レビューメディア「ジグソー」

彼等の力を持ってしてもオリジナルのパワーは上回れない

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。「出稼ぎ盤」。バブル期を起点にその後もしばらく続いた有名プレイヤーを招聘して国内外の有名な曲を焼き直した企画盤です。そんな中には原曲の良さに凄腕プレイヤーのテクニックと感性が上乗せされて、元曲以上の、あるいは元曲とは別方向の魅力に溢れている盤も少なくありません。しかし、改めてオリジナルアーティストの傑出さが感じられる場合もあります。そんな残念な?作品をご紹介します。

JAZZ EXPRESS。以前The Rolling Stonesを取り上げた盤

を紹介したが、海外有名ミュージシャンに万人受けするスタンダードを演らせて売っちまおう、というコンセプトのアルバムのために?集められたバンド。ストーンズのころからメンツは変わり、キーボードはNeil Larsen、フルートとサックスはMicheal Pauloのままだが、ドラムスがHarvey Mason、ベースがNathan Eastという布陣になった。フュージョンテイストの濃いAORをやったLARSEN|FEITEN BAND

を中心とした前回のラインアップに比べると、その片割れ、ロックな方向に引っ張っていたBuzzyが欠けている。

今回取り上げたのはQueen。伝説の...ではあるが現役のバンドでもある。元々ヴォーカルFreddie Mercury、ギターBrian May、ドラムスRoger Taylor、ベースJohn Deaconの4人によるブリティッシュロックバンドで、まだデジタルダビングなどない時代にコーラスの多重録音とギターのオーバーダビングでギターオーケストレーションとも言われる当時のロックにしては厚い音の音作りと、傑出した声のパワーを持つFreddieのヴォーカルによって名声を博した。現在Freddieが死去、Johnが引退と、残るはBrianとRogerのみだが、新メンバーを迎えいれるでなく、ふたりでQueenを名乗り、活動時には「Queen+××(××はゲストヴォーカリストの名)」 の名称を使用する。活動のピークは1970年代から1980年代の初期で、数々のヒットを飛ばした。そのあと若干の停滞を経て1991年最後の作品を出した直後にFreddieがHIVの合併症で死去。その後も残存メンバーがゲストヴォーカリストを加えて活動をしているが、さすがにかつての輝きはない。

本作は日本でも人気が高かったQueenの曲を凄腕フュージョン系ミュージシャンが演奏したインストアルバム。曲としてはFreddie存命時の有名どころが並ぶが、3rdアルバム“Sheer Heart Attack”からFreddie存命時のラストアルバム“Innuendo”まで、曲の作者もFreddie中心とはなるが他の3人の作品も広く収められた。

しかしその分やや統一感に欠けた仕上がりだ。

初っ端の「Bohemian Rhapsody」は元曲はFreddieの美しい声とピアノ中心に盛り上げるロッカバラードである前半~BrianのRed Special(Brianのハンドメイドギター)が唸る中間部~メンバーのオペラ調のコーラスでシンフォニックな展開部~ロックバラードに戻って終焉、とドラマチックな構成の組曲風のものだが...う~んカ・ル・イorz。Nathan+Harveyの跳ねるリズムにMichealの流れるサックス、Neilのエレピ風音のジャジィに崩したソロ、とかっこいい...かっこいいんだけど..ね。あのドラマチックさはかけらもなく(展開部などは省略されているし)エネルギーを感じないんだよね。

「Killer Queen」もシンドラなどを使ってカルイアレンジだが「Bohemian Rhapsody」ほどの違和感はない。ただ、ギターレスって言うのが致命的で、シンセソロに置き換えられているが、元曲のダビングによって重ねられたギターのガツンとした濃い味はない。音色としては悪くないんだけれど、あまり加工されていないRed Specialのダビングによるひとりオーケストラの存在感にはかなわない。

「I Want To Break Free」はソコソコのできだが、元曲自体がJohnの曲でややポップで正統派の曲のつくり、インスト化してもあまり破綻がないものだから。元曲より遙かにハネたリズムにギター風サウンドでメロディがとられる。ただこの曲は女装したメンバーによるキョーレツなQueenのPVを知っているので眉毛のこゆいFreddieメイドの印象を覆すほどではないけど。

良く聴くとサスガのメンツで結構キラリと光るプレイやフレーズが各所にあるンだけど、QueenにはFreddieの声の存在感と唯一無二なRed Specialの音の説得力にはアクとコクがあって、それが渾然一体になって良質なスープになっていた。それがないこの作品は耳に心地よいBGMに過ぎない感じもあって...

JAZZ EXPRESSとしてはQueenを手がけるにはBuzzyが欠けたのがキツかった、と思います。
曲はイイところおさえてンだけどねぇ...
曲はイイところおさえてンだけどねぇ...
【収録曲】
1. Bohemian Rhapsody
2. Killer Queen
3. The Show Must Go On
4. Crazy Little Thing Called Love(愛という名の欲望)
5. I Want to Break Free(自由への旅立ち)
6. Radio Ga Ga
7. Under Pressure
8. We Are the Champions(伝説のチャンピオン)

iTunes 作品紹介ページ
  • 購入金額

    2,800円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

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