丁度Windows 95の発売前後までは、NECのPC-9821シリーズの他に、EPSONが「98 PROGRESS」と銘打って発売していた、PC-9800シリーズ互換機がありました。ただ、これはあくまでPC-9801系の互換機であり、PC-9821でサポートされた画面モードなどには対応していませんでした。
そのEPSON製PC-9800シリーズ互換機の中でも、最高性能を誇っていたのがこのPC-586RJ1LWでした。主要スペックは以下の通りです。
CPU:Pentium 120MHz
RAM:8MB(標準)/ 192MB(最大)
HDD:540MB E-IDE
CD-ROM:4倍速 ATAPI
グラフィック機能としてはPC-9801系互換の640×400ドット 4096色中16色の他に、Windows 3.1または95利用時に機能するS3 Vision964が用意されていました。これは当時ドライバーの開発力に定評のあったCanopusからドライバーの提供を受け、当時のNEC製PC-9821シリーズに搭載されていたTrident TGUI9680XGiよりも数段優れた性能を発揮していました。
ただ、泣き所となったのは拡張スロットでした。PCI 2.0に準拠した32bit/33MHz PCIスロットを備えていたPC-9821シリーズに対し、EPSONは98標準拡張バス(通称Cバス)スロットと、上記Vision964を搭載するための専用グラフィックスロットだけを提供していたため、PC/AT互換機のボードが使える可能性があった本家NECよりも発展性の点で大きく劣っていたのです。
また、実はこのPC-586RJ1LWは、前年にPentium 90MHzを搭載して発売されていた、PC-586RA1LWのCPUを差し替えただけの仕様であり、Windows 95の登場をにらむべき時期に発売されたPCとしては、設計の古さが感じられました。
結局EPSON製PC-9800互換機は、本機とほぼ同時期に発表されたPC-486MEシリーズを最後に消滅してしまいました。一応既存ユーザー向けに純正のWindows 95が用意され、そこまではサポートされたのですがそれ以降のOSサポートもなく、一部ユーザーが苦心してNEC版のWindows 98を動かしたのがやっとで終わってしまいました。
EPSON製PC-9800シリーズ互換機は、NEC本家とは違った切り口で設計されていて、それなりに面白い製品も多かったのですが、大きな市民権は得られないままだったように思います。
ちなみに私が入手したのは、製造中止後6年経過した2001年で、ジャンク品として300円で売られていたものです。中のWindows 3.1は残っていたのである程度は使えたのですが、既にWindows 2000を使っていた時期であり、それほど使い込むことがないままでした。今も物置小屋の中に保管されていますが。
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購入金額
300円
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購入日
2001年10月06日
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購入場所
Schrödingers Katzeさん
2013/05/14
互換機としては、TOMCAT COMPUTERが何か作ってたようなきもしますが、無関係でしたっけ?
それなりにコストパフォーマンスは高かったので、98x1の市場価値が高いころは、数は出ていたと思いますが、需要そのものが「別に98x1じゃなくてもよく」なったあたりからなくなり、自分のところもPC/AT互換機を始めて早々に手を引いてしまいましたね。
うっかりと中途半端なことをしたMZ-2861よりはずっとましな末路だったと思いますw
むしろ、あの機種も、結構まじめに286に向き合って設計されていることを知ったのはずっとあとでした。
そういえば「国民機」なんてフレーズは、互換機のほうでしたね。
jive9821さん
2013/05/14
個人的にはPC-9821Aシリーズのデザインは、PCとしてはなかなか良く出来ていたと思っています。それ以降は改悪が進んでしまいましたが。
TOMCAT COMPUTERはソフト的なエミュレーターだったと思いますが、私も詳しくは知りません。FA用途であればEPSON以外でも互換機は存在していましたが、真っ向からコンシューマー市場に取り組んだのはEPSONだけでしたね。EPSONチェックなど本家から嫌がらせもありましたが、よく頑張っていたと思います。