押尾コータロー。今年メジャーデビュー10周年を迎えたギタリスト。スチール弦のアコースティックギターを演奏するが、ごくごく一部にパーカッションなどを加えるほかはほぼ独奏。曲はクラシックから洋楽カバー、懐かしの歌謡曲からオリジナルまで。と聞くと、ギターでメロディをなぞるような、デパートのBGMのような曲を想像するかも知れない。全然違う。
彼の創り出す音世界。これがギター1本と2本の腕(もちろん10本の指も使うが)で生み出されているとはとても思えない幻想的なもの。ギターでは弦を爪で弾く、指の腹で弾く、弦を叩く、弦をこする、弦の真ん中を弾く、弦の端を弾く、ボディを叩く、フレットを強打する....など色々な音を創り出すことができる。でもそれはほとんどの場合、「音」であって「音楽」ではない。でもかれの腕にかかると魔法のように音楽になっていく。
彼の特徴はチューニングにもある。通常6⇒1弦に向けて(太い=低い方から細い=高い方に向けて)EADGBEという音程だが、彼は曲によってそれを変え、必要なハーモニクスが12フレットや24フレット目という大きな音が出るポイントに持ってきている。
そんな奏法とチューニングテクニックが詰まった彼の初期の曲を集めたベストアルバム。
「Blue sky」。ならされる弦、強く弾かれて巻き弦がフレットにあたる音、ピッキングの音、弦の上を叩く音、ハーモニクス、ボディを叩く音....もう一人オーケストラ!曲は少しカントリーというかラグの薫りのするさわやかなもの。この曲のチューニングはCGDGBD。
「桜・咲くころ」はあまり技法に走ることなく、メロディの美しさで沁みるフォークソング。どことなく過ぎた子供の頃を思い出させるような、懐かしい日本的なメロディが胸に迫る。チューニングは通常。
彼の演奏にノックアウトされたのが「Merry Christmas Mr. Lawrence」。言わずと知れた映画“戦場のメリークリスマス”の主題歌。坂本龍一の切ない淡々としたピアノが逆に雄弁な名曲。押尾はピッキングハーモニクスならぬ、弦を叩くタッピングハーモニクスとでもいえる音、ボディを叩く音、゜低音弦のうねり、多彩な音の奔流でこの曲を表現するが、“間”がありなぜか“和”を感じる演奏だ。ボディを叩く音が鼓のような音だからか。チューニングはDADGAC。
このCDは彼が初期に所属したEMIのベスト。現在10周年を記念して新たなベストが編まれているが、わざわざこちらを探し当てて買った。実はこの初回盤はPVをたくさん収録していてそれめあて。かれの超絶技法が目の当たりにできる。テクノロジーに頼らなくても、いや不便な方がひとは工夫する?そんなことを感じさせてくれる作品です。
<CD>
1. Blue sky
2. HARD RAIN
3. Fantasy!
4. 桜・咲くころ
5. SPLASH
6. 翼~you are the HERO~
7. Departure
8. ハッピー・アイランド
9. Chaser
10. ボレロ
11. カノン
12. Merry Christmas Mr. Lawrence
13. オアシス
14. 風の彼方
15. ラストクリスマス
16. Friend(CM ver.)
<DVD>
1. Fantasy!<PV>
2. Merry Christmas Mr. Lawrence<PV>
3. SPLASH<PV>
4. 翼~you are the HERO~<PV>
5. ボレロ<PV>
6. オアシス<PV>
7. HARD RAIN
8. 翼~you are the HERO~
「Merry Christmas Mr. Lawrence」(これはPVバージョンではありません)
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購入金額
3,500円
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購入日
2012年10月12日
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購入場所
新星堂
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