以前から処分価格で売られていたのですが、何となく購入に至っていなかったのが、このAdagio IIIでした。
下位モデルのAdagio IIと全く同じドライバーと、同じABS樹脂のボディーを採用していて、唯一にして最大の違いとなるのが、Final Audio Design独自のエアコントロール機構BAM(Barancing Air Movement)の有無でありながら、価格差がそれなりにあるため、本当に買う価値があるものなのかと考えてしまったのです。
ただ、ヘッドフォン・イヤフォンの類は好みの個人差が極めて大きく、結局のところ気になる製品は自分で聴いてみる以外にない分野ですから、結局は買ってみたというわけです。
パッケージから受ける印象はごく普通のもので、取り立てて強い印象はありません。
外観上の特徴は、意外と長さがある独自の形状と、左右の色分けがはっきりしたデザイン程度でしょうか。添付品はイヤーピース3種類(装着済み含む)のみで、他社にありがちなポーチなどは一切ありません。
評判以上の低域過多
もともとAdagio II/IIIはレビュー記事等でも、最低域はそうでもないがそれより少し上の帯域が分厚いという評判でしたが、想像を超えるほどの低域過多です。
中高域の質感は意外と良いという評価も見ていたのですが、中域はともかく高域はお世辞にも良いものではありません。ハイハットの音など、全く金属の質感が出ません。この辺りは上位のAdagio Vと異なり金属製でないことが影響しているのかも知れませんが。高域方向の質感の悪さはABS製であることが影響しているのは間違いないようで、指でボディーを強く握りながら聴くと意外と改善するのです。
今回は低域過多であることは最初から覚悟していたため、比較的低域方向が大人しいSONY WALKMAN NW-A16とLUXMAN DA-100で主に試聴しました。エージングは5時間ほどNW-A16で行った状態での試聴です。
ちなみに一応RATOC REX-KEB02AKも試聴に使いましたが、やはり低域方向の量に耐えきれませんでした。
NW-A16は高域方向の解像度と質感が持ち味という製品ですが、Adagio IIIと組み合わせてしまうとこの良さが完全にスポイルされてしまい、単に低域ばかりで抜けが悪い音になってしまいます。
DA-100との組み合わせでは中域の質感は意外と良いのですが、やはり高域方向の質は改善されません。
とにかくバランスを何とかしようと思い、比較的高域方向が硬質に多く出てくるMUIX IX3000のイヤーピースに交換してみたのですが、むしろ高域方向の質の悪さが目立つだけという結果に終わってしまいました。
Adagio IIIを聴いたあとでTOSHIBA RZE-S70を聴くと、あまりにもバランスが違いすぎてとても同じ環境で同じソースを聴いているとは信じられないほどの違いがあります。実売価格の近さを考えると、低域さえたっぷり出ていれば良いという主義の人でなければ、Adagio IIIを買う価値はないと断言してしまっても良いでしょう。RZE-S70も5千円以下で処分されていますからね。
Final Audio DesignはどちらかというとBAの方を得意にするメーカーだと思いますので、このAdagioシリーズを使った印象だけでメーカーの方向性を語っても仕方ないとは思うのですが、この製品についてはあまりに個性が強すぎて、これを持ち歩いて使うこと自体に躊躇を覚えてしまいます。
-
購入金額
4,082円
-
購入日
2015年08月14日
-
購入場所
ケーズデンキ
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。