AMDが2015年度の主力製品と位置付ける、Godavariコア採用のAPU。
新しいコードネームを持ってはいるものの、実際のところは前世代にあたる”Kaveri”の性能向上版で、要は”Trinity”の性能向上版を”Richland”として発売したのと同じ経緯を持つ。
ちなみに、この”Godavari”の発音はゴダバリでなく、”ゴーダーヴァリィ”が本来正しいらしい。
近所のインドカレー屋の兄ちゃんが言ってた(Godavariはインドの川)ので、たぶん間違いない。
製品外観はこんな感じ。
Kaveriの頃よりもパッケージが大型化している。
以前のAMD神は金属缶の神衣であったが、APUでは紙となった。
まあ、あの缶「穴空いてて他に流用とか出来ない」時点で、処分に困る(何)代物だったから、紙箱のほうが色々と面倒が無くていいんだけど。
箱の中身一覧。
インストとAPU本体、クーラーにドラクエXのクーポンコードという内容。
後述するが、付属のクーラーはリテール品とはいえ、中々豪華な仕様のものが付属する。
なお、このドラクエXのクーポンは未使用のままなので、欲しい人居たらメッセージ下さい。
先着にてコード差し上げます。(2016 1/1譲渡しました)
箱に付いてる封印シールには、”12 Computer Cores”の記載。
4CPUコア+8GPUコア=12コア、ってことらしい。
ただし、Win8.1以降のOSで本製品は『Dual Core CPU』として認識する(笑)
まあ、殆どの人にとっては既知の話だろうけども、AMDのCPUは”Bulldozer”ことAMD-FX8150以降の製品は一部を除いて「2つの整数演算コア」と、「1つの浮動小数点演算コア」を”1ユニット”とする設計を採用しており、Intel系のCPUとは明確に設計思想が異なる。
AMDでは、この1ユニットをDualコアとして数えている訳だが、実際にこれをOS上でDualコアとして認識させた場合、Float演算の度合いによっては整数演算コアが片方遊んでる状態になってしまい、OS上での処理速度がガタ落ちすることがあった。
そのため、Windows8の登場から少しして、APUは「1ユニット1物理コア」として認識するようOS側が改変されており、A10は「4つの整数演算コア」を持っているが、OS上からは「物理的にはDualコア」として見えるという、Intelの”HyperThreadingとは真逆”の認識をするようになっている。
(仮想コア数としてはQuadCoreとして認識するので、スレッド数は4になる)
ちなみに、GodavariやKaveriに採用されているユニットは、”Steamroller”という新型ユニットを採用しており、”Bulldozer”ユニットの頃に問題となったフロントエンドでの命令渋滞を解消するため、デコーダが2つに拡張された。
上に示した画像は、BulldozerとSteamrollerのユニット構造を示したものだが、デコーダが二つに増えたことで、整数演算コアの「遊びが減る」ように改良されている事が判る。
ミドルレンジのゲームなら、これで十分。
A10-7870Kは、改良されたといっても基本的にはKaveriと同じアーキテクチャの製品である。
そのため、基本設計やスペックはそれほど変わっていない。
【製品名称】 A10-7870K
【コードネーム】 Godavari (Kaveri Refresh)
【動作周波数】 3.9GHz(MAX-Speed 4.1GHz)
【プロセスルール】 28nm
【コア数】 4コア/4スレッド
【L1/L2/L3】 2x 96KB + 4x 16KB / 2x 2MB / None
【TDP/TEC値】 95W / 77.19W
【Socket】 FM2+
【内蔵GPU】 AMD Radeon R7 (8 CUs) -866MHz
Kaveriとの比較での改良点は、動作周波数の向上のみとなる。
基本的に全く同じ設計の製品が、製造側の改良でより高性能なダイが安定して取れるようになったという事だろう。
ちなみに、CPU単体の演算性能で言うと”Phenom II x6 1055T”がほぼ同等。
ただし、鈍足なL3がないことやコア単体の性能向上の差、拡張命令の実装などの差があるので、体感速度では比較にならない。
こちらが、APUのパッケージ写真。
見た目はほぼPhenom時代と変わらない。
製造国はマレーシア。最近はドレスデン工場以外の製品も結構増えた。
こいつは、元チャータード・セミコンダクタの製造品だと思うが、確証はない。
CrystalMarkの数値的には、ほぼ”Phenom II x6 1055T”と同等。
価格的に微妙な数値に見えるかもしれないが、だいたい同価格帯のCore-i3 4370と同等だ。
更に言えば、内蔵GPUの速度差は倍近い。
但し、フルロード時の消費電力量は4割ほどA10-7870Kが多い。
3D Markもちゃんと最後まで通る。
まぁ、Firestrikeは実行中かなりガッタガタだが、Skydiverまでは殆ど引っかかる事無く動く。
1万円台のCPUとして、この数値はかなり速い部類に属す。
CineBenchの結果。OpenGL周りの数値は、CPUオンダイのものとしてはかなり速い。
ちなみに、49.77だと”GeForce GT 730”の数値を超える。
これらの結果から言えることは、A10-7870Kには基本「ビデオカードを挿さなくてもいい」ということだ。
そりゃ、勿論「重いゲームをガシガシ動かす」用途なら積まないと駄目だが、そういう使い方をするPCが必要ならIntelの上位製品を買うべき(CPUが高性能GPUの足を引っ張りかねない)で、7870K構成にGPUを足すなら、中位以上の製品は正直カネの無駄になる。
このように、7870Kは「ヘビーユーザーにはお勧め出来ない性格の製品」だが、普段使いのPCとしては「割と丁度いい」スペックに収まっている。
Fluid Motion Video が効果絶大過ぎる。
A10-7870Kというか、Kaveri以降のAPUはHSAという機能をハードウェアレベルで実装している。
AMD-APU最大の特徴となっているのがこれで、具体的な機能としては「CPUとGPUが同じメモリのアドレスを参照し、処理出来る」というものだ。
それが一体どんな利点に繋がっているのかといえば、要するに「CPUが苦手な、連続した整数演算を、それを得意とするGPUが肩代わり出来る」ということだ。
このGPUによってグラフィック演算以外の計算をさせることを、GPGPUと言う。
nVidiaなどが「CUDA」という名前で実装している機能がそれにあたるが、HSAはこのGPGPUで得られた結果を「CPUがメモリから即座に流用」出来るため、一つのアプリケーションというかコードの処理の一部をGPUが肩代わりし、それをCPUが参照するだけでなく「メモリレベルで改変」を加える事が出来る。
このHSAについては、現時点で殆どその恩恵を感じる事が無いと言われるのだが、実は現在oracleなどがJavaにHSAを実装しつつあるし、B+TreeなどもHSAに対応する。
私は門外漢なので、ソフトウェアの事は余り良く判らないのだが、B+Treeはメーラーやブラウザにも利用されているそうなので、これらを利用したアプリケーションがHSAへ対応してきた場合、検索関連の処理がGPUに置き換わるため、数倍の速度で処理出来るようになるという。
また、これに関連するGPGPU技術からの派生として、AMD系GPUで利用出来る機能がある。
Fluid Motion Video と呼ばれるこの機能は、映像のフレームを60fpsへ補正する。
映像というのは「連続で少しづつ違う画像」を連続で書き換えて表示するものだが、この少しづつ違う画像の数が一般的な映像では、一秒間30~40枚くらい。アニメだと24枚だ。
この「書き換える回数」がfpsだが、FluidMotionVideoはこの書き換え回数を60fpsに増やす。
本来、この機能はRadeonの最上位にあたる、R9シリーズ以外では原則として利用出来ないのだが、A10-7870KはこのFluidMotionVideoをオンボードGPUで利用出来る。
・・・まぁ、現在はレジストリを弄るとか、ソフトで設定を書き換えるとかして7000番以降のRadeon系GPUならFluidMotionVideoを有効に出来るのだが。
付属クーラーが結構良質。
A10-7870Kは、コアとヒートスプレッダの接合にソルダリングを採用しており、熱離れのよい設計となっている。
しかし、AMDの製品に付属するリテール・クーラーは、長いこと「単なる錘」と言われてきた。
というのも、付属するクーラーの冷却性能が微妙過ぎて、冷却は出来ても「喧しすぎ」たり、最悪の場合は「実用に耐えない」代物もあった。
しかし、A10-7870Kに付属するクーラーは、一味違う。
このように、リテール品としてはエラく豪華。
付属するファンこそ6㎝だが、ヒートパイプによってヒートシンク全体へ熱を伝える構造となっており、接触面にアルミ銅を採用している。
冷却性能は、見た目通りまずまず良好。
OCCTにて最大負荷状態での冷却性能をチェックしてみたが、30分間のフルロードでも50℃前後で推移した。・・・・まぁ、音は結構デカいんだけども。
普段使いなら十分以上。重いゲームしない人向け。
普通に使う上でCPUパワーの不足を感じることなく、ビデオ処理性能は映像補正を含めて十分以上。
カジュアル・ゲームなら過不足なく動作し、消費電力もデスクトップ機として平均内。
普段使い用のPCとしては十分以上の性能を、特価だったとはいえマザーとメモリがワンセットになって、税抜きとはいえ30000円以下で手に入ることを考えると、APUは「そこまで高性能なPCは要らない」人向けには最適解となる製品と言える。
多くを求めない場合、A10-7870Kは「丁度いい性能」だ。
Athlon5350だと不満に感じるZip展開の遅さも無いし、FluidMotionで映像見たいときにメインPCの電源入れずに済むし、Win10でのOS起動速度はドライブがWD Black2でも実測で6秒程度。
うん、十分じゃないか。
重いゲームやるには色々と足りないけど、それ以外ではコイツで十分って性能にはなっている。
ドライバ導入も簡単だし、複雑な設定なども殆ど要らない。
ハイエンド構成での電力消費を気にする方は、セカンドマシンに最適。
多くの人にとっては、メインマシンとして十分に使えるPCが作れる製品だ。
そりゃ、ベンチマークは振るわないけど、多分使ってみると「案外悪くない」はずですぜ。
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購入金額
16,900円
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購入日
2015年09月30日
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購入場所
九十九名古屋一号店
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