来ましたよ変態マウス! その名もG600 MMO Gaming Mouse!
導入の実際と基本的な使い勝手の感想、ゲームでの使用感と
Mac等の非Windows環境での応用の可能性を模索してみましたよ。
【第一印象】
何か…なにか寄生している…
サイドボタン側からの見た目はなんとも… キモイw 異様である。デフォルトの設定にはイルミネーションが七色に変化し続けるモードもあり、実に怪しげ。しかし表面処理に凝ったところがないためか、サイドボタンの見えない角度からの見た目はかなり 地味 普通。特にホイールのデザインが1世代後退した感があるのは残念で、全体として見れば質感は悪くないが特に高級感もないという凡庸なルックスである。であるが故に、サイドボタン群の異様さが際立つ。
裏面はシンプル
裏面を見るとかなり大きなソールが前後に2枚という構成。ハードタイプのマウスパッドではべったりするのではないかと思ったが、滑りは軽い。中サイズのソール4枚貼りのG700よりも滑りが軽く感じるが、これは重量の違いも影響しているかもしれない。(G600:ケーブルを這わせて128g/G700:エネループ1本のワイヤレス使用時で148g)
各ボタンは軽さとクリック感が両立しており確実なインフォメーションが帰ってくる。ホイールの回転は、重たくはないが少しもちもちした感触で滑り過ぎない安心感がある。このあたりの仕上がりは流石のロジクール製品という感じ。
そして個人的に念願だった布張りケーブル!…思ったより太い。iPhoneのDockケーブルよりは太いがG700の有線用ケーブルよりは細い、というくらい。もっと細くて柔らかい感じを想像していたが、ともあれ感触は良好で、軽さも相俟って机にべったり這わせても抵抗感は感じない。
どっ、どこを持てばいいのだ
そんな中、やはり決定的に違うのは大量のサイドボタンの存在。普通に握ると親指が常にサイドボタンの上に、薬指がGシフトボタンの上に来るので、リフト時には親指と小指のテンションだけで持ち上げる事になる。これはホールド感抜群のG700に慣れた手にはかなり不安を感じた。実際このサイドボタンが結構軽いので、通常の感覚で持つと簡単に誤爆してしまう。
とりあえず親指の腹を広く使って複数のボタンにかかるように持つようにして対処。G700のような広いグリップ領域は望むべくもないが、あと数mm程度でいいのでサイドボタン群の下にスペースが欲しかった(現状でも親指を完全に下に落として引っ掛けるように持つこともギリギリ可能ではあるが…)。まあ、これは慣れるしかないだろう。そこを犠牲にして12個ものサイドボタンを得たのだと考えて。
いい傾き具合♪
持ち上げにくさの一因となっているサイドボタン群だが、ただ単に並んでいるわけではなく各ボタンにそれぞれ異なる傾斜がついている。G9からG14をひとかたまり、G15からG20をもうひとかたまりとして、それぞれ中央に向けて窪んだ形になって大きく2グループを構成している。さらにG13とG16にはキーボードのFとJにあるようなホームポジションを示す凸があり、直感的なボタンの押しわけを可能にしている。さらに全体として凹むという構造がリフト時の引っかかりにもなると言えなくもなく、かなり良く考えられたかたちという印象だ。
デフォルトでGシフトとされている第三のボタンは前述のとおり薬指で押す位置にあり、ホイールが普及する前に存在した3ボタンマウスを思い出す。これでG9〜G20を切り替えて最大24個のファンクションを利用できるわけだが、長年「薬指はマウスをホールドするために存在する」としか考えてこなかった私には未曾有の操作感であり、使いこなせるまで時間かかりそうだ。慣れるまでは、忙しいゲームで戦闘中に利用するのは通常の12個までに抑えたほうが良さそう。
【使用感:準備編】
まずはドライバ+設定ユーティリティであるところの「Logicoolゲームソフトウェア(以下LGSと略す)」をインストールして各種の設定を行う。パッケージにはCD等のメディアは付属していないので公式サイトから探してダウンロードする必要がある。
VISTA以降!
G600が手元に来て初めて気が付いたのだが、なんとこのLGS、Windows VISTA以降のサポートであり、XPは対象外!ゲーマーには未だXP環境に固執する人間も多く、これはなにげに痛いという人も少なくないだろう。しかし手元にあるXPマシンにダメモトで32bit版を突っ込んでみたところ特に警告もエラーもなくインストール出来た。しかしWindows起動と同時起動するよう設定してもドライバが組み込まれず毎回ユーティリティを起動しなければいけないなど、妙な挙動も見られる。その後は普通に使えるのだが──もちろん動作保証外となるのでご利用は自己責任で。
それはともかく。
このLGSは各種の設定をオンボードメモリ(マウス本体の内蔵メモリ)に保存するかPC内部に保存するかを選べる。しかしこれは設定ファイルをマウスに入れて持ち運べるとかいう性質のものではなく、マウス自身が内部に覚える設定と、PC側にストアされる設定が別々に存在し、LGSのある環境ではどちらかを選んで、LGSの無い環境(非Windows環境などを含む)で使用するときはマウスが覚えている設定が使えるというものだ。
オンボードモードとプロファイルモードで設定項目がこんなに違う
オンボードメモリで設定できるのは「USB機器(HIDデバイス)が普通に持つ機能の組み合わせ」まで。具体的にはOSが提供出来る範囲のマウスとしての機能と修飾キー付きの単一キーバインドの組み合わせだけで、アプリケーションショートカットやマクロを設定したい場合はLGSの導入された環境が必要となる。ポインタ速度(DPI設定)なども設定できる項目や範囲に違いがあった。
さて、この「Logicoolゲームソフトウェア」だが…、正直言って非常に使いにくかった。以下、戸惑った点を列挙してみる。
・初回にボタンのコンフィグを始める前には必ず「デフォルトに戻す」を一度実行しよう。ひとつもボタンが定義されていない状態のままうっかり別のモードに遷移すると、メインボタンにも何も定義されていない状態になってしまい何もできなくなる。
・「ポインタ設定」で感度調整をする際、「レベルの数」を増やして新たなDPI値を設定しようとすると、数値欄をクリックした時点で最大の値(8000以上)が入る事があり、そのままマウスを動かしてしまうとポインタが超高速で飛び交いまともにポイントできなくなる。入力欄にカーソルがあるうちに適切な値を入力しよう。
・オンボードメモリで使用する場合はポインタを加速する設定ができない。(OS依存となる)
・感度の設定はオンボードメモリでは各モードに別々の設定が出来るのに対し、プロファイルでは全モードで共通になるので注意。これはどちらのモードでも個別指定できて欲しかった。
・プロファイルは必ず実行ファイルに紐付けする必要があり、自由に作成して任意に切り替えることはできない。アプリケーション本体がどれだかわからないゲーム(Webサイトのスタートボタンから実行するタイプのネットゲームなど)では定義に難儀するだろう。私は諦めて、デフォルトプロファイルだけでモードを使い分ける形で対応した。
・プロファイルごとに覚えてくれるのはキー配置だけで、LEDカラーの設定は総てのプロファイルで共通となる。プロファイルの切り替え状態をLEDで認識できれば便利だったのだが、モード切り替えまでしか確認できない。(オンボードモードとプロファイルモードは別々に指定でき、LEDカラーで識別が可能。)
などなど…。ロジクールのこの種の設定アプリは昔から癖のある物が多いのだが、今回は特に頭を抱える場面が多く残念だった。デザインはかっこいいのに実装がちぐはぐで非常に損をしていると思う。私は、コントロールパネルは出来る限りシンプルで機能的であるべきだと常々思っている。改善…というよりは基本設計から発想の転換を求めたい。
【使用感:ゲーム編】
いくつかのネットゲームで私自身がどう設定したかをご紹介。
Forsaken World (C&C Media Co.,Ltd.)
現在のこのゲームは少し特殊な状況になっていて、ゲーム自体がほとんど公式BOTと言えるレベルのオートパイロット機能を持つ。索敵して移動、スキル使用、アイテムの取得までの一連の行動をフルオートで回せるので、通常の狩りではG600の恩恵は少ないとも言えるが、そのぶん導入のハードルは大変低い。サイドボタンに必要なスキルを順に割り振り、残ったボタンに騎乗ペット呼び出しや操作関係のキーを適宜割り振り、薬指ボタンにオートパイロットのON/OFFを割り当てるといったくらいで完全片手運転が可能というレベルになり、大変お手軽であった。しかしあまり楽をしすぎているとボス戦などの厳しい場面で大変な事になると思われるので、ものぐさは程々にしようw
The Tower of AION (NCsoft Corporation)
こちらは由緒正しい(?)MMOスタイルなので、キーボードを担当する左手を移動操作に集中できるよう、G600側にはターゲティング周りとスキル操作を割り振ってみた。前列(奥側には)G9:esc(キャンセル)、G10:tab(至近キャラのターゲット)、G11:Numlock(Autorun)とし、ショートカット4以降をG12〜G20に。ショートカット1-3は使用頻度の少ないものを設定して左手の担当とした。
これはもうキーボードからスキルを発動するより確実に快適であった。前述したサイドボタン群の段差や傾きにより非常に自然に押し分けが出来、誤爆がほとんど起こらない。なるほど、MMOマウスの名前は伊達じゃない。
TERA (Bluehole Studio Inc.)
これは上の二本とは対照的にハードなアクション性のあるゲームで、私は普段ゲームパッドで遊んでいる。正直マウスで戦うのは現実的でないと思っているクチだが頑張って設定してみた。AIONではスキルショートカットの前半を左手の担当としたが、TERAはWASDに隣接したキーの使用頻度が高いのでスキル関係を完全右手振りとした。
まずはAION同様G9側からesc(キャンセル)、Numlock(Autorun)などの機能キーを割振り、残りにスキル各種をセット。薬指ボタンはCキー(攻撃補助)に割振るかSPACE(コンボ発動)に割り振るかではかなり悩んだ。コンボ発動を振っておくと便利にはなるのだが右手が大変忙しくなる。どうせ忙しくなるならG12以降に振ったスキルボタンを直接叩いた方が有利である(同じスキル連携でもコンボキーで発動するより直接該当スキルを叩いたほうがわずかに技の出が早い&タイミング外してジャンプしてしまう事故が避けられる)ので、Cキー振りで安定かなと思っている。
実際のところ、TERAで便利に使えるかどうかは職によって違いが大きいと思う。特に近接職で使うのは大変難しいと思うのだが…普通のマウスとキーボードだけでがっつりやってる人も多数居るわけで、そんな人ならどの職でも便利に使えるだろう。
全体として、左手の負担をどう右手に振り分けるかという判断になるわけだが、戦闘中にマウスを大きく動かす必要のあるゲームでは(頻繁にリフトする必要がある場合は特に)マウスの移動とサイドボタン操作が重なる操作が非常に難しい。後述する普段使いでもこれが問題になるのだが、「相性の悪い操作」に速い段階で気付いて適切に振りなおせるかどうかが肝心と思う。
今回は時間が無くて試せなかったが、いわゆる左手キーパッド(ロジクールG13、Nostromo n52など)と組み合わせると強力な環境が構築できる気がする。とりあえずn52と同時に使用してドライバがぶつかるなどの問題はなかったので、お持ちの方は是非試してみてほしい。AIONとTERAなどのように、WASDキー周りの扱いに微妙な違いがあるものを共通の配置に入れ替えられると言うメリットもあるしね。
なお、ゲームによってはアンチチートツールに弾かれてゲーミングデバイスの使用が制限される場合がある。今回の3本は普通に遊べたが、他のゲームでもし制限された場合はオンボードメモリを利用すれば回避できるだろう。
【使用感:非ゲーム編】
MMO専用と全力で主張しているが要は多ボタンマウスであり、普段使いでも役に立つ場面は当然あるはず。LGSの入っていない状態でもG600本体のオンボードメモリが記憶した各ボタンの設定は有効なので、あらかじめWindows環境で設定しておけばMacやPS3等で使うことも出来るわけだ。
というわけで、MacOSX上での非ゲーム用途をいくつか試してみた。
準備:
まずはオンボードメモリをMac流のショートカット中心に置き換える。WindowsでBackボタンとして使われる4番ボタンはMacではダッシュボードの呼び出しになる(通常OSXでは「進む」「戻る」はジェスチャーまたはキーボードショートカットで行う)など機能の違いがあるので、そこを揃えるなり全く別のものにするなりの対処が必要。DPI設定は高めのものを用意。OSの特性もあってMagicMouseやトラックパッドと共通の設定で併用する事が避けられないので、Windowsとは異なる値が必要になるのだ。少し悩んで、基本セットのLEDカラーはMacBookProのスリープランプを意識した控えめな白に。
Finderで使う:
まずはFinderで、と使い始めた途端にドラッグ&ドロップのしにくさでいきなり躓いた。これはWindowsでも同じ事なのだが、左ボタンをホールドしたままマウスを浮かせるのに苦労する。サイドボタンを押してしまわぬようそっと掴んでいる状態では左ボタンをホールドする力に負けてしまうのだ。サイドボタンより前まで親指をずらす、手のひらを最大限利用して貼り付かせようとしてみるなど試行錯誤中だが今のところ決定打が見当たらず、リフトを伴う長距離を運ぼうとするとかなりの緊張感を伴う。フォルダを横切ってる間にサイドボタンを誤爆したり、逆に力を抜きすぎて左ボタンが離れてファイルを落っことすなど本当にヒヤヒヤ物であった。やはり親指の置き所は重要であると感じる。普段使いをG600ひとつにするにはかなり慣れが必要か。これさえ克服できれば各種アプリの呼び出しをサイドボタンに振るなど便利に使えそうなのだが…
Photoshopで使う:
アプリでの利用、まずはド定番のPhotoshop。専用のモードを振り、LEDカラーはPhotoshopアイコンと同じ青に。どのキーを振るのが適切かはPhotoshopをレタッチや調整のために使うか描画やレイアウトに使うかでかなり異なってくると思うが、私は前者なので編集系のコマンドを主に割り振る事にした。
09:L(なげなわ)
10:M(長方形選択)
11:V(移動)
12:cmd+U(カラー調整)
13:cmd+L(レベル調整)
14:cmd+M(トーンカーブ)
15:cmd+"+"(ズームイン)
16:cmd+0(全体表示)
17:cmd+shift+z(redo)
18:cmd+"-"(ズームアウト)
19:cmd+opt+0(ピクセル等倍表示)
20:cmd+opt+z(undo)
※設定はWindows上で行っているので、表示と実際のキー表現は異なる。
実際の所、「とりあえず振ってみた」の域を出ておらず配置の最適化には程遠いが、こんな感じで。Undo/Redoは標準セットでの戻る/進むの配置と被せ、G600のDPI変更に振られていたボタンにはズーム系を入れるなど、機能的に近いものを被せる努力はしてみたつもり。実際のところは使いながら詰めていく必要がまだまだある。
Painterで使う:
基本はPhotoshopと同じだが、こちらは絵を描くツールとしての利用がメインなので、そこをサポートするキーバインドを目指した。LEDカラーはオレンジとした。絵画的な色…と考えて最初に浮かんだのがゴッホのヒマワリだったので。
09:L(なげなわ)
10:R(長方形選択)
11:F(移動)
12: (未設定)
13:option+space(キャンバス回転)
14:space(キャンバス移動)
15:cmd+"+"(ズームイン)
16:cmd+0(全体表示)
17:cmd+y(redo)
18:cmd+"-"(ズームアウト)
19:cmd+opt+0(ピクセル等倍表示)
20:cmd+z(undo)
こちらで肝になるのはoption+space(Windowsではalt+space)の存在。これはPainterならではの「キャンバスの回転」機能で、これを快適に使えるかどうかがPainterでは大きなポイント。既に同様のファンクションはタブレット側に組み込んではあるのだが、マウス側で出来るようにしておく事にもメリットがある。G12と薬指ボタンにどの機能を振るかは今も思案中。ブラシサイズの変更などを振ってもみたのだが、絵を描くのはタブレットでの作業が大半になるのでいちいちマウスに持ちかえるメリットが若干薄い。やはりPhotoshop同様の編集系のコマンドを振るのに向いている。
他にもDTM系のソフトでも便利に使えそうだと思っていたのだが、申し訳ない、レビューの時間切れである。使い続けて面白い使い方が見つかったら追記するかもしれない。
【総括】
独特の持ち味(リフト時の感覚と言う意味も含めて)が強く主張するミュータントなマウスではあるが、売り文句のとおりゲームでの感触は悪くない。普段使いには難点を感じた部分もあるが、多くは慣れの問題であり、積極的に活用しまくるのがこれに慣れる一番の早道だろう。もちろん、ノーマルマウスとの同時使用という選択もアリだと思う。
押しわけのしやすいサイドボタン群の構造は他にない美点であり、この部分の完成度は高いと感じた。ゲームプレイの中でマウス側で出来る事が足りないと感じ、G700あたりのボタン数では不足だと感じているなら導入してみると面白いはず。
マイナーチェンジがあるなら親指のレストポジションをなんとか確保して欲しいと思う。これだけでも相当に扱いやすくなるはずなのだ。欲を言えばサイドボタン以外のデザインが凡庸なのが残念で、ほんのワンポイントでいいのでなにかデザイン上のアクセント(中2ゴコロをくすぐる感じのw)が欲しかったところだ。この分野の今後の展開にも期待する!
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