知人からずいぶんと前に頂いたのだが、しばらく手を伸ばせずにいた。
いのちを繋ぐためドジョウを貪り喰らう老人の執念が、影画となって滲み出て来そうな「家霊」。
少年期の「食」の淡くも生々しい思い出を語らせる「鮨」。
そして表題作の「食魔」。
これは一度読み始めたら本を閉じることができない。
北大路魯山人をモデルとした、美食の道に尋常でない執念を燃やす主人公の鼈四郎の鬼気迫る精神描写は息を呑むほど生々しく生臭く、戦慄を覚えるほど美しくかなしい。
料理の描写も、よくありがちの「描写」でなく、「咀嚼」しているとでもいうか、こんな表現は料理大好き民族のフランス文学にも見当たらないのではないかというくらいリアルで読み手に迫るものを感じた。
さすが太郎の母親である。
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購入金額
1,470円
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購入日
2012年頃
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購入場所
めぐりさん
2012/09/26
vingt-et-unさん
2012/09/29
最近の文庫は値段が高いですよぉ。
売れないから刷数少ないせいなんでしょうかね?
私はこの小編集を読んで、もう少し岡本かの子を読みたくなりました。