所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストのイメージに「季節」が紐付いている場合があります。スキー用品店のCFソングを複数回歌うことですっかりスキー場でも曲が流され冬のイメージをまとった女声ヴォーカリスト、湘南出身で夏の恋や水着の情景を歌ったことで夏のイメージが色濃いグループ...そんななか歌詞によらず曲調のみで夏を現するギタリストがいます。そんな彼の濃い夏の作品をご紹介します。
高中正義。フュージョンブームの前夜、クロスオーバーと言うよりインストロックといった感じのジャンルで活躍したギタリスト。彼の曲、イメージ、プレイすべて夏って感じのものが多い。それも夏と言っても夏祭り/浴衣/花火...と言うものではなく「南国の島」、とくに初期の曲は「憧れのセーシェル諸島」に代表されるように、南の海の島でのバカンスを表現したかのようなものが多かった。そしてその「夏」を軸に据えたような作風は今も続いている。
ただ1970年代初頭から活動、ソロアルバムを出してからでも芸歴35年を超えるので、夏と言っても一本調子ではなく時期によって少しブレがある。本作は1989年の作で、彼の芸歴では中期。名アルバム“虹伝説”
のあと、レコード会社を移籍して、ややビートの効いた系に曲調を変える。
相変わらず「夏」だが、南国の爽やか系の夏というより、マイアミの灼熱(←イメージ)。のどかなヴァケーションと言うより、夏の酒場の熱狂の踊り(←だからイメージだってばよ)。
「The Party's Just Begun」。明らかに曲名と解る生ブラスのライン(パー・ティ・ジャス・ビ・ガンと聴こえるw)ではじまるダンスチューン。打ち込みの硬いリズムに乗せてイケイケの夏!のメロディで高中のギターが唸る。サビではやっぱりイントロのラインにのせて女声コーラスで♪The Party's Just Begun♪と歌われ一気に洋楽に。
「Tell It Like It Is」は、エレアコと美しくつぶれた(←ヘン?w)ディストーションギターで彩られるソウルナンバー。このアルバム自体がMiami Sound MachineのEmilio Estefan, Jr.を共同プロデューサーに迎えたモノだが、Jon Secadaのソウルフルなヴォーカルが沁みる(彼はMiami Sound MachineのGloria EstefanのバックコーラスでデビューのMiami Sound Machineファミリー)。泣きの高中のソロは彼らしいスケールを分解し上下する名演「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」でのソロにも通じるモノ。
「Mesa Boogie」は彼愛用のギターアンプ、MESA/Boogieの名を冠したハッピーなブギ。ピッキングハーモニクスを強調した比較的クリーンな音と、良くオーヴァードライヴが効いた音で、掛け合いのようにソロが取られる。このギターアンプの幅広い対応力を示していて、さすがBoogie使い!
この作品はこの前年共演を果たし、そのサウンドを極めるために彼等の根城でもあるマイアミに高中の活動拠点を移させるほど影響を受けたMiami Sound Machineとの交流と、当時のレコード会社(東芝EMI)の踊れる系を欲した方針ともあいまって、アツイ夏の夜を過ごすに適したHOTな作品になっている。
いまはまたウクレレでのセルフカバーなど「南国の島」系に戻っている彼の方向だが、こんな濃くて暑い夜を感じさせる作品も出していた。
彼の芸風?の全体を通してみると、やや異端の方向性だけれど、高中に期待するところを偏狭に絞らなければ、これはこれで濃厚な味わいがある作品です。これからの季節に!
【収録曲】
1. The Party's Just Begun
2. Tell It Like It Is
3. Out Of Touch
4. Mesa Boogie
5. Colada
6. Give It Up
7. City Is A Jungle
8. Say Scratch
9. So Excited
10. Suite "Keys"
11. City Is A Jungle(Extended Club Mix)
「The Party's Just Begun」
夏男の面目躍如
音だけで夏を語れるギタリストは多くない
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購入金額
3,008円
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購入日
1989年頃
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購入場所
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