レビューメディア「ジグソー」

流麗かつゴージャス。ただバンドとしてのダイナミクスがあればもっと◎

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。洋の東西を問わず、最近の動画共有サイトによる今まで識られていなかったアーティスト、プレイヤーへの注目はものすごい物があります。「ふつうのおばさん」が世界を震撼させる歌姫だったり、中学生で世界中にファンを持つプレイヤーになれたり...そんな動画共有サイト出身のプレイヤーによって組まれたバンドのメジャーデビューアルバムをご紹介します。

ニコ動はアーティストやその卵が発表の場として利用しており、いままでは識ることができなかった人の創作活動を見る/聴くことができる。特に音楽好きのcybercatとしては「歌ってみた」「演奏してみた」(その延長としての「踊ってみた」も)は注目のジャンルで、先日ご紹介した40mP

Lowland Jazz

おさむらいさん

など動画がアップされれば必ずチェックする人たちも増えている。

以前であれば周りの知人に「あのひと○○がうまいねー」と言われることはあっても、それが全国区になるのにはよほどの運と覚悟が必要だったが、いまでは地元で生活しながらも全国的に(場合によっては世界的に)高い評価を得る人も多くなってきた(そのうちの何割かはその後芸能活動が主になっていくようだが)。

そんな風に動画サイトが活況を呈するなか、ニコ動の「弾いてみた」ジャンルには「ニコ動ピアニスト四天王」とも呼ばれる人たちがいる(2015年現在)。それはH ZETT M紅い流星事務員Gまらしぃの4人。

 

H ZETT MPE'Z(ペズ)

でプレイする「ヒイズミマサユ機」その人で、でもH ZETT Mとしてのソロ名義のときはピエロ風のいでたち、メイクで演奏するので顔が見えない。

 

紅い流星は「爆音ジャズ」シリーズ

の奏者で、紅いClavia Nord Stage2を操る3倍速いwプレイが有名。

 

事務員Gはマルチプレイヤーで(しかもダビングでなく手足口まで使った同時演奏なのがすごい)生主だが、

ピアノの腕は確か(たぶん鍵盤が本職)。

 

そしてピンクのサルのぬいぐるみがトレードマークのまらしぃ(marasy)はとても一人で弾いているとは思えないほどの音数が多い流麗な演奏で人々を魅了する。いずれも好きなプレイヤーなのだが、もともと動画サイト出身だからか、最近の「ダウンロード販売」が存在感を示すようになってきてから登場した世代のアーティストだからか、なかなかモノとしての作品(CDやDVDなど)がない傾向にある(あっても同人作品とか)。

そんな中、その四天王のひとりまらしぃがバンドを組んでメジャーデビューしたというのを見かけたので入手したのが本作、“LOGISTIC FUNCTION”。

バンドはlogical emotion(ろじえも)という名前でトリオ構成。ベースが気持ち悪い印象的なお面と無駄な激しい動きで有名なdrm、ドラムスがサウスポーのテクニシャン、バスドラの細かい刻みが印象的なタブクリア店長、そしてピアノがまらしぃというもの。

...通常トリオ、というからには音数が少なく、間を活かした曲作りになるはず...なんだけど?

彼ら3人にはそんな考えは全くなかったw
ニコ動でも音数多くて有名な3人なので、全力疾走感がすごい。

からくりピエロ」。ちょっと音数飽和気味か?もともとまらしぃのオクターブ奏法とグリスを多用した流麗かつゴージャスなプレイはソロでこそ映える。逆にいうとドラムスとベースの入る隙間がない。この曲はもともとソロピアノでやっていた曲なので、より「ピアノ1台で完成された」世界になっていて、それにぶつかりながらリズム隊が乗っかっているという感じ。これはつづく「初音ミクの消失」も同様な傾向。

対して「Just Be Friends」はカホンとウッベ(といってもエレキウッドベース)のバック。これはまらしぃの良さが出ている。流れるようなプレイでありながら、うまく溶け合っている。ベースソロ~ピアノソロに至る部分の音の選び方がステキ。ふたたびカホンが入って盛り上がる部分はかなりいい感じだし、それからまた一度オフリズムになってラストワンコーラスはまらしぃらしいゴージャスなプレイで、シックなアレンジのこの曲を盛り上げる。

千本桜」は自己主張炸裂系だがwこれはこれでアリ?スラッシュ桜!?もともと元曲もそういう系統の曲調だったが、ホンキでそれ演られるとくる!くる!!2コーラス目のAメロはdrmのベースがスラップになって全開!間奏はとても3ピースとは思えない音の奔流で、ラストのまるでライヴのような終わりまで駆け抜ける!!

初回限定盤の付属DVDには1時間で売り切れたという渋谷La mamaのデビューライヴから「アマツキツネ」と、前述の「スラッシュ桜..もとい「千本桜」のPVが収められている。各プレイヤー目線のカメラもあって、臨場感たっぷり!

プラチナチケットとなったLa mamaの映像は結構粗め
プラチナチケットとなったLa mamaの映像は結構粗め

ある意味3人の個性が色濃く出た作品。テクニック的にはいうことないし、見せ方も知っている。ただ、3人でしか作り出せない世界、というのを作るには「引く」のも大事。ff(フォルテッシモ)はpp(ピアニシモ)があってこそより際立つ。音の奔流は「音の間」との対比でこそ圧倒的なパワーとなる。それもあって☆はややカラめ。期待が大きいアーティストだけに。

DVDつき初回盤、ジャケットステッカーも付いてます
DVDつき初回盤、ジャケットステッカーも付いてます

実はネットで巡り合った割には3人の住居は近く(みんな名古屋近辺らしい)、よくラーメンを食べるついでに練s..いや練習の後にラーメンを食べに行って親睦を深めているとか。次の一手は「タメと引き」を織り交ぜたダイナミックな作品期待で!

【収録曲】
<CD>()内原曲者
1. ローリンガール(wowaka)
2. からくりピエロ(40mP)
3. 初音ミクの消失(cosMo@暴走P)
4. アマツキツネ feat. 小湊昭尚(marasy)
5. サイハテ(小林オニキス)
6. from y to y(ジミーサムP)
7. パンダヒーロー(ハチ)
8. モザイクロール(DECO*27)
9. Just Be Friends(Dixie Flatline)
10. サリシノハラ(みきとP)
11. 千本桜(黒うさ)
12. メランコリック(Junky)
13. 炉心融解(iroha)
14. Fire◎Flower(halyosy)

<DVD>
1. アマツキツネ (ライブ映像/2014/11/1 渋谷La mama)
2. 千本桜(MV/DVD edit ver.)
3. レコーディングメイキング
4. ライブメイキング

「千本桜」


「LOGISTIC FUNCTION」クロスフェード

  • 購入金額

    2,700円

  • 購入日

    2015年04月26日

  • 購入場所

    メロンブックス

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