KENSO。海外でも、いやむしろ海外で高い評価を得ているバンド。現役歯科医師であるギタリスト、清水義央を中心としてほぼ40年続いており、彼が高校時代に組んだバンド「県相」=県立相模原高等学校をルーツとするプログレバンドだ。自主制作盤である「KENSO」を1980年に出したあと、名作「KENSO Ⅱ」を経て、1985年キング・レコード(ネクサスレーベル)より「KENSO(1stと区別するため、俗にKENSO「Ⅲ」と呼ばれる)」でメジャーデビュー、それ以降散発的にアルバムを発表し、2013年現在最新オリジナルアルバムは「うつろいゆくもの」。とはいえ、清水は歯科医師を続けており、そちらが収入の主であるため(いやむしろ音楽活動では儲ける事がない、と言っていた)、彼等はアマチュア/セミプロバンドに分類される(清水以外のメンバーはプロミュージシャン)。そんな彼らがどういうきっかけだか(“だいたいKENSOのボックスセットがリリースされること自体、ふつうありえないことなのですから。”と清水自身も自身のプログで語っている)、今までの全オリジナルアルバムに何枚かのライヴ盤、さらに蔵出し音源を加えて「COMPLETE BOX」を出したのが本作。最新のデジタル・リマスタリングが施された高音質CD(SHM-CD、JVC HRカッティング)で装丁も紙ジャケ仕様。さらに何度か再発されている彼等の作品のすべてのヴァージョンのライナーノーツを全掲載と言う凝りようで、計8作のオリジナルアルバムとライヴ作品の中から3作(うち1作2枚組)、アルバム未収録・未発表ヴァージョンのCDとライヴ映像のDVD、つまり8+4+1+1の14枚組。KENSOのオリジナルアルバムはほとんど持っているcybercatもさすがにライヴ盤全ては持っていない。持っていないものを先行して、所持するものも改めて聴いて見た。初期は荒い、でもものすごいエネルギー。自分はどうしてもドラマーから聴いてしまうが、オリジナルメンバーのドラムス山本治彦時代のヘヴィかつポップな音、日本の誇るスーパードラマー村石雅行時代の鼓のような弾ける音、要塞のようなドラムセッティングで多彩な音の小森啓資時代のアップデイトされた音いずれも元の音より鮮明。
1stから「ふりおろされた刃」。自分は3rdからの「新しい」wファンだが、この1stアルバムはファンの間でも評価が分かれる。2ndが以前CD化されたときにCDの長時間記録を生かして1stの曲のいくつかは再録されたが、これは入らなかった。忙しいハイハットオープンと絶え間ないタムの装飾で相当に忙しいイントロではじまる。サビはかなりキャッチーだけど、唐突でクラシカルな展開、複雑で引っかけが多いリズムのテクニカルプログレ「ヴォーカル」曲。後のKENSOはインストプログレバンドとなるが、最初期はヴォーカル曲もあったらしい。「県相」の頃からのメンバーで1st迄の参加となるベーシスト田中政行の筆による。メンツは清水に田中、山本とヴォーカル矢島史郎、井上真樹。
2ndに収められた彼等の名を世に知らしめた名曲「空に光る」。5拍子のこの曲はドラマチックな展開。この「Ⅱ」が名盤の誉れ高いのも頷ける内容。プレイは荒いが(それもそのはず、この作品から8トラックのテープ録音となったが、基本トラックはほぼ「せーの」の一発録りだそうな)、スゴイエネルギーを感じる。ギターソロ終盤のキメが素晴らしい。(1stでは頼まれてドラムを叩いたはずなのに、正式メンバーとしてクレジットされ引きずり込まれたw)山本のドラマチックでヘヴィな音がいい。メンツは清水と山本に、メジャーデビュー時(いわゆる「Ⅲ」)も関わるフルートの矢島史郎、キーボードの牧内淳、田中からベーシストは松元公良に交替。
「ミスカトニック(ハルキチ・ドラム・バージョン)」、これは蔵出し音源。ドラムが山本⇒村石と換わった“スパルタ”。
山本が他のバンドで忙しくなり、両立できなくなったからだが、4thオリジナルアルバムとしてリリースされた同アルバムには、既に録音されていたという最初の2曲(「グッドデイズ バッドデイズ」と「美深~北海道の冬に~」)のみ山本のドラミングで収められていた。...が、実は他にも録音されていた!というもの。この曲のアルバム収録バージョンは下からのタム回しや、高速タム移動、その弾ける鼓のような音色で、まだ音大生だった村石の才気溢れる表情豊かな音だが、それと比べて、重心の低い山本のリズムもバックがよく聴こえ、別の味わい。でも村石の鮮烈なデビュープレイだった“スパルタ”でのプレイはここ(山本のプレイ)に元ネタがあった事も窺える。メンツは清水、山本に、ベースは“スパルタ”を最後に抜ける松元、キーボードはやはり“スパルタ”が最後の作品となる佐橋俊彦に、2013年現在清水の次に古参メンバーとなる小口健一の二人。この集大成BOXは2012年末に発売されたが、シリアルナンバー入りの限定生産もの。そしてその発売イベントとして、吉祥寺はシルバーエレファントで「KENSO COMPLETE BOXをリーダー清水義央自ら手売りする会」が催された。結局狭いシルバーエレファント、予想以上の人が集まり「自ら手売り」は取りやめになったが、トーク&ミニライヴが催された。清水がエレピでKENSOの曲を弾き、いろいろな秘話を当時の録音などを交え語ったあと、なんと懐かしの初代ドラマー、山本が登壇、トークショーとなる。その後現メンバーのベーシスト三枝俊治のベースソロ、キーボーディスト小口の「ドラム」ソロがあった。三枝は本職なので当然だが、小口も結構上手いところを見せる。そして“そのまま”当日のハイライト「空に光る」へw。清水がキーボード、山本もキーボード、三枝はベースで、小口はそのままドラムス。小口だけが聞かされていなかったらしくww大焦りwwでも曲はどんどん進む。もともと5拍子の難しい曲で本職外のドラムスをぶっつけで叩かされているのだから大変。でも途中で山本⇔小口がチェンジし、大団円へと。
なぜそこまで詳しく知っているかって??それはそこにいたからですwwwwプログレ、という必ずしも一般ウケしないジャンルで、セミプロというカタチで自分たちの意志を通した彼等。プロ=今日の糧に依存しないあたりが、彼等がここまで永く続き、熱烈に愛される所以かも知れません。オリジナルアルバムとしては6年以上間が空いているけれど、ソロソロ次なる挑戦をしてもらいたいと、思っています。【収録曲】
1st:KENSO(1980年)
1. 日本の麦唄
2. 陰影の笛
3. ふりおろされた刃
4. 海
5. かごめ
6. ブーちゃんの宙がえり
2nd:KENSO Ⅱ(1982年)
1. 空に光る
2. 麻酔 part 1
3. 麻酔 part 2
4. 氷島
5. ブランド指向
6. はるかなる地へ
7. 内部への月影
8. さよならプログレ
3rd:KENSO (Ⅲ)(1985年)
1. 聖なる夢Ⅰ
2. パワー・オブ・ザ・グローリー
3. 微風が・・・・・・
4. ファー・イースト・セレブレイション
5. 精神の自由
6. パター・オブ・ザ・グルーヴィー
7. ターン・トゥ・ソリューション
8. ノスタルジア
9. 聖なる夢Ⅱ
10. 胎動
4th:スパルタ(1989年)
1. グッドデイズ バッドデイズ
2. 美深~北海道の冬に~
3. 金髪村の石
4. ミスカトニック
5. ピー・エム
6. 月夜舟行
7. インスマウスの影
8. ニューロ・サイコーマ
5th:夢の丘(1991年)
1. 月の位相-Ⅰ
2. 時の意味
3. 謎めいた森より
4. イア
5. 心の中の古代
6. 不安な記憶
7. 地中海とアーリア人
8. イアを去った日
9. フォース・ライク
10. アルファマ
11. 月の位相-Ⅱ
6th:エソプトロン(1999年)
1. 個人的希求
2. 願いかなえるこどもをつれてゆこう
3. 湖畔にて
4. 在野からの帰還
5. 知識を超えて
6. Gips
7. The Egg of Joe
8. Chronos Ouranos Esoptron
9. 躁の悲哀
10. Release Yourself
11. 気楽にいこうぜ
7th:天鵞絨症綺譚(2002年)
1. 精武門
2. 禁油断者マドリガル
3. 韜晦序曲
4. 木馬哀感
5. Tjandi Bentar
6. 謀反
7. 夢想用階段
8. Echi dal Foro Romano
9. 隠遁者の娘
10. 太郎という生き方
11. 夜のドッペルゲンガー
12. Isolated Jiro
13. 和解
14. 陰鬱な日記
15. 自他溶融
8th:うつろいゆくもの(2006年)
1. 痛ましき晦冥
2. あの頃モビーディックと
3. そこはまあそこはかとなく
4. Rhyme-stone in Cotswolds
5. ウブド寝入りばな幻聴
6. シヅカへの扉
7. 木霊の舞う情景
8. A Single Moment Of Life
9. GOS
10. わくわくリーバレー
11. 蠱惑島に歌は
12. 三つ縄6/8
13. 風の中の菲林
14. 暁に楽師が
15. コドン1
16. コドン3
17. コドン2
Live:イン・コンサート(1986年)
<DISC1>
1. プレリュード・イン・ソフィア
2. ブランド指向
3. 精神の自由
4. 聖なる夢
5. アリヴェデルチ
<DISC2>
1. 海
2. 氷島
3. ピー・エム(パット・メセニーに捧ぐ)
4. 胎動
5. 麻酔 part 2
6. 空に光る
Live:LIVE 92(1993年)
1. フォース・ライク~月夜舟行~時の意味
2. 月の位相Ⅰ
3. ミスカトニック
4. サントリーニへ To Santorini
5. イア~心の中の古代
6. ブランド指向~パワー・オブ・ザ・グローリー~美深
7. 謎めいた森より
8. 地中海とアーリア人
9. 氷島
10. グッドデイズ バッドデイズ
11. 海~麻酔 part 2~インスマウスの影
Live:ZAIYA LIVE(1996年)
1. Gips
2. 空に光る
3. 氷島
4. 月の位相Ⅰ
5. 美深~北海道の冬に~
6. 謎めいた森より
7. イアを去った日
8. Es
9. 心の中の古代(ロング・バージョン)
10. 地中海とアーリア人
11. グッドデイズ バッドデイズ
12. インスマウスの影
13. 在野からの帰還
Special:隠匿無用(未発表レア音源集)
1. インスマウスの影(ハルキチ・ドラム・バージョン)
2. ミスカトニック(ハルキチ・ドラム・バージョン)
3. 個人的希求(トリオ・バージョン)
4. 在野からの帰還(トリオ・バージョン)
5. Release Yourself(トリオ・バージョン)
6. シヅカへの扉(デュオ・バージョン)
7. 空に光る(LIVE'82)
8. 胎動(LIVE'83)
9. ターン・トゥ・ソリューション(LIVE'85)
10. 月の位相Ⅱ(LIVE'92)
11. アルファマ(LIVE'92)
12. A Single Moment Of Life(ベース・ソロ・バージョン)
13. コドン1(ベーシック・トラック)
14. コドン2(ベーシック・トラック)
15. コドン3(ベーシック・トラック)
DVD:比類なき生態(未発表ライヴ映像)
1. GOS(KENSOライブ2008「継続は力なり」)
2. Rhyme-stone in Cotswolds(KENSOライブ2008「継続は力なり」)
3. 空に光る(KENSOライブ2008「継続は力なり」)
4. 海(KENSO 2011「内ナル声ニ回帰セヨ」)
5. 胎動(KENSO 2011「内ナル声ニ回帰セヨ」)
★購入日のみの特典:サイン付き「葬られた文章たち」
「空に光る」
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購入金額
36,750円
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購入日
2012年12月30日
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購入場所
KENSO COMPLETE BOXをリーダー清水義央自ら手売りする会 at 吉祥寺シルバーエレファント
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