日本上陸から四年強、今やすっかり日本でも定着した感があるFractal Design社の製品。
中でも、同社のフラッグ・シップである”Difine”シリーズは、自作PCにおける定番の一つとして多くの人に評価される製品だ。
ただ、日本初上陸製品たる”Define-R2”は、やれここがドコソコの真似だのと言われ、作りが雑だと酷評する向きもあり、機能性は良いが問題点も多いという評価だった。
しかし、その直後に登場した”R3”は欠点を大幅に改良して酷評を覆し、一年後に発売された”R4”は大型ビデオカードが収まらない点を克服。
こうしてDefineシリーズは着実な改良を繰り返し、静音ケースとしても、爆風ケースとしても使えるカスタマイズ性が高く評価され、今に至る。
今回、そのDefineシリーズの最新作である”R5”を評価する機会を得た。
まぁ、既に複数のサイトで詳細なレポートが為されている製品であり、どういう製品かは多くの人の知るところだろうが、組んでみなけりゃ分からないということで、ざっくり検証してみた。
簡素にして質実剛健、なれど安っぽさは微塵も無し
とりあえず、まずは外見から。
Defineシリーズの特徴は、そのシンプルというか「真っ平ら」な正面デザインにあるが、このR5でも基本デザインはそのまま踏襲されている。
ただし、R3比較で2センチ強ほど幅が広くなったほか、側面部のスリット格子が細く広くなり、前面吸気の性能が向上している。
正面扉の固定は、マグネットからスナップ式に変更された。
閉じる際に最後まで手を添える必要があるので、マグネット式の方が個人的には良かったが、これは正面扉の開く方向を変えられるギミックを追加したことによる変更なので、ある程度仕方ない。
開閉方向の変更は、根元の金属部品を外し、反対側のヒンジに止めなおす事で行う。
ヒンジが扉固定のスナップを兼ねることで、少ない手間での左右両開きを実現した。
フロント・インターフェースは正面前縁の上部に付く。
R3では1ポートだったUSB3.0が2ポートに増え、リセットボタンが追加された。
また、R3では延長必須だったサウンドポートのケーブルは、大幅に延長されている。
取り外し式のサイドファン・ポートはR5でも健在。
蓋の形状が改良され、格子は外から見えなくなっている。
このように、全体的な雰囲気は、今までのDefineシリーズからあまり変わっていないように見受けられるが、実際にはかなり改良されている。
ケース各部の勘合や精度、鉄板の剛性、塗装の質、樹脂部品の成形精度などはR3から大きく向上しており、旧製品にあった「よく見ると、チープ」な部分は一切見られなくなっている。
今や老舗や大手メーカーの製品と比較しても、勝る部分はあれど劣る部分は一切ない。
15000円台の製品として、十分に納得の行く仕上がりになっている。
自作を知り抜いた者による、妥協なき工夫、作りやすさの妙
Defineシリーズの良さは、自作する側が思わず「なるほど」と思う工夫が随所にあり、組み立てる際に迷いが生じないところにある。
これは、R3の時点で相当な工夫が見て取れたが、R5では更なる進歩がみられる。
こちらは、R5の内部全景。
パッと見は、3.5インチベイの数が多めだが、ごく一般的構成に過ぎない。
しかし、この段階からもう随所に工夫の跡が見える。
まず、マザーボードの入る左側の部分に注目頂きたい。
マザーボードが収まる部分だけが、奥に向けて凹んでいるのが判るだろうか?
この凹みの深さは1㎝程度に過ぎないが、ケースの幅を増やすことなく「背の高いクーラー」を収める際の余裕が1㎝増えているということだ。
また、3.5ベイのみならず、5インチベイに至る全てのドライブベイが取り外せる。
搭載カードの制限は「ケース前面部」までとなり、収まらないカードは無い。
電源にしても、かなり長い特殊形状電源でも収める事が出来る。
裏面にしても、凹みの部分を上手く利用して裏配線を纏めるルートが用意され、またSSD用の2.5インチベイも二つと、昨今の流行をきちんと踏襲している。
また、トレイが片方しかついていないというケチ臭いところも一切ない。
ケーブル部分を纏めて固定するための、マジックテープ式ケーブルストラップは最初から付属しているし、CPU裏面の作業窓も限界まで広く取られているので、マザーボードによってはバックプレートが付かない、といった問題点もきっちりクリアされている。
こちらは、組み込んだ状態の写真(クリックで拡大可) だが、ストレージ用ケーブルが多くなるサーバー構成でも、余裕で全て裏配線出来る幅が確保されている。
ただし、上から五段目の3.5インチベイは「L字型のSATAコネクタが、ケースと干渉して挿せない」ほか、5インチベイ中間部分に突起があるため、5インチを2段使うドライブを搭載する際は、無理矢理曲げるしかない。
まあ、フルハイトLTOなんて一般的には利用されないんで、ウチが例外なだけだが。
なお、裏配線では一般的に利用されるL字型SATAケーブルだが、R5の背面配線部は相当に余裕があるので、ストレートタイプのケーブルで配線可能。
HDDの裏なんぞ、タバコの長辺を合わせても、1㎝程度しか頭が出ないくらい広い。
固いケーブルで多数のHDDを配線する場合でも、余裕で収める事が出来る。
側面板の、ビビリ音を軽減する制振シートも健在。
R3の頃はカット・貼り付けともに雑な部分が見受けられたが、R5ではピシっと揃った質の高い加工になっている。
HDDトレイにしても、3.5・2.5の双方に対応するのは当たり前、トレイの途中からフレームを細くすることで、全面部の吸気を出来るだけ阻害しないよう工夫されている。
具体的に言うと、こういうこと。
青い矢印がR3で確保されていた幅で、赤の方がR5で確保された幅だ。
前面吸気を確保するのみならず、搭載したHDDの冷却性能も向上する。
こちらは後部ファンだが、ここも良く考えられている。
搭載されているファンは14㎝幅のものだが、その内側にもねじ穴を設けることで、一般的な12㎝ファンの搭載も可能としている。
また、上下に幅を設けた事で、ファンの搭載位置を上下させることが出来、上面部にラジエターを搭載した場合などに物理干渉を容易に避けられるよう工夫されている。
開閉機構も一工夫あり、一番アクセスの頻度が高い左側板の開閉はレバー式。
レバーを下に押し下げると、そのまま前縁部をヒンジにして外側にパカっと開く。
スライド式と比較して開閉が容易なだけでなく、ネジの取り外しといった手間もない。
固定を強固にしたい場合に備えて、ネジ止め用の穴も用意されている。
右側板はさすがにネジ止め式だが、ローレット・スクリューは脱落が起きないタイプ。
パネルも左同様に外側に開くタイプなので、裏配線を無理矢理押し付けるようなことをしなくても、容易に開閉出来る。
完璧過ぎて、ぐうの音も出ねぇ。
えーと、冗談抜きに欠点と思える部分が無いです。
外部水冷ホース穴がないという点についても、最大で280㎜長のラジエターが二つ内部に収まる設計(正面と上面。ただし3.5ベイ3基以外を外す必要あり)なので、本格水冷構成でもそれほど困る人はいないはず。
風量が必要なら上面、側面パネルを解放してファンを付ければいいし、静音として使うならそのままでOK、大型VGA搭載のときは3.5ベイを一部撤去すりゃいいし、HDD大量搭載のストレージ・サーバーとして使うなら、そのままの構成で組めばいい。
ケース・レイアウトにしてもファンの対応幅にしても、柔軟性が非常に高い。
「この構成、収まるだろうか・・?」と悩んだ場合、取り敢えずコレ買っとけば大丈夫。
ATX構成なら、ほとんどの場合はキッチリ収まります。
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購入金額
0円
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購入日
2015年01月29日
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購入場所
モニター当選
ThinkRock(T-beet)さん
2015/01/30
組込みお疲れ様でした(^^)
daiyanさん
2015/01/30
アダプタでもいいな。
Vossさん
2015/01/30
先日は作業時の補助THXでしたw
ざっくりだけども、UP出来てまずは一安心ですろ。
daiyanどの
一応あるんですけど、MiniSASファンアウトだと見たことないんですよね>逆L
まあ、ストレートでも普通に余裕もって挿せる余裕があるので、そのうちストレートに買い換えようかと思ってます。