レビューメディア「ジグソー」

クロスオーバーから歌モノフュージョンと前衛ジャズに。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメントです。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な想いです。アーティストのなかのジャンルの引き出し、というのは一つとは限りません。ロックのスターがアイドル曲を作ったり、クラシックのソリストがアニメソングで演奏したり...いつもの自分とちょっと違う、というのはアーティストにとっても新鮮で刺激になるのでしょう、この手の活動は良くあります。しかし、それを自身のひとつのアルバムで実現してしまうほど幅広い音楽性をもったアーティストがいます。そんなアーティストの作品をご紹介します。

99.99(フォーナイン)は1980年ごろ近畿地方を中心に一大ムーブメントとなっていた「上方フュージョン」のグループのひとつ...というかユニットのひとつ。プログレバンドAin Soph(アイン・ソフ) にいたキーボーディスト、服部ませい(眞誠)を中心としたフュージョンユニット。上モノ系(ませい本人のキーボードとギター2本)は共通だが、複数のリズムセクションを使い分けたのでバンド、というよりユニット。

1st

は、いわゆる「ジャパニーズフュージョン」ではなく、WEATHER REPORT系のサウンドにプログレチックな構成、ヴォーカル(コーラス)が入る曲は女声ヴォーカル(キム・スージー(Suzi Kim))だけにShakatak(シャカタク)っぽさもあるインテリ系?フュージョンだった←ナンジャソレ。このときのメンツはキーボードは当然ませいでギターはツインで谷口義則と成田しのぶという共通メンツに、キムのヴォーカルが入る曲ではエディ細木のベースにドラムスは“手数王”菅沼孝三(Aグループ)、インストモノはベースも弾けるヴァイオリニスト横川理彦に上方フュージョンの雄、NANIWA EXPRESS

から怪獣東原力哉がドラムを叩いた(Bグループ)。

2ndではキムの女声ヴォーカルからヴォーカリストが中林憲昭になると同時に、 手数王が抜け、エディ細木こと細木隆広のベースと組むのは今でも活躍するジャズドラマー大曽学(大曾学)。このユニットが新設ユニット「Type C」。そして前作ではヴァイオリンを弾いた横川が1曲のみベースで参加し、力哉のドラムスが絡む元「Bグループ」はなぜだか紛らわしく「Type A」と改称、パーマネントベーシストとしてType C同様細木が加わった。結果として1stほど2つのユニットの人員構成の差は大きくなく、ヴォーカルのあるなしとドラマーが異なるだけの差異となった。

しかし、曲調としてはヴォーカルが入る「Type C」が、キムのShakatak風に軽く絡むフュージョンタッチのアプローチから、中村のガッツリ歌うソウルくさいヴォーカルとなってポップ度が増した結果、1stの2ユニットのうちやや難解なジャズ~プログレ系アプローチを担当していた「Type A」との違いが大きくなり、さらにカオスな状態に。

「ZIG ZAG ZONE」。細木隆広のグルーヴィなスラップベースに大曽学のカッチリとしたリズム、英詩で通す中林憲昭のソウルテイストあるヴォーカルが乗る。なんか竹田和夫の率いるクリエイションな感じもするちょっとブルージィなジャパニーズロック。途中のませいのソロだけはKORGの名機Mono/Polyの「あの音」でプログレチックだけど。

「IN THE HEART OF MY HEART IN」はクリーンな音のギターのカッティングとリズムマシンのハンドクラップ音が明るい、初期のSHŌGUN

のようなフュージョンタッチのJ-POP。ベースパターンもオクターブ奏法の定番な感じでポップだ。そのわりにはベースやドラムのソロもあるところが、ちょっとフュージョン?

後半(リリース当初のアナログ盤ではA面ラスト~B面)に行くと演奏がType Aに代わり、曲調がガラッと変わる。フリージャズ+プログレという感じでいわゆる「ポップさ」はかけらもない。「RAPID EYE DANCE」は当初力哉らしくないカチッとした縦ノリのリズムのコーラス付き(メンバーによる)のプログレで始まったかと思えば、途中で一転、フリーリズムの前衛ジャズに!ませいの弾きまくりのピアノソロ、それに瞬時に反応するメンバーの応酬...そんな攻撃的なソロのあとはまたコーラスに戻って変拍子風縦ノリプログレに...

前半のポップさと後半の難解さの落差がもはやエンジェルフォール(世界一の落差(979 m)の滝)。言い方よく言えば1stでの楽曲のバリエーションの幅をさらに広げた、ともいえるんだけど、どう見ても(聴いても)もはや別のバンドの曲。

カオスな魅力というよりは、分裂気味。ここに納められたのは服部ませいという幅の広いアーティストの「A面/B面」なのかもしれないけれど、対象リスナーが絞りきれなかったのか、99.99はこの2ndで幕を閉じる。

プレイヤーまたはクリエイターとしての服部ませいをまるごと好きであれば、そして彼の作り出す音世界をどんなものでも受け入れる度量があれば楽しめるが、J-POPとプログレが、ブルージィなロックとフリージャズが一緒の名前で一枚のアルバムに出ています、というのは一般的にはウケるとは思えず、難しい立ち位置だったのだと思います。
アナログ盤の装丁そのままなので、曲名記述部分はSIDE ONE/TWO表示が。
アナログ盤の装丁そのままなので、曲名記述部分はSIDE ONE/TWO表示が。
【収録曲】
1. GINZA de アイマショ
2. ZIG ZAG ZONE
3. FUNKY PONKY DONKEY MONKEY
4. IN THE HEART OF MY HEART IN
5. ARTAUD LUNAIRE
6. FROM JUNGLE BANANA WITH LOVE(恋のジャングル・バナナ)
7. RAPID EYE DANCE
8. SLEASE WORKER
9. THE SENCE OF CANARY

99.99
Type A(1stでのBグループ)(5~9)
 服部ませい (Key)
 谷口義則 (G)
 成田しのぶ (G)
 細木隆広(エディ細木) (B))(「RAPID EYE DANCE」除く)
 横川理彦 (B)(「RAPID EYE DANCE」のみ)
 東原力哉 (Dr)

Type C(1~4)
 服部ませい (Key)
 谷口義則 (G)
 成田しのぶ (G)
 細木隆広(エディ細木) (B)
 大曽学 (Dr)
 中林憲昭 (Vo)
  • 購入金額

    2,200円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

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