レビューメディア「ジグソー」

JAZZしかないよ...と言いながら、「ど」ジャズではない。でも何でもJAZZにしてしまう。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ものごとの中心にいるにいる人よりも周辺から見ているヒトの方がその本質に迫れたりします。言語学を修めるために渡米したが、黒人コミュニティからの影響で彼等に流れるジャズ、ソウルといった音楽のエッセンスを肌で感じたアーティストの最新譜をご紹介します。

クリヤ・マコト。何度かご紹介しているが、アメリカ留学経験はあるものの正規の音楽教育を受けたわけではなく、肌で感じ取ってエッセンスを吸収した男。一般大学卒後アメリカでのジャズ講師や演奏活動を経て帰国、ジャズ畑でその才能を遺憾なく発揮...するかと思いきやwヒップホップに行ったり、車のプロモでタップダンスやヴァイオリンとの異種格闘技をしたり、

懐かしのJ-POPや11PMのテーマソングのジャズアレンジを演ったり、

ヴォーカルまで入れてエヴァしてみたり

ととにかく型にはまらない。

そんな彼が出した結構ジャズ寄りの作品。その名も“NOTHIN' BUT JAZZ”。でもJAZZしかないよ、と言いながらもJAZZ本流ではない。取り上げられるのはポップスだったり、映画音楽だったり...それらが彼の手にかかると新しい曲として生まれ変わる。

「Great American Melodies」は映画音楽などのメドレー。ハイスピードのスラッシュ系?ジャズの「The Simpsons Theme(アニメシンプソンズのテーマ)」から始まり、スピードダウンして「Theme of Rocky(映画ロッキーのテーマ)」。ここは菊地成孔

のサックスに尽きる。仰々しくロッキーが退場すると「Rhapsody in Blue」を挟んでギアダウンし、ロマンチックに「Beauty And The Beast(映画美女と野獣のテーマ)」を経た後、こぜわしくw「The Simpsons Theme」に戻って終わる。ブリッジに「Also sprach Zarathustra(ツァラトゥストラはかく語りき/映画2001年宇宙の旅の挿入歌)」まで使われており、ごった煮状態。2度に渡って聴かれるドラムのオンビートソロはJazztronikのマサ(あまっち、とも)こと天倉正敬。もちろんグリス多用の「The Simpsons Theme」での超ハイスピードなソロから、ロッキーのテーマへのブリッジでのファンキーなクラビバッキング、「Beauty And The Beast」のゴージャスなプレイとクリヤの魅力も満載!

4曲目の「Cherokee Introduction」と次の「Cherokee」は一連の作り。「Cherokee Introduction」はクリヤがソロで「Cherokee」のテーマを素材に自由に弾き倒す約2分の小品。クラブとかでリクエストに応えて弾いた、という風情のインプロヴィゼーション作品。そのままスタンダード「Cherokee」になだれ込む。ピアノトリオの構成だが、10年ほど前多摩地区のジャズバーでよくプレイを聴いていた納浩一がゴキゲンなウッベ、大坂昌彦がこれぞジャズドラムソロ!というプレイで盛り上げる。

Billy Joelの「The Stranger」などボサノヴァ系のリズムにJiLL-Decoy association(ジルデコ)のkubotaのちょっとリバーブの感じが懐かしいギターが乗り、そこにSHANTI(シャンティ)

の色気のあるヴォーカルが乗って、原曲のギターの印象的なリフやベースラインは全く見られず、中間部のピアノソロはかなりアウトしてる。♪パヤパ♪というちょっとダサ古いコーラスやピアノソロではあえて高音域を絞った古っぽい録音が「懐かしい」感じだ。

他にもクリヤのCOOLなエレピとGeila Zilkhaのけだるげでレイドバックした歌や軽やかなリズムと呼応するスキャットが絡む新感覚ジャズS「treet Walking Woman」(これで叩いているドラマーはなんと元THE SQUAREの則竹裕之!)、日本情緒溢れるヒーリング系の「Sakura Garden」(映画富嶽百景 遥かなる場所の使用曲)、豪華なラッパ隊を従えたHorace Silverの名曲「Sister Sadie」など楽しさ満点。

あと2011年にYoutube上で開催されて好評を博した「クリヤ・マコトpresents アドリブコンテスト」が再び開催されるらしくその課題曲(10)も入っている。前回はほぼDm一発だったが、今回は結構展開ある⇒楽譜
第2回アドリブコンテストの告知も封入されている
第2回アドリブコンテストの告知も封入されている
「JAZZしかねぇんだよ」といいながら、「ジャズの枠」には収まらない。それは彼が中心にどっぷり浸かって安寧としているのではなく、あえて外に飛び出し、中央を見据えているからなのか。いや、「ジャズ」というカテゴリーにはまった時点でそれは「ジャズ」ではないのかもしれない。黒人音楽と西洋楽器の出逢いから始まり、マーチング、ダンス、ボサノヴァ、ラテンなどいろいろなものを呑み込んでさらに揺れ動く「ジャズ」というとらえどころのないもの。

そんなうねりある音楽を俯瞰できる、面白い作品です。

【収録曲】
1. Street Walking Woman (feat. Geila Zilkha)
2. Afro Feet
3. Great American Melodies (feat. Naruyoshi Kikuchi)
4. Cherokee Introduction
5. Cherokee
6. The Stranger (feat. SHANTI)
7. MANTECA
8. Sakura Garden
9. On The Ridge
10. Interlude (アドリブコンテスト課題曲)
11. Sister Sadie
12. Discovery

Amazonの試聴部分の切り出し方がひどいので(特に6)日本コロムビアアルバム試聴サイト
  • 購入金額

    3,024円

  • 購入日

    2014年06月04日

  • 購入場所

    TOWER RECORDS

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