レビューメディア「ジグソー」

イヤーピースを追究したくなる

以前からそのうち買おうと思っていた製品だったのですが、気付いたら製造が打ち切られていて入手を半分諦めていたのですが、NanaMinoさんのレビューで特売情報を知り入手することが出来ました。

 

比較的低価格帯のインナーイヤーフォンとしては、TOSHIBA RZE-S70と共に最も注目していた製品で、RZE-S70は以前購入して既に使用中です。

 

 

 

 

どちらも実売価格5千円以下という価格帯まで下がりましたので、コストパフォーマンスでは他の追随を許さないレベルとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

パッケージは特筆するほどのものはありませんが、程々に上手く演出されているのではないでしょうか。

 

 

 

付属するイヤーピースはシリコン製×5ペア+Comply×2ペアとかなり豊富です。シリコン製とComplyでは結構音質傾向が変わりますので、使い分けが面白そうです。今回の試聴は基本的に出荷時装着済みのシリコン製Mサイズを使いました。

 

 

 

ライトブルーというカラーリングはどうかと思ったのですが、実物を見てみると思ったほどには悪くはありません。まあ、それでも全色並んでいるとすれば白か黒を買っていたと思いますが。

更新: 2015/08/26
総評

中高域のピークをどう抑えるかがポイント

試聴には以下のプレイヤー類を使いました。

 

 

 

 

ポータブルプレイヤーは音質的な水準がある程度確保されている上記2機種で、それぞれのヘッドフォン端子に直接繋いでいます。

 

 

 

 

据え置き環境はDigital Audio Labs CardDeluxe CDX-01の同軸デジタル出力からLUXMAN DA-100に入力して、そのままDA-100のヘッドフォン端子に繋いだ環境です。これは普段SENNHEISER HD650等を使う環境そのものとなります。

 

比較対象は前述のTOSHIBA RZE-S70だけに絞りました。なお、Fidelio S2は昨日からエージングを20時間以上済ませた状態で使っています。もう少し音は変わるかも知れませんが、ある程度は落ち着いてきているのではないかと思います。

 

まず、ポータブルプレイヤー2機種との組み合わせについてですが、気になるのは低域方向の締まりや力感が乏しく、単に量が出ているだけになってしまうということです。当然RZE-S70でも同じような傾向は表れるのですが、Fidelio S2の方がベースラインの明瞭度などで一歩劣るという印象です。

 

「Babylon Sisters / David Garfield & Friends」はベースラインについてはやや物足りなさは感じるものの、全体的な雰囲気はAK100ではまずまずというところです。RZE-S70は中低域に少しこもる部分があり、この曲に関してはドラムワークを楽しむべきものであるためか少し味気ない感じがありますので、Fidelio S2に分があるといえます。

 

一方「Vivaldi Vs. Vertigo / David Garrett」では、本来美しいはずのDavid Garrettのヴァイオリンが突き刺さってくるような鋭さで、Fidelio S2では正直聴くに堪えません。このソースに関してはRZE-S70の圧勝です。ここに実はFidelio S2が抱える問題が表れていて、中高域の辺りに強烈なピークがあり、この部分に音色が集中するソースは全般的に不得意にしているようなのです。試しにアニソンの「黄昏のスタアライト / 南條愛乃」を聴いてみても、やはりFidelio S2ではやかましく感じられて聴いていられませんでした。

 

この部分の音色が気にならないようなソースであれば、逆に少し陽性で安心して聴いていられる傾向が見て取れます。「How Many Roads / Fargie Frederiksen」などは少しアコースティックギターが細身にはなりますが曲に浸っていられるだけの空間を作り上げてくれます。

 

最近試聴用ソースとしてよく利用している「Now / Chicago」(24bit/96KHz WAV)については、どちらにしてもハイレゾソースの良さを存分に表現するというところまではいきません。そこそこ鳴らしているという水準です。

 

RZE-S70は中低域~中域に少しこもりを感じ、低域方向がやや厚手ではあるのですが、高域方向に目立ったピークがなく素直で解像感もあるため、Fidelio S2が苦手にしたようなソースは逆に非常に良好な鳴りっぷりです。特にDavid Garrettのヴァイオリンを聴くなら間違いなくこちらを選ぶべきです。

 

この中高域のやかましく感じられるピークは、イヤーピースを添付のComply(Mサイズ)に交換することである程度は解消されるのですが、今度はハイエンド方向の解像感や量が落ちるため、本来の陽性な音色も後退してしまって魅力を薄めてしまう部分があります。

 

ちなみにこのComplyをハイ上がり傾向の強いMUIX IX3000に使う(径が若干合いませんのでかなり強引にねじ込む必要があります)と、それなりにバランスが整ってきます。これはピークが発生する周波数がFidelio S2よりも高い帯域だからではないかと思います。(追記:IX3000にはかなり苦労して装着したのですが、eイヤホンさんの情報によるとComplyの適合サイズはどちらも同じものとのことです)

 

 

 

ここで接続先をLUXMAN DA-100に変更してみましたが、Fidelio S2については基本的な傾向はDAPの場合と変化はありません。アンプが強力になるため、低域方向の不満はかなり解消されるのですが、中高域のピークについては特に変化はありませんでした。RZE-S70の方はDA-100と抜群の相性をみせ、低域方向の締まりが大きく増しこもりも多少改善されますので、理想的な方向に多少近づくことになります。

 

Fidelio S2は実売価格を考えれば素晴らしい水準であることに変わりは無いのですが、幅広いソースをこなせるようにするためには中高域にある強烈なピークを押さえ込むことが必要になってきます。標準添付のイヤーピースでは、シリコン製では全く押さえられませんし、Complyでは必要な高域を削ってしまうという傾向がありますので、両者の良いところを上手く兼ね備えたようなイヤーピースと組み合わせることで解決するのではないかと考えられます。

 

もちろん普段聴くソースによっては、上記のような不満が目立つことなく快適に使える可能性もあります。この実売価格であれば最高レベルのコストパフォーマンスであることは間違いない製品ですので、まずは体感されることをお薦めしたい製品です。

  • 購入金額

    4,298円

  • 購入日

    2015年08月23日

  • 購入場所

    ビックカメラ

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