今まで外観がそっくりで、機能的にもほぼ同等という偽IE80は持っていたものの、本家SENNHEISER製のIE80は持っていませんでした。その状態でIE80用のリケーブルを5種類持っているのは自分でもどうかと思いますが…。一部ケーブルは偽IE80と組み合わせた際のレビューは掲載していますので、そちらもよろしければご覧ください。
SENNHEISERからはIE80の後継モデルとなるIE80 Sがリリースされ、オリジナルのIE80は生産完了となりました。そのため市場価格が下がったのか、割合手頃なものを見つけたので買ってみることにしました。
外箱以外の欠品は特にない状態で届きました。国内代理店が添付している保証書と日本語の説明書がありましたので、国内正規版だったようです。
写真は出荷時に装着されている(らしい)シリコンのMサイズイヤーピースを装着していますが、この後の試聴はSサイズに付け替えて行っています。IE80にはいろいろな形状のイヤーピースが付いてきますので、イヤーピースによる音質チューニングの幅はかなり広くなっています。お好みで付け替えれば、どれかは合いそうです。
率直に言うと古さは隠せていない
IE80はヘッドフォンのHD650と共に長期にわたって生産され、長い間このクラスの定番製品として親しまれてきました。
しかし、IE80はIE80 Sに、HD650はHD660 Sに、それぞれモデルチェンジが行われました。しかしながら、IE80 Sの発売と同時にIE80は生産完了となったのに対して、HD650はHD660 Sとしばらくの間は併売される形となっています。
これはIE80がIE80 Sに対して明らかに劣っているのに対して、HD650はHD660 Sと比較しても別の魅力を持ち合わせていることが関係していると考えられます。私自身3万円以上の価格帯のイヤフォンを多く使うようになってくると、かつては鉄板の選択と言われたIE80の音がどうしても古さを感じさせるように思えてきてしまったのです。
当初は純正ケーブルで試聴を開始したのですが、明らかに解像度が低く情報量も足りないと思い、ケーブルをZEPHONE Silver Dragon MKIIへと交換した上で試聴を続けました。DAPにはAstell&Kern AK70を使いました。IE80が備える低音調節ダイヤルは低音を最小としています。
ZEPHONE Silver Dragon MKIIは偽IE80と組み合わせると別物のように高域方向の質と量が改善して、全域にわたって密度が濃くなる傾向が見られましたので、純正ケーブルの弱点を補うには丁度良いと判断したのです。
この状態で聴くと、価格なりと感じられる程度の音は出てくるようになりました。逆に言えば、純正ケーブルでは残念ながら価格に見合ったとは言い難い程度だったということです。
例えば「Viva la Vida / David Garrett」を聴くとヴァイオリンの音色は今でも十分に通用するレベルなのですが、空間が周波数帯域が上がるに従って狭まっていくような、妙な感触を覚えます。ベースラインはやや緩く広がっているのですが、高域方向が頭の中の狭い範囲で固まって聞こえてしまうのです。周波数バランスがピラミッド型なのは理解できるのですが、空間までピラミッド型に展開されてしまうのはちょっといただけません。
ロックの古典「Hotel California / Eagles」のような音自体が古い曲はこのイヤフォンによくマッチするのですが、ベースの量は十分なものの締まりは足りません。さすがにヴォーカルやアコースティックギターの音色は偽IE80を確実に上回ってはいるのですが…。
同じロック系でも録音が新しい「Now / Chicago」では高域方向の解像度と密度が不足気味ですし、何といってもホーンの音色が全くダメです。この辺りは以前試聴したIE80 Sではある程度改善されている部分であり、この製品が古さを感じさせる大きな要因となっています。
全体的にはややウォーム系でベースの辺りの帯域が豊かという特徴から、「HD650のイヤフォン版」と評する人がいることも理解は出来ます。しかし今なお唯一無二と感じられる魅力を持ち続けるHD650と比べてしまうと、IE80は「時代遅れ」と感じられます。誤解を恐れずにいってしまえば、同じダイナミックドライバーを採用するイヤフォンであれば、Acoustic Research AR-E100を買ってリケーブルした方が、音質的な満足感は上です。しかも、IE80も約1万円のリケーブル(Silver Dragon MKIIは約1万円のケーブル)を行った状態での評価なのです。
勿論、この製品も発売当初は同価格帯の製品をリードする存在でした。しかし、3~5万円のイヤフォンは有力メーカーがしのぎを削る価格帯(低価格帯を得意とするメーカーの上位モデルと、ハイエンドメーカーの入門機が丁度この辺りに展開されることが多い)であり、次々と優れた製品が投入された結果、IE80の魅力はかすんでしまっています。
仮に今でも1.5万円前後クラスに投入されているのであれば十分に通用するだけの実力は持ち合わせた製品です。しかし、実際の価格では残念ながら競争力はあまり持ち合わせていないといえます。その意味で、モデルチェンジは必然だったということでしょう。
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購入金額
10,800円
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購入日
2018年06月03日
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購入場所
HARD OFF
harmankardonさん
2018/07/19
確かに,ウォームで解像度はありませんが,音作りが上手いですよね.
ただ,今,IE80を買うかといえば,別の選択をします.
jive9821さん
2018/07/19
以前はもう少し印象が良かったのですが、最近入手したイヤフォン達と聴き比べてしまうと、これで実売価格3万円台はちょっと厳しいな、という印象です。
確かにHD650に通じる傾向はありますし、MOMENTUMなど最近のモデルと比べればまとめ方は巧いと思うのですが、今となっては敢えてこれを選ぶ理由は無いかなと感じました。
もっとも、後継のIE80 Sも順当に進化はしているのですが、他と比べてしまうと魅力はちょっと弱いかと感じますし、このクラスのライバルがそれだけ進歩したということかも知れません。