最近はDAPとしてはAstell&Kern AK100とSONY WALKMAN NW-A16の二本立てで楽しんでいたのですが、少し思うところがあってWALKMANのZXシリーズの何かを買ってみようと考えていました。
というのも、最近ではヘッドフォン・イヤフォンの試聴が可能な販売店が増えてきていて、それ自体は喜ばしいことなのですが、再生環境がそれぞれ異なりすぎてあまり参考にはならず、必然的に自分の持参したプレイヤーで聴くことが多くなります。
その時に特にヘッドフォンについては、この2機種ではとても駆動しきれないものがあまりに多いのです。さすがにポータブルアンプを普段から持ち歩いているわけではありませんので、プレイヤー単体でもう少し駆動能力が高いものと考えたときに頭に浮かんだのがWALKMANのZXシリーズだったというわけです。もちろん予算無制限であれば他にいくらでも良い製品はあると思うのですが…。
NW-ZX1、NW-ZX2についてはMDR-1R/MDR-1A辺りを試聴用として使っていることが多く、その状態ではそれなりには鳴らせていたという印象がありましたので、とりあえずは何とかなるかという感覚です。
中古品ですが、付属品は特に欠品しているものはなく、少々くたびれているキャリングケース以外は比較的綺麗な状態です。
購買層を意識してのことなのか、今時珍しいぐらいの紙媒体でのマニュアル類です。
良くも悪くもソニーらしい音
はっきり言ってしまえば、この類の製品に必要なのは音質だけです。個人的にはAndroidの余計なアプリケーションは最初からなくても良いのではと感じます。
それはともかく、音質についてです。今回は3種類のヘッドフォン・イヤフォンを用意しました。
まずはこれまでDAPできちんと鳴ったことはないと思えるHD650です。
高域方向での緻密さは素晴らしいものがありますし、響きや倍音の豊かさなどはこれまでのDAPの枠には収まらないような次元です。しかしこの曲を聴いたときにすぐにボロが出ます。
皮肉にも、以前ハイレゾウォークマンの購入キャンペーンでいただいた、「Get Lucky / Daft Punk feat. Pharrell Williams」です。この曲は分厚くてもキレのあるベースと、無機質でスパッと切れるようなハイハットの音に特徴があるのですが、NW-ZX1ではベースの力感が消え失せ、ハイハットも明らかに切れが悪くなります。ハイハットの音についてはNW-A16の方がまだ優秀です。
そこで今度はヘッドフォンをMDR-1Rに替えてみます。すると高域方向は幾分キレが増します。ベースの躍動感はいくらか出て来ますが、分厚さや力感はまだまだです。そこでアンプの駆動能力的には問題が出ないであろう、ATH-IM02に替えてみます。
何とATH-IM02でも基本的な傾向は全く変わりません。高域方向はATH-IM02のじゃじゃ馬感が良い具合に弱点を補い、なかなか心地良いバランスとなるのですが、低域方向は全く変わらないのです。つまりHD650であっても鳴らせていないわけではなく、このウォークマンがこのような音しか出せないだけということになります。
以前NW-Z1060のレビューでも少し触れたのですが、いかにもソニーらしい弱点が見えます。
音の細部にはこれでもかというほどのこだわりをみせる一方で、音楽の楽しさという部分をどこかに置き忘れているのです。高域方向の緻密さや倍音の表現などから、かなりのこだわりを感じるのは事実ですが、その一方で元々は熱気溢れる演奏だったはずのソースを聴いても無機質にしか鳴らないものがあります。
例えば名手ジェフ・ポーカロのグルーブ感を存分に楽しめる筈のこのアルバムを聴いていても、ごく普通のドラマーが叩いているような印象を受けてしまうのです。過去にもソニーのオーディオ製品では何度となくこのようなことがありましたが…。
NW-A16がそのような点ではむしろ意外なほど優秀だっただけに、どうしても本来音質的に優位であって当然のNW-ZX1に感じる不満は大きくなってしまいます。決して手抜きで作られているわけではなく、むしろ開発時にはこだわり抜いたであろうことが伺える出来であるだけに、何とも勿体なく感じられます。
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購入金額
27,500円
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購入日
2015年12月13日
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購入場所
eイヤホン
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