レビューメディア「ジグソー」

結成35周年を飾る、温故知新的な?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い歴史を持つバンドというものは、その時々の構成メンバーの志向や嗜好、技量、さらには世の中のブームや技術の進歩などにも影響されて、音楽的に変遷を受けていきます。そんな老舗バンドが懐かしいメンバーのサポートも仰ぎながら作り上げた節目の作品をご紹介します。

T-SQUARE。改名前のTHE SQUAREの時代から数えると今年(2013年)35周年を迎えた老舗フュージョンバンド。長い歴史の中ではメンバー変遷も多く、最大ツインギター+ツインキーボード(うちひとりはサポートメンバー)、サックスにベースとドラムス、パーカッションまで入れた大所帯だったころもあれば、ギターとサックスのみのユニットプロジェクトだったこともある。方向性的にもイージーリスニング的薫りを持つ軽めのクロスオーバーから、ラテン的フレーバーがあった時期、ボーカルレスロックというような激しい曲からジャズっぽいアプローチまでさまざまな曲調を変遷してきた。

現在は、バンド形態を復活していて、リーダーでギタリスト、そして唯一の全期間通しで在籍するオリジナルメンバー安藤正容(まさひろ)、およそ10年の離脱の後2000年に復帰したサックスとウインドシンセの伊東たけし、サポート時代を入れると在籍10年を超えるキーボーディスト河野啓三、ジャズもロックもこなす手数系新人類ドラマー坂東慧という布陣。気が付けばこのメンバーで8年を超えており(2013年6月現在)、いつの間にかT(HE)-SQUAREとしては最長不動期間?になっている。ベーシストは不在だが、レコーディングでは旧メンバーの田中豊雪や須藤満、およびツアーベーシストの田中晋吾が弾き分けている。

今回は35周年を記念して“T-SQUARE SUPER BAND”名義。現在のメンツと3人のサポートベーシストに加え、複数の旧メンバーが応援に駆けつけた。まず1970年代の最初期に在籍したパーカッションの大御所、仙波清彦。1990年前後に在籍し、F1=TRUTH=T-SQUAREのイメージを決定付けたタイトなドラムスの則竹裕之。2000年付近のわずか足掛け3年の在籍だが、実力ある若手(当時w)プレイヤーで本多俊之

とも親交があるサキソフォニスト宮崎隆睦。今回はこの4+3+3の10人構成の大御所バンド。余談だが“T-SQUARE SUPER BAND”として正式クレジットされ、ライナーには写真も載った田中晋吾は今まで正メンバーの経験がない。2013年6月現在のHPにはまだベーシスト不在のバンドとされているが、これは彼の正ベーシスト昇格の前触れなのだろうか。
こっちは御大仙波を先頭に...
こっちは御大仙波を先頭に...
田中晋吾(左から2番目)もメンバー扱いに
田中晋吾(左から2番目)もメンバー扱いに
このアルバムの幕を開くのは「Open The 35th Gate」。基本現メンバーである安藤、伊藤、河野、坂東+田中晋吾で演奏されるが、両ch端で鳴らされる仙波のパーカッションが、彼の離脱以降正式なパーカッショニスト不在だったT(HE)-SQUAREには見られなかったきらびやかさと楽しさを形作っている。メロディーもT-SQUARE定番のギターとサックスが交互に明確なテーマを奏でるもので、彼らの35年の歴史が見える...と思ったら曲を書いたのは作曲者としても非凡な才能を見せる坂東クン。そして坂東クン含めた全員のソロ回しがあるこのCD幕開けの曲で、最初のソロをとったのが田中晋吾というのも面白い。

「Paradigm」。古参フュージョンバンドの一方の雄、CASIOPEA

の神保彰が超絶オンタイムのドラミングのため、カッチリ=CASIOPEA、緩め=T(HE)-SQUAREのイメージもあるが(さらにいうならゆるゆる=NANIWA EXP.www)、唯一則竹の在籍時代はカッチリイメージ。中でもカッチリなのはビート感が正確な須藤がベーシストだった時期。この曲はリズム隊が須藤+則竹でEWIも宮崎ともっとも現メンバーがかかわっていない曲となっている。宮崎の採るメロディラインも伊東の明快なラインとは明らかに異なり、ちょっと異質な感じ。アルバムでいうと“GRAVITY”のような2000年前後の味わい。

「Fine Play!」。T-SQUAREがもっともロックよりでポップタッチだったのが、リズム隊がベース田中豊雪、ドラムス長谷部徹の時代。今回長谷部は参加していないが、田中豊雪の8分音符で刻むラインがドライヴィンだ。伊東のEWIの音も当時のLyricon風。オルガンの音が新しいけれど。

特典DVDは“HISTORY OF T-SQUARE”と題したインタビューと当時のステージ映像(ダイジェスト)でつづるドキュメンタリー。1978-1990、1991-200、2000-2013と約10年ずつに分けて当時を振り返る。映像にはかなりレアなものもある。
この曲練習したなぁ...懐かしいメンツだwみんな若い!!
この曲練習したなぁ...懐かしいメンツだwみんな若い!!
彼らとほぼ同期のバンドでも、メンバーチェンジをせず、おっさんパワーで乗り切るNANIWA EXP、

デビュー以来在籍したキーボーディストが離脱しながらも最小限の手当てで復活したCASIOPEA

らとは異なり、メンバーチェンジを繰り返しながら、特に近年は若い血を入れて前進するT-SQUARE。それでいて旧メンバーとも決して疎遠ではなく...

その長い歴史とゆるいつながりが、新たな世界を生み出している、そんな、作品です。
けっこう和気藹々?
けっこう和気藹々?
【収録内容】
<CD>
1. Open The 35th Gate
2. Believe
3. Departure 101
4. Bright City
5. Temps,10 p.m.
6. Paradigm
7. Fine Play!
8. 微笑みを忘れない
9. あの夏のように

<DVD>
1. History of T-SQUARE

  • 購入金額

    3,980円

  • 購入日

    2013年04月12日

  • 購入場所

    山野楽器

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