以前は「内職」と呼ばれる例えば封筒の宛名書きのような「随時の指示命令を必要としない請負仕事」しか成立しなかった勤務だったが、ITの発達と働き方の多様性に対する世間の許容が進んだ結果、
・複数のメンバーと協働しつつ
・変化にリアルタイムに対応し
・一つのものを創り上げる
ということも可能になった。
ITの発達...以前は離れた場所で作業するチーム構成員が連絡を取り合えるのは電話やFAX、比較的最近になってメールが加わったくらいだった。いずれもリアルタイム性やもののイメージを伝える力など一長一短で決め手はなかったが、それが現在クラウド対応のオフィススイートによって大きく変わろうとしている。
今回、単なるオフィススイートの枠を超えたMicrosoftの「Office 365」、その魅力が語られたトークショー、「いつどこオフィス~あなたらしい働き方をしよう~」のイベントレポートを報告するとともに、そこで得られた「在宅勤務における働き方」の問題点解決方法や多様化する働き方での留意点を論じたい。イベントは2014年4月18日、22時より(実際の開始は22時15分から)Ustreamおよびニコニコ生放送を用いたストリーミング配信で行われた。ショーン・KことSean McArdle Kawakamiさんと石田紗英子さんの進行で番組は始まった。ショーンさんは経営コンサルタント、石田さんはフリーアナウンサー。ITを使った新しい働き方、ということで3つの場所、オフィス、自宅、それ以外での今までに無い働き方をディスカッションする、という趣向。他の出演者は、デジタルマーケティング支援の会社ネットイヤーグループの代表、石黒不二代さん、ワーキングマザーのキャリア支援を行うWarisの共同代表の田中美和さん、トリップアドバイザーのシニアマネージャー大津陽子さんに、日本マイクロソフトのプロダクトマネジャー鷲見研作さん。女性コメンテーター3名はいずれも何かとしがらみ(家庭、子供、配偶者の仕事の都合..など)に縛られることが多い女性の、新しい働き方を模索・実践している人達だ。ここで興味深かった話はは、ともに働いていた女性スタッフの配偶者がメキシコに転勤になったときの話。今までだったら、夫婦とも有職の場合、ついていく=一方が離職/仕事をともに続ける=ついていかないという選択しか無かったが、現在のIT技術を駆使すれば、これが解決できたという部分。日本で創った資料の残りをそのメキシコに行ったスタッフに投げておけば翌朝には仕上がった資料ができあがってきていると言うのだ。IT技術がひとつの夫婦の問題を解決し、企業にとっても有能な人材の流出防止をし、そればかりか業務稼働時間の延長による生産性の向上まで果たされたわけである。
そのほかにも、単なるメールのやりとりや以前の電話会議に比べて、テレビ会議では相手の顔、表情まで見えるので「どういう表情でその言葉を発しているのか」が会議進行に役立つ、とか、会議を活性化させる「会議進行のプロ」を遠隔地から参加させても良いのでは、というようなテレビ会議に関するディスカッションもあった。しかし、cybercatがいままで経験したテレビ会議は会議室に一つのカメラ、数個のマイクしかないものが多く、発言者の表情が読み取れないばかりか、「会議室」で待機している人員はその発言すら聴き取りづらいこともあったので、これに関してはもう少し高解像度・高音質のカムとマイクが、出席者全員に配備されると言うようなインフラの整備もなされないと難しいな、とも感じた。このような働き方とITのかかわりについては鷲見さんからOffice 365の概念図が示された。
それまで漠然と「Office 365は最新オフィススイートの使用権があるボリュームライセンスのクラウド版?」のようなとらえ方をしていたが実は、旧来の「Microsoft Office」に当たる部分は大きくはなく、電子メールやオンライン会議、ファイル共有、データ分析、プロジェクト管理など今まではそれぞれ別の専用のソフトが必要だった組織・会社に必要ないくつかのIT機能を統合したソリューションであるということが判った。番組内ではOffice 365の機能を用いた催しも行われた。
今回、視聴者は「Lync」を使って会議に参加できることになっていた。この「Lync」は非常におもしろい機能で、
・組織構成員のプレゼンス (在席・離席・取り込み中などの個人状態)情報表示
・他構成員への音声通話
・ビデオ会議機能
・画面共有
・ホワイトボード機能
などを提供する。番組内でも視聴者がリアルタイムに書き込みを行い、一部の視聴者は音声で参加した(生番組ゆえ不具合もあったが...)さらに、われわれZIGSOWのメンツは掲示板&ホワイトボード機能を用いて内輪でミーティング(という名の雑談だった様な気もするがw)を実施。このホワイトボードはその内容をOneNoteに上げたり、オンラインプレゼンテーションをしたりすることもできるので、 複数のチームがリアルタイムにチーム内打ち合わせをしながら討論していく、という用途にも使えそうなツールだった(例えば自動車のデザインを議論する会議で、遠隔地にある複数のデザインスタジオが、その会議上でマーケティング部門や製造現場など他部門から出た要望を聞いて、部内での打ち合わせや検討を並行で行いながら、出来上がったアイデアを会議に諮っていく、と言うような状況など)。また、番組内で何度か投票が行われたが、これらはすべてが事前に用意されたものではなく、その場でつくられた質問もあった。このことはこの機能を使えば、会議での議決時に投票の確認が瞬時に行えることを示しており、テレビ会議の使い方を向上させるモノと感じた(機能的に「記名投票」「無記名投票」ができるのかは不明)。さらにExcel Onlineを用いた一つのファイルの同時編集の世界記録挑戦も行われた。これはクラウド上にある一つのExcelファイルのシートに参加者が一斉に書き込んでいく、というモノだったが、説明を聞かずにフライングした人もいたからか(私?ゲフンゲフン)、思ったほどには伸びず57名同時編集までの確認にとどまった。ただ実際には57人が一斉に一つのファイルに書き込む、ということは現実的ではなく、数人が出来ればよいはずで、「複数の人間の同時書き込み」という通常の共有ドライブにファイルを置いてExcelで編集する場合にみられる排他制御とは異なる機能に可能性を感じた。先ほどのメキシコとの協働の例をひくまでもなく、Office 365のようなツールを使えば「時と場所を越える」ことは容易となる。これは最近多くなってきた「在宅勤務」という働き方にどう影響していくのだろうか。
「在宅勤務」というと、インターネット回線を用いて会社のサーバーにアクセスして書類は作成するが、自由な時間に仕事をして、休憩も好きな時間に取り、期限に間に合わせれば良い、という風に捉えている人もいるかもしれないが、それは前時代的な「内職」であり「封筒の宛名書き」と何ら変わらない。現在求められているのは、通勤時間の解消によるプライベートと仕事の両立だったり、会議のための移動に伴う経費や時間の解消による生産性の向上であり、「あたかもともに働いているような」ワーキングループの醸成だ。これには指示内容の変更や情報伝達時における比較的速いレスポンスが必要で、在宅勤務者といえどもその行き先を明示しておかなければならない。今回Office 365に備わった機能に、Lyncによるプレゼンス管理というものがある。これは「連絡可能」「取り込み中」「応答不可」などいくつかの状態が示されるというもの。これで構成員の状態を把握し、オフィスにいなくても(少なくとも自社内の隣のビルにいる程度のレベルでは)連携が可能、となる。現代の「在宅勤務」形態に必要な、在宅勤務者の動向を把握するというという会社(管理側)のメリットと離席する度に連絡を入れる必要がないという在宅勤務者側のメリットがバランスできる機能と感じた。以上のように単なるオフィスソフトだけでなく
・クラウド上に保存されるデータの協働編集が可能
・ビデオ会議機能やそれに連動したホワイトボード機能
・タスク管理やスケジュール管理
・メール機能
といった機能を備えたOffice 365はオフィススイートから高機能グループウエアに進化したというのが把握できたイベントだった。ただこれらの情報の大部分は鷲見さんのプレゼンテーションから得たもので、もう少し「それを使ってどう働くのが会社も従業員もWin-Winか」というところまで掘り下げられれば良かったとは思う。このOffice 365にからめたストリーミングイベントは2回目だが、次回があるなら機能の「スゴイところ」のカタログ的開陳ではなくて、そのあたりを実例を含めて深掘りして欲しいと感じた。
マイクロソフトイベント紹介ページ
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