随分前にプレミアムレビューに登場したヘッドフォンですが、最近になって不良在庫の放出を行ったのか、一部店舗で未開封ながら新品保証なしの中古という扱いで売られるようになった製品です。
この製品の最大の特徴は、ハウジングの素材に黒檀を採用しているということです。ハウジングのデザインは、その黒檀の地模様をそのまま活かしたものとなっています。
この黒檀製のハウジングはなかなか格好良いのですが、それ以外の部分はむしろ安っぽいですね。ヘッドバンドは国産ブランドであれば4桁価格でもこれと同等以上の質感はありますし、ブランドロゴの金属部もすぐに白くかぶってきます。
そしてケーブルは一応着脱式なのですが、これが素晴らしく細いです。思わず音を出す前にリケーブル可能か仕様を調べたほどです。
添付ケーブルは3.5mmステレオミニプラグ-2.5mmモノラルミニミニプラグ×2という構成であり、例えばB&W P3辺りのケーブルと互換性がありそうですので、リケーブルも可能ではないかと思います。ただ、その類いのケーブルが、この製品よりも高く売られていることが多いだけに、実際にリケーブルするかは考えどころではあります。
黒檀ハウジングの良さが光る
それでは音質についてです。今回も取り敢えず以下の2つの環境で試聴しています。
まずは最近真っ先にこれで試すようになった、「Viva La Vida / David Garrett」(アルバム「Music」収録)から。
どちらの環境でも、ちょっとヴァイオリンの線が細いのが気になります。胴鳴りや弦の震えが感じ取れるようなリアリティーもありません。ただ、普通ならこのように線の細いヴァイオリンの音は、きつさを伴った不快な音となることが多いのですが、Ebony 70ではそのような不快感はありません。
次に「Chinatown / TOTO」(アルバム「TOTO XIV」収録)ですが、低域方向の量はあるものの、締まりがあまりなく、低音を垂れ流しているような印象を受ける一方、ヴォーカルやその他楽器の音色は結構良好です。この曲に関しては、比較的低域方向の量が少ないNW-A16の方が聴きやすさがありましたが、HP-A8接続時のヴォーカルの質感も捨てがたいものがあります。
「Now / Chicago」(アルバム「Now / Chicago」収録。音源は公式サイトで販売されている24bit/96kHzのハイレゾWAV)では、シカゴの特徴となるホーンの音色が、やや明るめの音となります。TOTOと比べるとベース帯域の音が少なめであるためか、低域方向もしまりが欲しいと思う部分はあるものの、それほど大きな不満とはなりません。この曲に関しては、HP-A8の方が全体の解像度が増す分だけ楽しめます。
こちらのカバー曲集の方に収録されている「ガーネット / 南條愛乃」を聴くと、少しヴォーカルがハスキー気味に感じられるのですが、全体的な雰囲気は良好です。例えばSENNHEISER HD650と比べれば空間の密度は薄く感じられますし、音場も狭くなるのですが、これはこれでまとまった音と評することが出来ます。
はっきり言ってしまえば、搭載しているドライバーの質は決して大したものではないでしょう。低域方向は解像度も締まりも全く足りません。しかし、比較的安価な製品にありがちな、ハウジングの素材による固有の響きや癖が感じられないせいか、ヴォーカルやアコースティック系の楽器の音色がなかなか心地良いのです。
発売当時の値段から判断すればどうかと思うのですが、今処分されている価格帯は3千円前後となっていますので、その程度で買えるオンイヤーヘッドフォンとしてはかなり高水準な音質と言ってしまって良いでしょう。
実は先日のeイヤホンの会員限定シークレットセールで大量に売られていたのですが、おそらく他にももう数店在庫を持っているショップがあるでしょう。手軽なヘッドフォンが一つ欲しいという方にはお薦めの一品です。
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購入金額
2,980円
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購入日
2016年11月15日
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購入場所
PCボンバー
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