押尾コータロー。以前ご紹介した
ライトハンド奏法やピッキングハーモニクスという「いわゆる」テクニック系の奏法以外にも、ネイルアタック奏法やボディタッピングといった特殊奏法をオープンチューニングとよばれる特殊なチューニングを施したギターを使って演奏するギターの職人(ちなみにノーマルチューニングのギターも使う)。ギターの演奏に関して知識がない人でも彼の演奏を見れば、とてつもなく高いテクニックが必要だとわかるくらいスゴイギタリスト。ギタリストでそちらの方向性を志すミュージシャン/アマチュアにとっては神のようにあがめられている存在。
そういったテクニックを持つ人物というのはその方向性を追求するあまり、演奏ジャンルを狭めたり、他者とのかかわりが難しかったりする場合が多いが、彼にはどちらも当てはまらない。守備範囲としてはクラシカルな曲から歌謡曲まで、ビートが効いたものからぽろぽと爪弾くようなもの、独奏もできればヴォーカリストのバックもいとわないというスタンス。そのため、TVでもソロコンサートが放映されることは多くはないが、音楽番組や音楽特番で他者とのコラボレーションという形でよく登場しており、そのような番組に興味がある人は一度は目にしたことがあると思われる。
そんな彼が芸能活動11年目に突入という時期に出したアルバム。2枚組で構成されるが、かなり風合いが違う構成となっている。
一枚目は“Reboot”と名づけられている。昨年“10th Anniversary BEST”としてデビュー10周年をベスト盤で締めくくった彼が、心機一転次の10年に向けて再起動ということなのだろう、気合が入ったインスト曲が続く。
「Ready, Go!」は1曲目らしい激しい曲。ハーモニクス、スラップ風に弦をはじく音、ライトハンド奏法、弦を弾く位置をサウンドホールの上だけでなく、ネック側にもブリッジキワキワまでも動かして多彩な音を出し、ボディもバンバンタッピングするエネルギッシュな曲。まさに掛け声のようなエネルギーを感じる曲。
「Weather Report」。押尾はジャンル的にはどこに入るのか。基本インストなのでイージーリスニングやニューエイジ系に分類されていることが多いが、取り上げる曲(「ボレロ」など)からネオクラシックに入っていることもあるが、フュージョンって分類しているCDショップは多くない。彼のダイナミックでわかりやすい曲調は意外にフュージョンには合う、と思うのだが。この曲はフュージョン系のさわやかなコード進行が、リズミカルなボディのタッピングとあわせて、とてもドライヴィン。
もう一枚のCDは“Collabo.”の名の通り、彼がさまざまなヴォーカリストと成した共演作がちりばめられている。コラボであって、バトルではないのでがっぷり四つというよりは、ギターをフィーチャーしたバックに合わせてそのヴォーカリストが歌う、という風情。LISAの歌う平井堅の「瞳をとじて」のように押尾がオケのひとりとしてプレイしていて、ソロを取るだけ、という感じの地味なのもあれば、「瞳をとじれば」のように打ち込みのリズムと薄く入る和音のシンセの他は左右チャンネルからバリバリ彼のプレイが聴けるような白熱のコラボもある。歌番組などでのかれはこれらのスタイルなので、一般的にはこちらのほうが通りがよいか。深く聴く、奏法に酔う1枚目と、なじみのある楽曲で、曲の構成要素としての彼(のプレイ)を堪能する2枚目。一粒で二度美味しいw作品です。
【収録曲】
DISC1:Reboot
1. Ready, Go!
2. One Love, ~T's theme~
3. Weather Report
4. nanairo
5. Midnight Rain
6. MISSION
7. キミノコト
8. STEALTH
9. Kiwi & Avocado
DISC2:Collabo. ()内オリジナルアーティスト
1. 瞳をとじて with LISA (平井堅)
2. IF YOU WANT with 氷室京介 (氷室京介)
3. 時の過ぎゆくままに with 工藤静香 (沢田研二)
4. 瞳をとじれば with カサリンチュ
5. ... & Smile with 今井絵理子
6. Smile Blue with DEEN (DEEN)
7. Shape Of My Heart with 渡辺美里 (Sting/映画「LEON」主題歌)
8. ナイト・ウェイブ (Live Version) with 甲斐よしひろ (甲斐バンド)
「アルバムダイジェスト」
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購入金額
3,200円
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購入日
2013年04月25日
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購入場所
TOWER RECORDS
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