これらは物理原理が変わらないので、いまでも通じる方程式ではある。
しかし、ソースのデジタル化によって違った方向性の製品も出てきた。
デジタルデータをHDD(主にPC)に貯め、デスクトップで再生しようというニーズ。記録媒体を探す手間もなく数百~千曲を自在に検索して再生する環境。このようなリスニングスタイルが市民権を得るのに時間はかからなかった。
しかしPC内部はノイズが多い環境。これがソースを汚すのを避けるため、PC内部ではデジタルデータのままで扱い、USBで外出しをする
という手法が好まれている(USB-DAC一体型スピーカーの他にUSB-DAC単体を使う方法もある=この場合は旧来のシステムにつなぐ事が可能)。
一方で、厳重にシールドされたサウンドボード
を使って旧来のステレオシステムに繋ぐという選択もある。この場合は、必ずしもサイズの制約を受けないので旧来の大型システムに繋ぐということもできる。しかしPCに情報があるということはその前で聴きたいというニーズもある。その際には物量投入の旧来のシステムは大きすぎる。
また夜中に小音量で高品位なヘッドホンを使うという楽しみ方もある。
ここで出てきたのが、コンパクトなアンプ/ヘッドホンアンプというニーズ。
最近はいくつかのメーカーからこのようなニーズに合致するミニアンプ/ヘッドホンアンプが提案されている。
この分野に情熱の国イタリアから殴りんできたのがOpen Item社だ。2009年に設立された若い会社ながら、“Carot One”のブランドで高品位でインパクトの強い作品(色が(^^ゞ)を出し続けている。しかも価格も比較的リーズナブル。
2013年1月現在のラインアップは、アンプ3系統、イヤホン1種
に新製品としてフォノアンプとUSB-DACが追加された。しかし当初からあったのはアンプ、しかも「真空管プリアンプ」+「D級パワーアンプ」を組み合わせた“ERNESTOLO(エルネストーロ)”(後にプリアンプ部も石にした“GILDOLO(ジルドーロ)”、パワーアンプ部を省いた“FABRIZIOLO(ファブリジオーロ)”が追加)。そう、真空管というレトロアイテムを使ったアンプ。それがニンジンメタリックのアルミボディに収められ、ブルーのLEDでライトアップされる。その補色関係は同社のイヤホンと同じ(つか、こっちが先でイヤホンはそれを模しただけ)。質感の高いヘアライン処理のアルミボディをメタリックなオレンジ色で包み、そこからレトロな真空管が飛び出す。さらに真空管に火が入るとそれ自体が赤みを帯びた光を発するが、それを凌駕する強さでブルーLEDで照らされるアピアランス!新しさと懐かしさ、造形のエッジの強さが放つメカニカルさと絞り出したクリームのようなとんがり帽子と円筒形のプロテクターを持つ真空管のまるさが印象的な造形だ。
そしてその小ささ!大きさとしては飛び出た真空管を除けば、ツラが約6センチ四方で奥行きが10センチくらい。つまり2つ重ねたロングサイズの煙草の箱より一回り大きな感じ、というとイメージが湧くだろうか。大きさ的にもルックス的にもPCのまわりにあっても問題ない、むしろ粋なその姿は合格だ。
構造も凝っている。フロントから見ると一枚のアルミパネルで連結されているのでそうは感じないが、実はこのアンプ、「真空管プリアンプ」と「D級パワーアンプ」は完全に別体。基板が分けられている、というレベルではなくて上半分の「真空管プリアンプ」と下半分の「D級パワーアンプ」は電源も別、実は躯体も横から見ると完全に別のもの。同じ大きさのプリアンプとパワーアンプを重ねて、フロントパネルとリアパネルでつないだような構造になっている(そのためスピーカー駆動時にはプリアンプ⇒パワーアンプの結線が必要)。そんな凝った「マイクロオーディオシステム」の“ERNESTOLO”、今回入手したものはさらに特別バージョンだ。日本向けに200台だけ作られた限定版、“La Serie Limitata(ラ・セリエ・リミタータ)”。約4万円の通常版に比べてその倍の8万円弱(購入価は購入店の値引きなども反映後の価格)。どこに差があるのか。まず違うのが真空管。通常版はロシア製のElectro-Harmonix社6922管をはじめとする6922/12AU7管が積まれているようだが、本品はアメリカRCA社製ヴィンテージ真空管12AU7を使う。最初期のブラックプレートではないが、クリアトップと呼ばれるタイプのデッドストックもの。双3極電圧増幅管である12AU7は単管でステレオ増幅が可能だが、使われたのは双極の特性がマッチしている選別品。さらに日本国内で1台1台バイアス調整を行って、担当者のサインが書かれた証明書つく。次はプリアンプ部に使われているオペアンプ。通常は定番のTI(Texas Instruments)製のNE5532Pらしいが、ここを定評のある高級オーディオチップ、新日本無線「MUSES 02」に変えてある。メーカー曰く、通常版に比べ「100倍近いコストアップ」との事だが、日本国内での販売価格でもNE5532Pが百数十円なのに対してMUSES 02は三千円中盤で、100倍は大げさだが30倍ほどの違いがある。また前述のように“ERNESTOLO”はプリとメインのセパレートアンプだが、そこを結線するラインがSAEC(サエク)製のスペシャルオーダー品。長さが最適な10cmになっているのに加えて、市販モデルにないレッドカラー。当然素材もPCOCC-Aといった高級オーディオアクセサリーに使用されるもので構造もノイズに強くセパレーション性の高い左右独立ツイストペア構造。さらにハンダもオーディオ専用品を用いたというコダワリの品。さらに付属品としてCarot Oneのロゴが入ったオリジナル・バナナプラグがつく。前述のように小さな躯体のため、スピーカーターミナル周辺は大変狭い。バナナプラグは配線をスマートにするため、ウレシイ配慮だ。外観的にはトップパネルに台数限定であることを表すシリアルナンバーも打刻された専用のプレートがつき、通常版のオレンジ一色のトップに銀のリングがつくアクセントとなっている。また外装の箱もオレンジの標準品に対してブラックの特別版。これだけコダワリ抜いた“La Serie Limitata”、どれほどの実力なのだろうか。まず、使用頻度が高いと思われる「真空管プリアンプ/ヘッドホンアンプ」の部分を検証した。
ソースはオーディオボードONKYO SE-200PCI LTD
のライン出力を“ERNESTOLO”の背面のライン入力にRCAピンケーブル接続したものと、フロントの「mp3入力」にApple iPod shuffle 第3世代 4GB
につないだものを、純正ともいえるカナル型イヤホンCarot One“TITTA(チッタ)”
とカスタムIEMカナルワークス“CW-L11”
および高性能セミオープン型ヘッドホンPHILIPS“Fidelio L1”
で聞き比べた。いずれのイヤホン/ヘッドホンでも見通しが良い。解像度の高さがあるのだが、それが分析的に冷たくなることはなくて繊細で艶やか。特に“TITTA”をライン入力で聴いたときは明るい躍動感溢れる音になる。これが“CW-L11”になると多少モニター系の怜悧さが加わるが、女性ボーカルの澄んだ声や震える弦楽の音は格別だ。“Fidelio L1”はその音場の開放感と音色の開放感が合わさり、多少腰高にはなるがアコースティックギターなどはぞくぞくする広がり。ライン入力とmp3のソースの差は大きくはなく、むしろヘッドホンやイヤホンといった再生デバイスの差が大きい。
次にパワーアンプ...なのだが、cybercat家には小型スピーカーはモニター系のものが多く
ちょっとキャラが異なると感じたため、無謀にも大型スピーカーJBL 4312XP
につないだ。これはウーファーは30cmもあり、インピーダンスも8Ω。普段はくだんのA級アンプ、50W+50WのLUXMAN L-570 X'sで鳴らしているシロモノ。8Ω駆動だと6W+6Wになる“ERNESTOLO”は果たして........鳴らしきった!!問題ない駆動力と音量。音色はヘッドホンで聴くよりは(D級アンプのせいか)やや端正で色気が落ちた感じでスッキリとしたもので、エロ度でいけばL-570 X'sの方が遙かに高い。しかしこの手のひらサイズのアンプが充分「音楽」といえる音で4312XPを「鳴らす」、これは新鮮な驚きだった。Carot One “ERNESTOLO La Serie Limitata”。芸術の国、情熱の国からやってきたこの小さなアンプは想像以上の楽器的「作品」だった。その主張あるたたずまい、高い質感、セパレート構造やパーツに対するコダワリ...そして艶やかで晴れた音!女性ボーカルやアコースティック系、弦楽四重奏などの作品にはツボ。でもロックや最近の打ち込み系などでも破綻は見せないおおらかさ...
今までデスクトップではUSB-DAC内蔵スピーカー
で音楽を聴くことがほとんどだったが、卓上サイズのパッシブスピーカーをコイツで鳴らしてみても良いなぁ...なんてキワドイ考えが頭をかすめる今日この頃。いったい来年はどんなことになっているのであろうか...(^^ゞ
【仕様】
パワーアンプ部
□出力:6W x2(8Ω)、15W x2 (4Ω)
□SN比:98dB
□ダイナミックレンジ:98dB
□IHF IM 歪み率:0.10% @ 1W,4Ω
□THD 歪み率:0.03%@9W / 0.1%@11W4Ω / 0.1%@9W6Ω / 0.1%@9W8Ω
□出力効率:81%@15W4Ω / 90%@10W8Ω
□入力:3.5mm ステレオミニジャック×1
□スピーカー端子:RJ45コネクタ(バナナプラグ対応)
□電源:DC12V-13.2V(max)5A
□電源ソケット:5.5mm/2.1mm
ヘッドフォンアンプ部
□SN比:92dB
□出力:3.0W / Channel on 33Ω
□周波数特性:15Hz - 100kHz -1dB
□入力インピーダンス;10kΩ
プリアンプ部
□真空管:6DJ8/6922 series or 12AU7 series(exchangeable)
□SN比:92dB
□THD歪み率:0.05%@10kΩ 0.15%@33Ω
□入力:RCA×1、3.5mmステレオミニジャック×1
□プリ出力:3.5mmステレオミニジャック×1
□ヘッドフォン出力:3.5mmステレオミニジャック×1
□電源:DC12V-13.2V(max)5A
□電源ソケット:電源ソケット:5.5mm/2.1mm
□サイズ:W67×H60(115 真空管含む)×D100(125 突起部分含む)mm
□重量:0.7kg
□電源アダプター:DC12V 5A(48W)
□電源部サイズ:W50×H33×D78mm
□付属品:電源アダプター、SAEC製3.5mmステレオラインケーブル、RCA 12AU7ヴィンテージ真空管x1
Yukimuオンラインストア(ERNESTOLO通常版)
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購入金額
76,500円
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購入日
2012年08月23日
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購入場所
Joshin web
ヒロ妨さん
2013/01/09
凄いの一言です。
1000もちもの登録も、お疲れ様でした。
cybercatさん
2013/01/09
>こだわりの1品ですね。
イヤ~、通常版を店で聴いて良かったので手を出したらさらに深みn(ry
イヤイヤイヤイヤイ..
今後ともよろしくです。
harmankardonさん
2013/01/09
ここまでこだわるのは,さすがです.
cybercatさん
2013/01/09
>ここまでこだわるのは,さすがです.
う~みゅ、こだわりすぎの感が(^^ゞ
はにゃさん
2013/01/11
RCAのビンテージ管はクリアトップの12AU7でしたか。
ということはサイドゲッター?
なかなかいいものですね。
cybercatさん
2013/01/11
>RCAのビンテージ管はクリアトップの12AU7でしたか。
>ということはサイドゲッター?
その通りです。
>なかなかいいものですね。
けっこうよかった!
今ちょうどFABRIZIOLOの“La Serie Limitata”が告知されていて(こっちはムラードCV4003のデッドストック管)、衝動を抑えるのが大変ですw
ちょもさん
2013/04/08
中身、完全にパワーとプリで別構成なんですね・・・
唯一の、しかも最大の不満が、真空管ソケット下部に仕込まれた青色LED。
真空管の味のある明かりが台無しなのですよ。
写真を拝見したところ、真空管ソケットを外さないと取り外せなさそうな気が・・・
ソケットの中心に詰め物でもしておきますか。
USB DAC内蔵モデルも出るらしい?との話なので、こちらにするか、DAC内蔵モデルにするか大いに悩んでいます。
Yujiさん
2013/04/08
もうちょいマニアックに攻めるとすればBRIMARのCV4003スクエアゲッターなんかもオススメです。
cybercatさん
2013/04/08
>いやー、これ欲しいんですよね。
やっぱり?w
>唯一の、しかも最大の不満が、真空管ソケット下部に仕込まれた青色LED。
そうですね。あのぼうっと光る黄~オレンジ系の暖かな光を期待するとゼンゼンダメですwww
これはオレンジ⇔青色の補色関係、レトロとモダンの同居ということで
>USB DAC内蔵モデルも出るらしい?
USB DAC単体は出てますから、USB-DAC+ヘッドホンアンプのタイプがあると食指を動かされますね。
cybercatさん
2013/04/08
>MullardのCV4003は希少管で萌えますね〜!
先日eイヤホンのアキバに現品ありましたよ。
ご興味があればゼヒ!
Yujiさん
2013/04/08
、、、でも、もう持ってます。
cybercatさん
2013/04/08
さすがです!