所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。コンピレーションアルバム。いくつかの作品からテーマを持ってあつめられた作品が並ぶアルバムをこう呼ぶことがあります。曲には相性やジャンルがありますので、テーマが明確でない場合、単に名曲をつぎはぎしているだけで統一性がとれていない事になりかねません。あるイベントをきっかけに編まれた各曲の出典元が四半世紀以上離れているアルバムをご紹介します。
フュージョン、といい、クロスオーバーという。インスト中心の、でも4ビートではなく、8ビートと16ビートが中心で、テクニックに重きをおいた楽曲群。当初ジャズとロックの間にあるということで、まんまジャズロックと呼ばれたが、その後ジャズからロックへ、ロックからジャズへ越境している音楽という意味で「クロスオーパー」と名付けられた。さらにその後クロスオーバーはラテンやブラジルのリズムも取り込んで単なる越境ではなく複数のジャンルが融合するようになり、いつしかフュージョン(融合)と呼ばれるようになった(日本においてはT-SQUAREなどのロック基調のインスト曲が中心となり、他国のフュージョンシーンとはかなり違う独自の「フュージョン」ジャンルとなったが)。
日本におけるこの分野のピークは1980年前後。CASIOPEAにTHE SQUARE、NANIWA EXPRESSなど良質の楽曲とテクニックを併せ持つグループが覇を競い、大いに盛り上がった。
しかしその後、世界のフュージョンシーンはより洗練されたスムーズジャズと王道の4ビートジャズへの回帰が起こり衰退し、日本ではロック色が強まった独特の「ジャパニーズフュージョン」に狭隘化し、このブームは終わる。
そのブームが過ぎ去った後の2003年「CROSSOVER JAPAN」と銘打ったフュージョン/クロスオーバー系のジョイントライヴが企画された。これは往年のファンから拍手を持って迎えられ、その後2005年
迄続くが3回で終了。
そして7年の時を経た2012年、突然「CROSSOVER JAPAN」直系とでも言うべきライヴが企画された。「LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT」。
出演者は
・オープニングアクト:川口千里 featuring 山本恭司
(川口千里/Drums、山本恭司/Guitar、種村章/Guitar、岩脇輝之/Bass、吉田まゆみ/Keyboards、CHIHIROCK/Violin)
・CASIOPEA 3rd(野呂一生/Guitar、鳴瀬喜博/Bass、大高清美/Keyboards)
・PARACHUTE(安藤芳彦/Keyboards、井上鑑/Keyboards、今剛/Guitar、斉藤ノヴ/Percussion、林立夫/Drums、Mike Dunn/Bass、松原正樹/Guitar)
・渡辺香津美 ART FUSION(渡辺香津美/Guitar、Janek Gwizdala/Bass、Horacio"El Negro"Hernandez/Drums)
・鈴木 茂(鈴木茂/Vocal・Guitar、田中章弘/Bass、Dr.KyOn/Keyboards、柴田俊文/Keyboards、坂田学/Drums)
・NANIWA EXP(清水興/Bass、岩見和彦/Guitar、中村建治/Keyboards、青柳誠/Keybords・Sax、平陸/support Drums)
・高中正義 SUPER BAND(高中正義/Guitar、斉藤ノヴ/Purcussion、岡沢章/Bass、宮崎まさひろ/Drums、小島良喜/Keyboards、重実徹/Keyboards、稲葉なるひ/Guitar)
と、当時デビュー前だった川口千里ちゃん
を除けば、往年のスタープレーヤー達目白押し。2012年12月29日と年末に催されたこのライヴは東京国際フォーラムを当時フュージョン小僧だったオサーン、オ○サンで埋め尽くしたというww
29日まで仕事で、次の日に別バンドのレアライヴ
を控え、発熱もしていたねこは涙を呑んで参加断念したが、それはそれ。
このアルバムはそのライヴに先駆けて発売された、出演者を中心とするコンピレーションアルバム。一番新しいのはその年に休止状態から再起動したCASIOPEAの新メンバーによる新録曲だし、一番古いのは鈴木茂の名盤“BAND WAGON”に含まれる1975年の作品、というのだから40年近い差があるのだが、最も輝いていた「フュージョン/クロスオーバー」の時代の曲中心、ということで各曲プレイヤーの特徴を備えていながら統一感がある。
まず、その時点で唯一のスタジオ音源であった再始動直後のCASIOPEA 3rdの人気曲「FIGHT MAN (2012ver.)」。これは新メンバー大高清美のオルガンに尽きる。オルガン、というどちらかと言えばローテクな楽器なのだが、COOLな肌触り。ソロ回しもパーカッシヴなチョッパー風奏法やカッティングソロで背攻める野呂一生に、複数弦弾きでガンガン来るナルチョ(鳴瀬喜博)、カウベルを含めたタイトなフュージョン王道リズムで来る神保彰に対して、ゴージャスな大高のグリスが存在感あり!
「READY TO FLY」は高中正義の懐かしの曲。一般的には「BLUE LAGOON」の方が有名だが、複数のギターがスケールを駆け上がるような爽快なこの曲も彼の初期の代表曲。「たけや~さおだけ」のボコーダーのかけ声ではじまるライヴアレンジの方がむしろ聴き慣れた様な感じだが、1977年のこのオリジナルアレンジはボイパの合唱にサンバリズムのバスドラが割り込み、イントロがはじまる。軽やかなサックスがイイ感じだ。
実際のライヴには出演しなかった野呂のソロプロジェクト、ISSEI NORO INSPIRITSの「EMBRACE THE MOON」。CASIOPEAの時にはあまり使わないよう太くディストーションが効いた音で野呂のギターが歌い上げるバラード。扇谷研人のピアノの壮大なバックとコード主体のソロがCASIOPEAとは違う感じ。
ライヴの先行CDとすると、出演がなかったISSEI NORO INSPIRITSとPYRAMID(鳥山雄司、神保彰、和泉宏隆によるフュージョンユニット)が収録される一方、オープニングアクトの千里ちゃんプロジェクトはともかく、PARACHUTEの曲がなくて片手落ちだけれど(どうも直前に出演が決まったらしい)、「アノ頃」を思い返すには充分な選曲。
惜しむらくは、このときのライヴには、フュージョンブーム時CASIOPEAと人気を二分した当時の2大フュージョンバンドの片割れ「THE SQUARE」が入っていない。彼らを加えて、また同じような企画をやってくれないかなぁ..と思いつつも、今年(2013年)はなさそうorz(昨年は10月にはチケット発売された)。
実はこのライヴ本番では、NANIWA EXPRESSの怪獣こと東原力哉が痛風で欠場した(天才高校生ドラマー平陸が代打)。ブーム時に、CF曲を起爆剤に人気を集めたNATIVE SONの本田竹広や、ラテン系フュージョンで独特の味のあったカリオカの中谷望など、既に鬼籍に入ったメンツも出始めた。このジャンルの最大ピークから既に30年、あんまり時間が残されていないな、と。
なによりこっちが、待ちきれませんがなwwww
【収録曲】
1. FIGHT MAN (2012ver.) / CASIOPEA 3rd
2. GOLDEN WAVES (2012ver.) / CASIOPEA 3rd
3. スノー・エキスプレス / 鈴木 茂
4. 砂の女 / 鈴木 茂
5. Vacuum Vox / NANIWA EXP
6. 1.2.3. / NANIWA EXP
7. Tiger Beam / 渡辺香津美
8. Metabolism / 渡辺香津美
9. BLUE LAGOON / 高中正義
10. READY TO FLY / 高中正義
11. HIGH - FIVE / ISSEI NORO INSPIRITS
12. EMBRACE THE MOON / ISSEI NORO INSPIRITS
13. Ray Of Hope / PYRAMID
14. Fly Over The Horizon / PYRAMID
「READY TO FLY」
ただのコンピなので、熱心なフュージョンファンならほぼ持っている
強いて言うなら、CASIOPEA 3rdの「2012ver.」2曲は、物理CDとしては本品だけ(本来、配信シングル曲)。
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購入金額
2,800円
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購入日
2013年10月06日
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購入場所
山野楽器
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