以前はMC10系列の製品といえば、希望小売価格2~3万円クラスの入門機という位置付けだったのですが、MC Starシリーズになってからは最下位のMC-10Wですら希望小売価格54,600円という中級クラスの製品となってしまいましたので、なかなか手が出なかったのです。今回は丁度値上げ前のDENON DL-103Rと同等の価格で処分品を見つけたため、良い機会だと思って買ってきました。
早速使おうと思って困ったことがまず一つ。この製品はヘッドシェルの取り付け用ネジ穴がボディーを貫通していないため、ヘッドシェルの上側からネジを入れられるタイプのヘッドシェルでなければ組み合わせることが出来ません。つまり入手性が良く、コストパフォーマンスも高いオーディオテクニカ製のヘッドシェルは全く使えないのです。
また、今回はKENWOOD KP-9010で使うつもりだったのですが、MC-10Wは単体での自重が10.5gと比較的重めであるため、カートリッジ総重量24gまでしか対応していないKP-9010のアームで使えるヘッドシェルは約13gということになり、オルトフォン自身が発売するLH-2000(15g)も使うことが出来ません。
手持ちのヘッドシェルで余っているものはオーディオテクニカ製以外に無かったため、仕方なく他のカートリッジと組み合わせていたオルトフォンの旧製品であるLH-1000を利用しました。LH-1000は構造的にはLH-2000に近いのですが、やや小型化されていて重量も12gに収まっているのです。ただ、取り付けスペース的にはかなり厳しいため、リード線は細くて取り回しが良さそうなMC-10W添付品と交換しました。
いくつかのレコードを再生して、他のカートリッジと比較してみました。プレイヤーは前述の通りKENWOOD KP-9010、比較対象はaudio-technica AT33RとDENON DL-103Rです。
どのソースを鳴らしても基本的な傾向は
・明るく派手なDL-103R
・強調感がなくニュートラルなAT33R
・ヨーロッパ的に低~中域がたっぷりとしたMC-10W
という性格が表れます。MC-10Wは針先がムク楕円なのですが、丸針のDL-103Rよりは高域方向は細かく、マイクロリニア針のAT33Rよりはやや粗くなり、ある意味理論通りの結果となっています。
洋楽のロックでは、曲によって好みが分かれるところではありますが、解像感の高さが似合うソースはAT33Rが、落ち着きのあるムードが好ましい楽曲はMC-10Wがしっくりときました。DL103Rは単体で聴いている分には悪くないのですが、並べて比較試聴すると常につきまとう派手さが気になってくることがあります。また、丸針の限界か高域方向やヴォーカルのサ行はどうしても濁りが気になります。
以前から聞いていた評判では、MC Starシリーズは抜けが良くキレも良いということだったのですが、そのような要素であればAT33Rの方が数段上でしょう。むしろ昔から(MMの製品で)聴き慣れていたオルトフォンサウンドに、ある程度の解像感や透明感が加わり、少々現代的な音になったという印象です。あらゆるレコードをHi-Fiサウンドで聴かせてくれるAT33Rと比べればソースは選びますが、相性の良いソースに上手くはまってくれるとAT33R以上の魅力を持った音を聴かせてくれます。恐らく針先が良くなる上位のMC-30Wなどでは、もう少し万能な方向に傾くのではないかと思いますが。
もっとも、個人的にAT33Rはかなり気に入っている製品ではあるのですが、多くの人がレコードの音に求めているのは、むしろMC-10Wの傾向の音ではないかと思うのです。AT33Rはデジタルソースと真っ向から張り合うような部分があり、レコードらしさに欠けるきらいがありますから。
元々の5万円前後という価格を考えれば、これくらいの音が出てくれなければ困るという水準ではあるのですが、2万円程度で買えたということを考えれば文句のないハイコストパフォーマンスといって良いでしょう。もう少し懐に余裕があれば、39,800円だったMC-30Wの方を買ってみたかったところです。
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購入金額
21,800円
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購入日
2014年03月05日
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購入場所
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