鳥山雄司。日本のフュージョンギターシーン黎明期を支えたギタリスト。CASIOPEAの野呂一生のようにバンドで出るわけでもなく、虹伝説の高中正義のように大がかりなセットを使ったライヴで魅せるわけでなく、やや通好み。また本人のプレイも(特に後期は)「曲に必要ないならギター弾かない選択も良し」とするプロデューサー的視点があり、楽曲提供やドラマや映画などでのテーマ曲の選定は多いのに意外に名前は知られていない。一番有名なのはテレビ番組『世界遺産』のテーマ曲「The Song of Life」の作曲・プレイヤーとしてか、シャ乱Qの「シングルベッド」の編曲者としてか、映画「神様のパズル」のサントラ担当としてか。
そんな彼もギタリスト>プロデューサーの時期があった。とくに以前ご紹介した“A Taste Of Paradise”
と“PLATINUM DORI”
の間に位置する本作は最も弾きまくっている。
といっても彼のこの頃の作風の肌触りはCOOL。打ち込みをベースに数人のプレイヤーのサポートを仰ぎ、そこに彼の歌うギターが乗る。この打ち込みの肌触りが、温度を感じさせない。そしてコード進行や構成がよく練られているので淡々と進む曲も聴き心地が良い。衝撃的な印象は残さないが、いつの間にか覚えてしまっている、という風情。
「CAPTAIN HADDOCK」。ブラスのブロウのサンプリング音とモロシンベのパターンで始まるこの曲は、「古くない」このアルバムの中では最も「古い」(時代を感じる)?これ見よがしのものではないけれど、オケヒットは入っているし、打ち込みのスネアは思いっきりゲートリバーブがかかってるし。でも歌う心地よいディストーションギターが奏でる明解なメロディラインと、佐藤博の懐かしい感じの音色のシンセソロがむしろスタンダードな風合いで古くささは感じない。
「TRANSFUSION 」は硬いノリだけど、意外に人でのプレイが多い曲。人間くさくないのはドラムスが硬いノリで重い音の山木秀夫なのがその主因かな。 ベースには美久月千晴、サックスには後にT-SQUAREに参加する本田雅人が入っているが、山木のドラムスと美久月のStik Bassのソリッドなリズムが支配しており、揺れとかタメ、を感じない硬いノリの曲となっている。
「LIPSTICK NO.242」。鳥山のギター(メロは生ギでサイドでエレキのカッティングなども聴かれる)と森村献のピアノ以外全部打ち込みなんだけど、とてもCOOL。ちょっと次作PLATINUM DORIの大谷幸の切ないピアノソロが引き立つ「HALF MOON PARADISE」の様な風情なんだけれど、その肌触りはもっとCOOL。サビの部分はちょうどCASIOPEA初期のようなコード展開で、それも影響しているのかもしれないが(聴く方が頭脳派CASIOPEAの印象を持ってしまう)。最新の機械を多用しながらもそれに流されない。自分の曲を、自分のプレイを際立たせるためだけにそれを使う。そんなツボを押さえた使い方で創られた作品は時代に流されない。
そんな肌触りのCOOLな作品です。
【収録曲】
1. CAPTAIN HADDOCK
2. LUMBER JACK
3. TRANSFUSION
4. SILVER DRAPE
5. LIPSTICK NO.242
6. AN ECSTASY
7. IN HER EARLY DAYS
8. THE MISSING PERSON
9. WORKOUT
10. MY GODDESS
「LUMBER JACK」
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購入金額
3,200円
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購入日
1988年頃
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購入場所
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