所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。 音楽界にはその登場によって周りの状況を変えてしまうようなアーティストがいます。古くはThe Beatles、Steely Danなどもそうかも知れません。日本においても何人かのアーティストが音楽界の方向性に大きく衝撃を与えました。そんなアーティストのデビュー作をご紹介します。
久保田利伸。何度かご紹介しているファンキィ系J-POPアーティストだが、彼が日本のそれまで「歌謡曲界」と言われていた流行歌のシーンにファンキィでダンサブルで、「イロク」なテイストを持ったソウル系の楽曲を持ち込んだ。そして、それを日本に根付かせた。彼がいなければ、EXILEもなかっただろうし、宇多田ヒカルらSOUL DIVAと呼ばれた一群の女性シンガーたちも、違った展開となっただろう。
本作はそんな彼のデビューアルバム。
まだ、「かぶってる」、本音は見せてない。
でも、片鱗は明らかに見える。
歌謡曲っぽさを残しながらも、ファンキィで、ソウルでセクシィなクロいヴォーカルが主張している。
このアルバムのなかでは“流星のサドル(2nd)”と“失意のダウンタウン(1st)”がシングル曲だが、そうではない曲も佳曲ぞろい。
「Olympicは火の車」。ハイパーテンションなファンキィチューン。当時のツアーバンドMOTHER EARTHのギタリスト羽田一郎との共作。ギターのスラップ風奏法、駆け回る効果音、間奏の複合リズムに組み込まれた一瞬のスラップベース...Aメロの抑揚のないメロディを、リズムに乗せて歌いきるのはクボタのセンスとリズム感。
「Shake It Paradise」はさらにクロい。中村キタローの印象的なベースライン、羽田の鋭いクリアなカッティングと、ソロに入ると一転するダブリングされた音色。ツアーでも帯同していた女声コーラスグループ、THE AMOZONSのコーラスもソウル。
中島美嘉や中西保志、ATSUSHIなど数え切れないほどのアーティストによってカバーされた、名バラード「Missing」。♪言葉にできるなら/少しはましさ/互いの胸の中は/手に取れるほどなのに/震える瞳が語りかけてた/出会いがもっと/早ければと/I LOVE YOU/叶わないものならば/いっそ忘れたいのに/忘れられない/全てが/I MISS YOU/許されることならば/抱きしめていたいのさ/光の午後も星の夜も/Baby♪歌詞がいい!!そしてそれを歌うクボタが上手い!なにもいうことなし。
この作品でクボタは日本でのR&B、ファンク、ソウルの扉を開いた。そのクロさは、よりアフリカ色を強くしながら3~4作目の“Such A Funky Thang!”、“BONGA WANGA”のあたりで結実するが、その前夜。一般的にはこの程度のクロさがメジャーかも知れない。それは、このアルバムの作風を模した作品がこのあとあまた出ることでも解る。
まさにエポックメイキングな作品です。
【収録曲】
1. 流星のサドル
2. Olympicは火の車
3. Shake It Paradise
4. Missing
5. 失意のダウンタウン
6. To The Party
7. もうひとりの君を残して
8. Somebody's Sorrow
9. Dedicate(To M.E.)
10. Insideカーニバル
「Shake It Paradise」
もはや日本音楽史の教科書
この作品を触れずに21世紀の日本の音楽界の展開を語ることはできない。
もはやバイブルクラス。
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購入金額
3,200円
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購入日
1986年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2013/04/20
久保田、偉い!w
cybercatさん
2013/04/20
あとから俯瞰するとこのアルバムはターニングポイントでしたね。
リアルタイムに立ち会えて幸せでした!