所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽業界で既に飯を喰っている人間でも、「ソロデビュー」は特別なものです。現在は日本での「巨匠」と読んで差し支えない人物が、ソロの道を選んだ時の作品をご紹介します。
ヤマタツこと山下達郎。識らない人がいないメロディメイカーで、もうそろそろ彼の歌が街中に溢れる時期が近くなってきたが、彼が「売れた」のは実は結構後。大学中退後組んだバンド、シュガー・ベイブは通人を中心に非常に高い評価を得ていたが、実際にセールスが伴ったのはソロデビュー後しばらく経ってから。「BOMBER」の局地的ヒットはあったものの、全国区になったのはカセットテープのCF曲「RIDE ON TIME」
なのでデビュー後4年を経過していた。
そんな彼の原点ともいえる作品がソロデビュー作の本作。後の作品に比べるとややキャッチーさはないが、作品の核の部分は既にヤマタツカラー。
「Windy Lady」。これは名手Will Leeの存在感のあるスラップのベースラインに尽きる。Allan Schwartzbergのハネるリズム、George Youngの粋なサックスソロ...ヤマタツの洋楽テイストが良く出ている。当時こんなコード展開が似合う日本人アーティストっていなかったな。
「Minnie」はジャジィな薫りの名品。ストリングス+ピアノ中心に静かに始まり、全音符中心に下支えしていたWillのベースラインが動き始めると軽い感じにラッパ隊が入る。物悲しいRandy Breckerのペットの調べがNYの路地裏に溶けていくよう。
「LAST STEP」は吉田美奈子の名作アルバム“FLAPPER”にヤマタツが提供した曲。ニューオーリンズ系の明るい味付けがされていた吉田ヴァージョンに比べると、コーラスを前面に出してオールディーズな感じに。ライヴアルバム“JOY”での名演で識られることになるこの曲も元はコレ。ハンドクラップがハッピーだな。後にアカペラアルバム“ON THE STREET CORNER”を出すヤマタツの原点か?
これは1976年リリースなので当然最初はアナログレコード。そしてそのA面は「NEW YORK SIDE」、B面は「LOS ANGELES SIDE」として参加ミュージシャンやプロデューサーが代わり、レコーディングされた日付もずれている。実はA面が彼がやりたかった「外部のプロデューサー、アレンジャーに自分の楽曲を料理してもらう」というもので、それまでシュガー・ベイブで正規の音楽教育を受けているわけでもない自分がセルフプロデュースの形をとっていたが、「他から見た自分」を求めて作ったのが、Charles Calelloをプロデューサーに据えたA面、「NEW YORK SIDE」。通好みの大物が揃ったA面の制作陣では制作費が「片面分」しかなく、セルフアレンジで製作元のLAの知人のつてをたどって制作した「LOS ANGELES SIDE」。A面を創ったCharlesの腕は確かで、ヤマタツがその後私淑するにいたる美しい編曲とコード展開なのだが、のちに続くメロディライン、雰囲気はやはりB面。
稀代のヒットメイカーも「学びの時期」はあった、とほっとさせられる?作品です。
【収録曲】
1. Circus Town
2. Windy Lady
3. Minnie
4. 永遠に
5. Last Step
6. City Way
7. 迷い込んだ街と
8. 夏の陽
音を聞くと古いが、中身は全く古くない
...かといって、新録で最新の音にしたら、魅力度がアップするというわけではないが。
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購入金額
2,575円
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購入日
1989年頃
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購入場所
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