何度もご紹介している老舗フュージョンバンドT-SQUARE。改名前のTHE SQUARE時代も併せれば、2015年現在ほぼ40年の歴史を持つバンド。そのバンドの持つ膨大な曲の中からセレクトして再録音したのがこの“HISTORY”。
...と言っても最初期の曲や最近のものが選ばれているわけではなく、1985年から1996年発表の曲で、この時期といえばF1グランプリのテーマ曲「TRUTH」で一般的に知られるようになる前後のあたりから、バンド創成期からフロントマンとして活躍したサックスの伊東たけしが一時期バンドを離脱したためハイパーサキソフォニスト本田雅人を迎えて新時代のT-SQUAREへ脱皮を図っていたころ。また中期T(HE-)SQUAREのリリカルな面を支えたキーボーディスト和泉宏隆の在籍時期とも重なる。このあと本田が離脱し、キーボーディストも頻繁に変わり、一時期はリーダー安藤正容と出戻った伊東のユニット構成になったりして、「バンド」形態を維持できなかった時期を経て、現在またサポートメンバー扱いのベーシストを含めて固定のメンバーで10年ほど続いているので、そういう意味では「前期のバンド色が強い時期」の再演ともいえる。
ただ今回は“宝曲 〜T-SQUARE plays THE SQUARE〜”、“夢曲 〜T-SQUARE plays THE SQUARE〜”、
“虹曲 〜T-SQUARE plays T & THE SQUARE SPECIAL〜”
と3作続いた(ゲストプレイヤーを迎えながらも)現在のメンバーが核になってかつての曲を演奏する形式ではなく、また以前「T-SQUARE and FRIENDS」名義で企画された作品発表当時のメンバーと外部ミュージシャンとのシャッフルバンド(1曲ごとにプレイヤーが異なったりした)
でもない。
名義としては「T-SQUARE plus」。“TRUTH 21c”
で使われたこの名義は積極的に外部のプレイヤーを入れた構成で、前回はT-SQUAREからの参加は安藤だけで他はGuns N' RosesやOzzy Osbourneのバンドなどにいたハードロック系の外国人プレイヤーという、安藤のソロプロジェクトに近い感覚のバンドだった。ただ今回12年ぶりに復活したT-SQUARE plusだが、やはり同様に全曲参加するのは安藤のみ。ただメンツは全然違う。大きく2セット、細かく言うと3セットのバンド構成。
まず、1、3、4、8曲目がサックス以外は共通で、ギター安藤のほかにドラムスがSoul AsylumのMichael Bland、ベースがPrinceのサポートで識られるSt Paul Peterson、キーボードがDavid Sanbornの音楽監督を長く務めるRicky Petersonというミネアポリス勢。これに1曲目と4曲目にJason Peterson DeLaireがアルトサックスで、8曲目にはSteve Coleがソプラノで加わる。
残りの曲はLAセッションで、12年前の初代?T-SQUARE plusのアレンジャー兼ギタリストのDoug Bossi(WhitesnakeのDavid Coverdaleと一緒にやってる人)が参加し、演奏者としてはキーボーディストが前回同様Vince DiColaが固定で、2、7、9曲目がドラムToss Panos+ベースJimmy Johnsonのコンビ、5、6曲目がGregg Bissonette(ドラム)+Leland Sklar(ベース)という2つのリズム隊を従える。そして、こちらのセットの一部には伊藤たけしがEWIで加わる(5、9曲目)。
ミネアポリスセットの1曲目はチョイとJazzyなオルガン調のコードとギターの単音の装飾音で始まるミディアムテンポの「11月の雨」。Aメロとサビの明快な覚えやすいラインと、シンコペーションリズムを多用したBメロの対比はCOOL。なんかT-SQUARE版「10 PM」(Larry Carltonの名曲)みたいな。アウトロのギターソロの音がステキ。
LAのセットはチョイハード。原曲と大差ない始まりなのに、途中でぶっ壊れるのは「LANDSCAPE」。Aメロはアレンジどころか音作りも元曲に近いのだが、Vinceのキーボードソロから怒涛のGreggのオンタイムドラムソロまでがすげえずけえ。
雰囲気は割と似ているのに、メロディラインがビミョーに変えられていて、「出来の悪い模倣作品」のような感じなのは「PRIME」。もともとT-SQUAREの中では「TRUTH」と双璧を成すハードなこの曲、前回のT-SQUARE plusのへヴィアレンジ“TRUTH 21c”でかかわったDoug&Vinceコンビなんで期待したが...この曲はメロディラインの改変が気になってノれなかったなー。
付属DVDはレコーディング風景。つい先日(2015年3月)永い療養から復帰することかなわず逝去したTOTOのベーシストMike Porcaroの代役としてのツアーベーシストや、David Fosterや松任谷由実のサポートとしても識られるLelandの美髯や、Michaelの巨躯に似合わぬハイハットタッチの小技などがみられて面白いけど、「曲」として通しのものではなく、裏話がガッツリ聞けるというわけでもなく、ちょっと存在価値が?これがアイドルなんかだと、造ったステージやCD等での「表」の顔だけではない、貴重なオフショット(..ではないか、仕事中か)なんだろうけれど、ミュージシャンのああいうショットって需要あるのかなー。バンド小僧なんかだとセッティングやレコーディングノウハウが聴ければ楽しいんだろうけど、そこまで突っ込んだ話でもなかったしなー。最後にデビュー35周年記念に2013年秋に行われた新旧メンバー集めたT-SQUARE SUPER BANDとしてのコンサートの映像作品が出ますよー..みたいなお知らせがあったけれど、これはまさに「広告」で曲の一部の切り貼りであって、鑑賞には値しない。基本自分はDVD等の特典がつくものは可能な限りそちらを入手しているけれど、これはなくても良かったかも。せっかくスタジオの練習風景やオーバーダブの様子が取られているので、ベーシックトラック、ベーシックトラック+メロ、ベーシックトラック+メロ+オーバーダブみたいな比較音源などがあれば面白かったのにと。
装丁も初回仕様は「4種ジャケットカード&フレーム帯仕様」という事になっているけど、このテのバンドのファンが求めるのはソコジャナイ...曲のアレンジと言い、装丁などと言い、頑張ったのにちょっと今一歩感が強い感じの作品です。
【収録曲】
<CD>
1. 11月の雨 -17th Album “IMPRESSIVE”
2. HISTORY -20th Album “Welcome to the Rose Garden”
3. 夜明けのビーナス -19th Album “夏の惑星”
4. YOUR CHRISTMAS -14th Album “WAVE”
5. LANDSCAPE -20th Album “Welcome to the Rose Garden”
6. PIOGGIA DI CAPRI -21th Album “B.C. A.D. 〜Before Christ & Anno Domini〜”
7. PRIME -10th Album “R・E・S・O・R・T”
8. TERRA DI VERDE -21th Album “B.C. A.D. 〜Before Christ & Anno Domini〜”
9. HIGH TIME -11th Album “S・P・O・R・T・S”
<DVD>
1. Behind The Scenes of T-SQUARE plus 「HISTORY」
2. DVD Information
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購入金額
3,497円
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購入日
2015年06月07日
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購入場所
TOWER RECORDS
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