清水義央は現役の歯科医であり、KENSOの活動では「儲かる」事はなく、如何に支出を抑えるか、のレベルと言うことらしいのでそういう意味ではそれによって生計を立てているワケではないので、「アマチュア」バンド。

でもその立場を貫くことによって、「やりたいことをやれる」権利も手にしているので、それはそれ。

そんな彼らが評価されたのは2ndアルバム、“KENSOⅡ”。この作品の質の高さが評価されたのと、当時それまでは専用テープが必要だったマルチトラックレコーディングに市販のコンパクトカセットを用いた4トラックMTRが出てきたことで熱かったアマチュアマルチトラックレコーディングブームにも乗っかって彼等がメジャーデビューしたのが1985年。そのメジャーデビュー盤はシンプルに“KENSO”と名付けられたが、後に“KENSO(Ⅲ)”と呼ばれるようになる。

それはそれに先立つこと5年前に、彼等の真の1stアルバムとして本作“KENSO”があったから。彼等の名を世に知らしめた名曲「空に光る」や「氷島」を擁する“KENSOⅡ”の影に隠れているし、清水も本作の出来に関しては満足しておらず、「金を使って買ってもらって、『なんだぁ』と思われたら悪いな(ライナーノーツより)」ということでなかなか日の目を見なかった。しかし、初出時のアナログレコード400枚の限定プレスが外国で法外な値が付くのを聞いて再発をする事にしたというモノ。

でもこのアルバムは、後の方向性の定まったKENSOにはないような音楽劇風の曲?等も含む、いろんな事に挑戦したカオスでサイケな魅力に溢れている。

「ふりおろされた刃」。後のKENSOではなくなってしまったヴォーカル曲。不思議なのだが、プログレバンドのヴォーカリストって激ウマなのがいないのはなぜなのかな?これも歌はなー..という感じ。曲の方はベースラインのリフがカッコイイ。そしてプログレ的展開とキメはあるが、メロディラインは意外にポップ。

そして名曲「海」。日本的な「懐かしい」感じのメロディとキメキメのフレーズ、ドラマチックな展開とコロコロ変わる曲想。演奏は粗く、後のアレンジと比べると洗練されてはいないが、強いエネルギーを感じる。“Ⅱ”で絶賛された彼等の原形は既にここにある、という感じ。この曲は今でも演奏される彼等のスタンダード曲。

7曲目以降は初出のアナログ盤にはなかったボーナストラック。のちに彼らは全スタジオアルバム、全ライヴアルバムに、今まで外に出したことのない演奏メンバー違いのテイクなど蔵出し音源まで含めた14枚組の集大成“COMPLETE BOX”

を出すが、いかな“『COMPLETE』BOX”でも網羅していない超レアトラック。7曲目は1983年にSilver Elephantで行われたライヴでの「海」(本作の4曲目と同じ)。録音悪くて低い方はまるで録れていないが、ライヴですら遙かに本作録音当時(1980年)より腕が上がっているのが分かる。

一転して8~12は1976~1979年録音のこの1stより前の蔵出し音源。なにせ“Recorded at L.M.C. "Bushitsu" Studio, with 2 tracks cassette deck”なんでw。部室でステレオカセットデッキで録った..というアングラモノ。エレキギターのヴァイオリン奏法がリリカルな「四旬節の旅」は途中から加わるベースのパターンとキーボードのシーケンス風フレーズが拍を崩すいい造り。ライナーノーツにはこの1stアルバムリリースを支援してくれた輸入レコード店のマスターには酷評された曲とあるがアイデアは結構イイかな、と。でもここらの曲はこのあと再録されることもなく、黒歴s..
当時音楽やっている人の7割5分(自社調査結果)はロン毛だったなー
当時音楽やっている人の7割5分(自社調査結果)はロン毛だったなー
今でも「偉大なるアマチュアプログレバンド」として活動を続けるKENSOの原点がここにある。今から35年前の若者の情熱の迸りが聴ける、「幻の」作品です。

【収録曲】
1. 日本の麦唄
2. 陰影の笛
3. ふりおろされた刃
4. 海
5. かごめ
6. ブーちゃんの宙がえり
7. 海<Live Version> <BONUS TRACK>
8. 飛翔の時まで<BONUS TRACK>
9. 四旬節の旅<BONUS TRACK>
10. かすかなる始動<BONUS TRACK>
11. はるかなる時<BONUS TRACK>
12. 旅路<BONUS TRACK>

「海」

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1995年頃

  • 購入場所

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