レビューメディア「ジグソー」

塊感とごちゃっと分離が悪いのは違うのだよ【PHILIPS Fidelio L1 試聴ソース③:フュージョン】

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。いろんな音楽を聴く、ということは人生を豊かにします(たぶん)。ジャンルにとらわれずに聴く音楽漬けの猫が「PHILIPS Fidelio L1」という同社初のヘッドホンをレビューするにあたって「こんなところがこう聴こえるとウレシイな」と思うソースをご紹介していきます。どジャズ編

からポップにシフトしてフュージョン編。

...とは言っても、これはかなりハード。

何回かご紹介しているT-SQUARE。この長い歴史を誇るグループはその間に音楽的および構成的変遷を経てきた。デビュー当初はツインギターにツインキーボード、パーカッションもいる大所帯でクロスオーバー系の明るくポップなインストバンドだったが、メンバーが5人(ギター+サックス+キーボード+ベース+ドラムス)に絞り込まれて行くにつれて、ポップスとロックの比重が大きくなった。この時期にF1のテーマソング「TRUTH」が出され、比較的ハードなロック調のインストバンド、というイメージができあがった。その後よりJAZZ系でインプロヴァイゼーションを重視するフロントマンに変更があってロックテイストが薄まったり、バンド形式を解消してフロント楽器2人のみ(ギター安藤正容とサックス伊東たけし)のユニット形式になったり、またバンド形式に戻したりの変遷を受けて、現在では4人(ギター+サックス+キーボード+ドラムス)にサポートベース(といっても現体制になってからほぼ不動)というバンド体制で活動している。

その変遷のさなかユニット形式になったとき。ライヴは前メンバーの則竹裕之や、のちに正式メンバーとなる河野啓三らのサポートを受けていたが、アルバム制作は(主に国外の)様々なミュージシャンのサポートを受けていた。それはDon GrusinやAbraham Laboriel(, Sr.)といったgrp系のアメリカフュージョンミュージシャンやブラジル音楽のToninho Hortaと言ったメンツとの共演でどちらかと言えば「TRUTH以前」のクロスオーバー系フュージョンや若干エスニックな作品に「戻った」感じだった。

一方、「TRUTH」以降フュージョン界で最もヘヴィな立ち位置にいたT-SQUAREの「ロックスピリット」の発散?プロジェクトも並行して企画された。それが“T-SQUARE plus”。これはハードロック系のメンツを迎えたプロジェクト。メンツはドラムスに元Guns N' Roses

のMatt Sorum、Ozzy OsbourneバンドにいたベーシストPhil Soussan、WhitesnakeのDavid Coverdaleとバンドを組んでいたギタリストDoug Bossiに、映画音楽(「ロッキーⅣ」など)からプログレ系まで幅広く手がけるキーボーディストVince DiCoraが加わった重量級(音がw)のラインアップ。
ハードロック系のヘヴィな連中
ハードロック系のヘヴィな連中
数年ぶりに「TRUTH」がフジテレビのF1中継に使われることになって、このメンツでリバイバルリメイクしたのが本作。

【比較試聴対象曲】もちろん対象はこの曲、「TRUTH 21c」。元曲は言わずもがなのT-SQUAREを代表する曲、「TRUTH」。「F1と言えば」の曲と思われているが、実はF1のテーマは何度か変更されている。ただいわゆる「F1四天王(ピケ・プロスト・セナ・マンセル)」や「皇帝」シューマッハの台頭といった古き佳きF1グランプリからチーム力の近代戦への変遷という一番波乱があり、スターがいておもしろかった時代、F1が輝いていた時代のテーマソングのため、印象が強い。オリジナルの「TRUTH」から数年ぶりにテーマに復帰したが、意外にアレンジは元のまま。一番の違いはドラムスがカッチリ系の則竹裕之から、跳ねる装飾音を多用するMattに変わってグイグイ前に行く感じになったこと?あとBメロはギター2本のハモりになっている。ソロはキーボード⇒ギター⇒キーボード⇒ギターとVinceとDougが交互に掛け合う。
※比較ポイント:音像分離。大きく録っているバスドラと8分音符刻みで延々と弾かれるベース、ソロ以外ではベタでならされるキーボードがきちんと描き出せるか。

セナのテーマ曲でなじみの「FACES」のリメイク、「THE FACE」。元曲より遙かにハード。元曲もセナのロマンチックかつ劇的な性格をよく表した名曲だったが、メロディはまるい音色のEWIでとられていても、「エレキギターの曲」になっている。ツインギターのソロの掛け合いはスリリング!!

「A FARTHER PLACE」はサックスとアコギでゆったりと始まる休息の曲。これは“T-SQUARE plus”の曲ではなく、ユニット時代の“T-SQUARE”として出された“Brasil”の曲。この曲では安藤はあえてギターを弾かず、伊東の沁みるサックスに寄り添うのはToninho Horta。前2曲のハードさとは異質の肌触りだが、F1中継でも使われた「A LATCHKEY」のように戦い済んで戦士の休息、といった感じか。

とにかくこの作品はMattの重く跳ねるドラミングと、ツインギターのヘヴィなハモリが華!塊感のあるハイエナジーな作品です。

【収録曲】
1. TRUTH 21c
2. THE FACE
3. A FARTHER PLACE

「TRUTH 21c」

  • 購入金額

    1,260円

  • 購入日

    2002年頃

  • 購入場所

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